動物たちだって良いことと悪いことぐらいはわかってる
動物の行動を研究している科学者たちは、ネズミから霊長類までの幅広い種で、動物たちが人間と同じように善悪を判断する力を持っているという確信に近づきあるというニュースをこの夏読んだ。動物は人が動物の衣服をまとっているのだとするネイティブ・ピープルの認識からすれば至極当然で、あきれるぐらいのことなのだが、科学がようやくその近くにたどり着きつつあるらしい。
あなたは善悪の判断に自信はありますか?
とかく人間は、自分たちだけが複雑な感情を体験していて、善と悪とを判断する道徳観を持っていると思いこみがちだ。だが英国のテレグラフ紙の科学担当記者のR・グレイによると、アメリカコロラド大学で生態学を教えるマーク・ベコフ(Marc Bekoff)教授は、善悪を判断する能力はあらかじめすべての哺乳動物たちの脳にしっかりと組み込まれており、それが接着剤の働きをして、攻撃的で競い合いがちな動物たちが社会的にもまとまって集団生活を営むことができると信じているという。
ベコフ教授は世界各地から、異なる動物の種が生まれつき公正さを見極める感覚を持っていたり、あわれみを見せたり、困っている他の動物たち助けたりしている証拠を集めた。教授の結論は、動物たちをもっと人道的に扱えと主張する動物保護団体を奮い立たせることになるかもしれないが、当然ながら専門家の一部には、動物たちが複雑な感情や社会的責任をどの程度体験できるのかに懐疑的な人たちもいる。
ベコフ教授はその最新の著書である『野生の正義』のなかに書いているそうだ。「人間に道徳心があり、動物にはそれがないとする信念は、長年の仮説に過ぎない。この仮説がほんとうでないことを示すようないくつもの証拠が続々と集まってきているのだ」と。正し道徳律はそれぞれの種に固有のものなので、それらを人間のものと比較することは困難ではあるらしい。
教授がそうした例として、かつて鮫に襲われようとしている人間をイルカが助けた例や、アンティローブが包囲網から逃れるのを助けた象などをあげたことがある。そのとき彼の考えは科学者の間で論争の的となったが、教授は「種の異なるもの同士の感情移入があるかどうかを知ることはとてもむずかしいが、ないといいきることもなかなか難しい」と発言した。
動物のスピリットが見えない科学者でも
今回の本の中で、彼は書いている。たとえばオオカミは厳格な規則で統率されてまとまっている社会集団で生きている。群れの数が大きくなりすぎると、構成するメンバーたちは密接につながり会うことができなくなり、群れは崩壊してしまう。オオカミはまた公正さを態度で示す。じゃれ合って互いを噛み合うときにでも、優位な地位に立つオオカミは自ら下位にいるオオカミたちにハンディをつけ、あえて為すにまかせて、度を超さない程度であれば噛むにまかせる。ベコフ教授はこうしたことが可能なのは、オオカミたちの行動が道徳律によって支配されているからだと主張する。もしそのとき下位のオオカミが強く噛みつきすぎると、つぎにじゃれ合って噛み合う前には、許しを求めるための「頭を下げる仕草」が求められている。
オオカミと並んで犬のグループにはいる、コヨーテの場合、同じようにじゃれ合って噛み合うが、あまり強く噛む仔はグループの中で次第に仲間はずれにされ、最後には群れから永遠に追放されるという。ベコフ教授らが群れから離れていく子どもたちの死亡率を調べたところ、群れに留まる仔たちにくらべて「4倍から5倍高かった」という。また普通の家庭犬の場合も、2匹飼っている場合、一匹にご飯をあげてもう一匹にご飯をあげないようにすると、犬たちはご飯をわけあうことから、公正さの感覚を持っていることがわかると教授はいう。
そのように彼が今回特に研究対象とした動物は、ほかには象、チンパンジー、ネズミ、コウモリ、クジラなどがある。こうした動物たちの生態を細かく観察して、動物たちが人間と同じようなある種の公平感や、正義感などの道徳を持っているのではないかとするベコフ教授の研究が、公平感や正義感などの道徳律をなくした人間が増えていく中で、これからどうやって発展していくのか興味あるところではありませんか。動物も植物も鉱物もすべてがひとつの輪の中でつながりあっているとする「いのちの輪」に、平和とバランスが回復されるといいですね。
Source : Animals can tell right from wrong (Telegraph.co.uk 23 May 2009)
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