百まで数えることを学ぶには オマハ一族の話
たいていのネイティブ・アメリカンの社会にはいくつもの結社がある。それは部族全体に影響を与える組織で、オマハを代表する結社は白い貝殻結社と呼ばれ、一族の者たちから尊敬されるものだけが加盟を許された。そしてその若者はなんとかして一族の者から尊敬を得られる人間になって結社の一員になりたいと願っていた。
エルダーのひとりが青年にむかってこう言った。
「そのためにはな、お前は百まで数えることを学ばねばならない」
それを聞いて青年は思った。「なんだ、簡単じゃないか」
ある日、薄汚れたひとりのホームレスの年寄りが町に入ってきた。老婆は見るからに痩せこけていた。町人のなかには彼女の姿を見ただけで追い立てるものもいた。冷たい眼差しで老婆の背中をにらみつけてなにごとかをつぶやくものもあった。
そうしたなか老婆に同情を寄せたのは例のエルダーだった。老人が声をかけた。
「そこのおばあさん、そう、あんただ。うちへ来て休んでいくといい」
彼はそういうと老婆の肩に手をかけてやさしく彼女を自らの家に案内した。
「さあさあ、どうぞ」
老人は老婆をキッチンに招き入れて椅子に腰掛けさせると、喉が渇いているだろうと水を入れたコップを差し出した。老婆はその水を飲み干してほっと一息ついた。それを見て彼は次に鍋からスープを皿に取ってそれを老婆に食べさせた。
それから老人は自分の妻と娘たちを呼び寄せた。
「このおばあさんに風呂を浴びさせてあげなさい。着替えには、先だってわしがギブ・アウェイのためにビーズ細工を施したバックスキンのドレスを着せてな。あとここにある新しいモカシンも履かせてあげておくれ」
娘たちは力をあわせて老婆に湯浴みをさせ、髪を洗い、櫛をあて、新しい服に着替えさせた。そしてそれが住むと、老人の家族は彼女を一家の住人として共に暮らすことを受け入れた。
それからしばらくしてからのことだった。
くだんの若者がその家の新しい住人となった年寄りのおばあさんを見つけた。
「あの人、ホームレスだった人だよね? 誰がこんなことをしたんだい?」
それを聞いてエルダーがこたえた。
「これが、ひとつだ」
このお話の別バージョン:
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