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Tuesday, November 03, 2009

ローラ・インガルス・ワイルダーが「大草原の小さな家」の初版のある部分を十数年後に書き直していた背景になにがあったか、あるいは野蛮人は人間ではないという無意識に焼き込まれた保守思想

プエブロ・インディアン出身の教育者であるデビー・リース(Debbie Reese )さんは子どものために書かれた文学作品のなかに描かれているアメリカ・インディアンの研究をする先生でこのブログでも過去にも取りあげたことがあるが、そのリース先生が11月1日付のブログの記事「Edit(s) to 1935 edition of LITTLE HOUSE ON THE PRAIRIE?」(1935年版の「大草原の小さな家」に書き換え?)で興味深い指摘をしている。


LITTLE HOUSE ON THE PRAIRIE 1935 LITTLE HOUSE ON THE PRAIRIE 1950


それは1935年にアメリカで初版が刊行された『大草原の小さな家』(写真上左)という本についてだが、後に刊行された1950年版(写真上右)では挿絵が変更されただけでなくて、本文にも書き直されている部分があるというのだ。初版が出たあと、誰かが著者であるローラ・インガルス・ワイルダーに文章の変更を要求して受け入れられたらしい。

初版ではその個所は次のように記述されていた。

そこでは野生の動物たちが、見渡すかぎりどこまでも続いている牧草地にでもいるかのように、自由に歩き回って餌を食んでいました。どちらを見ても人間はいません。その土地に暮らしていたのはインディアンだけだったのです。

これが2版以降はこうなっている。

そこでは野生の動物たちが、見渡すかぎりどこまでも続いている牧草地にでもいるかのように、自由に歩き回って餌を食んでいました。どちらを見ても入植者はいません。その土地に暮らしていたのはインディアンだけだったのです。

英語では初版は「people」となっているところが、再版からは「settlers」に変更されている。settlers には「移住者、開拓者、入植者」という意味がある。この変更は、ある意味で重要だが、無意識のうちに焼きつけられている人種偏見をぬぐい去るに至ったかどうかは疑問が残る。なぜならその土地にはすでにネイティブの人たちが長く暮らしてきていたからだ。その個所でローラ・インガルス・ワイルダーが、インディアンとそれ以外の人を区別して書き表したかったのなら、ほんとうは「白人」「white people」とするべきだったかもしれない。

デビー先生は過去にも「大草原の小さな家」にはアメリカの保守とされる人たちの考え方が色濃く反映されていて、「アメリカ・インディアンを野蛮人として描く傾向があり、自分たち以外を野蛮人として、人間的に劣る存在として表現する」と指摘した。結局アメリカ人だけでなく、日本人も含めて、成長過程で保守思想を吹き込まれた人たちは、「どこかに劣った者たちがいなくてはならない」と考える差別にとりつかれているようだ。

福音館版の日本語の翻訳ではどのようになっているのだろうか?

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Comments

北山さん こんにちは。
タッチインピースの田岡うららさんが琵琶湖で協力された 風をひらく
に以前参加させて頂いた浅井と申します。
うららさんには いつもお世話になっています。

大草原の小さな家 は小学生の時に初めて読み、大好きな本で 今も福音書店のものを持っています。
件の記述のところですが 私が持っている1972年8月10日に初版発行されたものでは以下のようになっていました。

『そこでは、野生の動物たちは、果てまで見えないほど広い牧場にでもいるように、自由に歩きまわり、食べたいだけ食べられるのです。そのうえ、まだそこに住みついているアメリカ人はいないのです。インディアンだけが、住んでいるところなのです。』

今朝 北山さんのブログを見て すぐに反応してしまいました。
私にとっての大草原の小さな家は ファミリ−としての理想でした。
理由はわかりませんでしたが きっとネイティブアメリカンに引かれて
今までずっと大切にしてきたのでは と思っています。

またいつか お会いできるのを楽しみにしております。

有り難うございました。

浅井 佳洋子

Posted by: 浅井 佳洋子 | Wednesday, November 04, 2009 at 08:51 AM

浅井さま

思わず笑いましたよ。「アメリカ人」と訳してありましたか。翻訳した方も考えましたね。どうせアメリカ人はみんな「移住者、開拓者、入植者」なのですから。ファミリーは自分たちはアメリカ人という意識を持っていたのでしょうかね? それであっても、インディアンの住んでいるところは、勝手に開拓して住んでいいというところを、大人は子どもにどう説明するのでしょうか? 野生の動物たちとインディアンだけが住んでいる土地。これに誤りはないのですけれど。

ところで琵琶湖のイベントはとても気持ちのよいものでしたね。スペースもよかったし、参加していただいたみなさんの意識も高かった。うららさんとあらかじめ土地の神さまに捧げ物をしにいっておいたのがよかったのかもしれませんね。

Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Wednesday, November 04, 2009 at 11:33 AM

大草原の小さな家シリーズは愛読書でした。
中学の時に学校の図書館で新刊にチェンジするので旧いのは
希望者が貰ってよいというので大量に貰った中にありました。
今では残念ながら大昔過ぎて手元になく確認できなかった
のですが(こちら読んですぐ探してしまいました)
ローラのお母さんは’インディアン’を毛嫌いしていて
ローラのお父さんはそんなことはないのだと、
ローラに話していた、という印象です。
シリーズのうち、「長い冬」、というのがありますが
それはまずインディアンが、今年の冬は
厳しく長い、とアメリカ人(!)の雑貨店に
買い物がてら告げに来るのがきっかけでもありました。
ローラのお父さんは長く住んでいる彼らの言葉には
一理あるのだと、備えるのですが、それから本当に
長く厳しい冬が来るのでした。

Posted by: ゆき | Thursday, November 05, 2009 at 02:08 AM

北山様
原書の初版本はpeopleとなっていたのですが、たしか1950年代に読者から「先住民は人間ではないのか」というクレームがつき、当時の辣腕編集者だったノードストームが、ワイルダーに問い合わせてsettlerに変えたのです。この件に関してワイルダーは「先住民は人間です。私がいたらなかった」と素直に過ちを認めています。編集者は高齢のワイルダーに代わり(たしか八十五歳?)、次の版から改めること、思慮が足りなかったと、読者に謝罪の手紙を書いています。でも、この件からワイルダーや出版社
にも無意識の差別意識があったことがうかがいしれます。私は「小さな家」シリーズの少数派について、以前、論文を書いたことがあり、この件にも触れました。ノードストームが読者やワイルダーに宛てた一連の手紙は、ノードストーム書簡集に収められています。なお、最新版の福音館の訳は「開拓者」になっています。

Posted by: meadowlark | Friday, November 06, 2009 at 02:03 PM

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