日本人単一民族説と人種のるつぼ理論
最近でこそ声高に主張する人間は姿を隠しているけれど、「日本人単一民族説」は20世紀を貫いて唱えられた説である。これは「日本民族」なるものの存在が歴史の始まりから存在したと言うことが前提となっている説である。それぞれに特徴を持つたくさんの部族国家の有機的な集合体が日本だという考え方ではなく、人種が入り交じって溶けあい世にもまれなる均一的民族なるものが形作られているとその説は主張する。日本人単一民族説は、長いこと日本国内における文化的多様性と少数民族の独自の自決権を否定し、あらゆる差別の推進力となってきた。長いことアイヌを少数民族と認めなかったのもその理論によっている。
この日本人単一民族説と通底する考え方がアメリカにおける「人種のるつぼ理論」であるのだとぼくは考えている。人種のるつぼという考え方は、古代のメソポタミア文明あたりに考え出されたもので、さまざまに異なる文化背景を持った民族が、国家というるつぼのなかで溶けあってひとつのうつくしい国を形作っているとするものだ。おそらく中国もロシアも似たような理論で動いているのだと思う。そしてこの考え方は、いつだって有機的多文化国家の存在を完全に否定しようとする。
多文化国家の根っこにある「人間としての尊厳」は、それぞれに独自の文化を持つ少数民族の自治と自決にたいしてリスペクトを求めるものだが、国家至上主義者は自分たちと文化的に異なる人々に自分たちと同等の市民としての権利を与えることを否定する。単一(均一)民族説も、人種のるつぼ理論も、多文化という人間ほんらいのあり方の尊厳を否定するものとして機能してきたのだ。
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