大量の乾し貝は固形スープの素として利用されたのか
ウィキペディアによれば、東京湾周辺は世界一の貝塚密集地帯と言うことになる。また世界的には、日本をはじめ、カナダのブリティシュコロンビアを中心とした北西太平洋沿岸域、北米アメリカ東海岸のメイン州を中心とした大西洋岸、デンマークを中心としたヨーロッパ地域のほぼ同緯度で、氷河期が終わった以降に貝塚がどっと出現している。これまでこの貝殻の堆積については、当時の人たちのライフスタイルがなかなか見えてこなかったために、貝を食べた後のゴミという考え方が普通だった。これに対して縄文時代の貝塚は、貝の身に海水の塩分を濃縮させた「干し貝工場」のごみ捨て場だったと思考を一歩進めた学者がいる。奈良文化財研究所(奈良市)の松井章・埋蔵文化財センター長(動物考古学)で、アフリカ・セネガルで約4000年前から続く貝活用法をヒントにこの説を考えたという。朝日ニュースコムが報じている。
松井さんは08年4月、セネガルの首都・ダカールの南約50キロに広がる貝塚群を調査した。数万平方メートルの広大な貝塚の上にある集落で、約100人が古代と変わらない漁労生活を営んでいた。最古の貝塚はダカール大学の調査で約4100年前から続く。住民は太古から、カキや巻き貝のむき身を海水で煮込み、水分を蒸発させてから天日干しをして大量の干し貝を作ってきた。身には塩分が濃縮され、そのままでは食用に適さないが、スープの固形だしとして使う。現在は近隣都市の市場で販売され、現金収入源になっている。
松井さんはセネガルの例をもとに「日本でも集落全体で塩分を濃縮した干し貝を生産し、内陸部との交易品としていたのではないか」と考えた。セネガルの干し貝を奈良県工業技術センターで分析したところ、サケやサバの干物の約3倍の塩分が確認された。縄文時代の技術では、海水から塩を作るより、貝のむき身に塩分を濃縮させる方が効率的だったのではと推測。
貝をインスタント固形スープの素として使うという考え方は、新鮮だな。お湯の中に入れることでだしが取れるだけでなく、塩分も取り出せてスープのベースができあがる。内陸の人たちとの交易品にぴったりだったかもしれない。
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Comments
ダカールの街を歩くと、車道以外の道は貝殻だらけでした。
それほど海から近くないのにどうしてだろう?
その謎がわかりました。意外な共通点!?
セネガルを代表するお料理といえば、チェブ(お米)・ジェン(魚)
とよばれる魚と野菜の炊き込みご飯のようなものですが、
そこに、干しアワビ等の干し貝入っています。
この干しアワビ、出汁をとった後だから、
塩辛さは感じないし、ちょっと固いけど味わい深く美味しいです。
贅沢だなぁって食べていました。
でもマギーブイヨンも必ず絶対入ってるんですけど(笑)
Posted by: Y.Shima | Saturday, June 13, 2009 12:36 PM