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Monday, August 17, 2009

縄文時代の終わりと弥生時代のはじまり ー 日本列島でなにが起こってこんな今になったのかを理解するために

稲作渡来民日本列島の歴史を通観するときに、しばしば「外からやってきたのは文化であって人間ではない」とする考え方が主張される。長いこと縄文時代を築きあげていた縄文人が農耕技術を取り入れて弥生時代を開花させて今の日本の基礎を作ったとする「日本中心主義的歴史観」を展開する学者の人たちも少なくない。最初から日本人が日本列島にいたとしておかないとなり立たない価値観が彼らを背後からバックアップして、今ではそのように信じ込んでいる人も多くない。『稲作渡来民』という本は、そうした考え方を根本的に否定しているようにぼくには読める。久しぶりに面白い歴史の本だった。ぼくは『ネイティブ・タイム』という本を読まれるとわかっていただけるが、かねてから日本列島は米のプランテーションとして開拓されたと主張するものであるが、著者の主張はつぎの一文に象徴されている。「舟を駆使して移動性に富む稲作渡来民が、水田稲作の圧倒的な有利性を背景として、はじめから水田の適地を求めて渡来、移住したもの」

「稲作渡来民」という言葉は、外来作物である稲と、農具としての「舟文化」を持ち込むことで、日本列島に弥生時代をはじめて「日本人の母体」となった人たちをさす著者の用語であり、この本は東アジア大陸から朝鮮半島南部に水田稲作を持ち込んだその人たちの足跡をていねいに追いかけた研究書であると同時に、優れて今的な自分とは誰でどこから来たのかを考えるのに不可欠な視点を与えてくれる良書と言っていい。韓国における稲作文化のはじまりと日本列島の弥生時代のはじまりにおける類似点や違いの分析など、あらためて教えられることもたくさんある。日本列島でそれ以前に数千年間続いた文化が、中国大陸や朝鮮半島で起こっていたことの影響を受けて、どのように変容していったか想像させてくれるという点で、読んでいて刺激を受けた本としては最近では珍しいものである。惜しいのは、稲作によってもたらされる「富」という考え方の部分や、稲にたいする信仰の移り変わりなどの精神的なものからのアプローチがほとんどないところだろうか。しかしねポリネシア、倭人、日本列島の丸木舟文化、当時の航海術などの指摘は大いに参考になるだろうし、人類学的形質を置換するほどの大きな変化を日本列島にもたらしたものの、それ以前からあった言語の基本的な性質に変化を与えなかった理由など、知っておくといい考え方も提示されている。著者はこの本の結論部分にこう書いている。

「稲作渡来民の入植という視点からみることによって、『すでに原始的農耕を行っていた縄文人が稲作を受容して低湿地に進出した』という考え方よりも、容易にいろいろな問題が理解できる。しかしそれは『縄文人が弥生文化を育てて農耕社会を築いた』といった、心の和む話ではない」

稲作渡来民 —「日本人」成立の謎に迫る (講談社選書メチエ)池橋 宏 (著)
価格: ¥ 1,785
単行本: 264ページ
出版社: 講談社 (2008/04)
ISBN-10: 4062584115
ISBN-13: 978-4062584111
発売日: 2008/04

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Comments

早速、注文させて頂きました。
貴重な文献を紹介して頂いてありがとうございました。

ずっと疑問に感じていた『穴』が埋まってくるように思います。


Posted by: YUKI@FT | Tuesday, August 18, 2009 01:12 PM

おっ(o^-^o)きたやまさん、同じような本をわたしも
今年は何冊も読んでいます。

縄文と弥生と狩猟と稲作と…その歴史をたどると、
今なお受け継がれてるアイヌ民族や朝鮮民族の
ご先祖に対するお祈りや儀礼やお祭りに
繋がっていますね。

稲作渡来民の話を聞くと、
今の自分は、どこの民族ともしれないけれど
どこの民族にもある何かを濃く感じます(゚ー゚)

Posted by: あつこ | Tuesday, August 18, 2009 05:19 PM

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