ミタクェ・オヤシン
ラコタの人たちはスウェットロッジなどさまざまな儀式が終わるときに、伝統的に「わたしにつながるものたちよ」という言葉を口々にとなえる。英語では「オール・マイ・リレーションズ」といい、ラコタ語では「ミタクェ・オヤシン」という。
1年前のクリスマスの時、あるラコタの年寄りが息子や娘や孫たちから電子レンジを一台贈られた。しかしその冬のあいだじゅう、爺さまはけしてそのレンジを使おうとはしなかった。年が明けて、少し寒さが緩んでくると、爺さまは亀のスープが飲みたくてたまらなくなったのだが、しかし捕まえた亀を殺してきれいにさばいたりするのを考えるだけで食欲も萎えた。
あるよく晴れた朝、表に散歩に出た爺さまは一匹の亀を見つけ、その亀を家に持ち帰った。
「うーん、亀のスープか、たまらんなぁ」と爺さまは独りごちた。「しかし、殺してさばくとなると、こりゃあ大ごとだ、どうしたものか・・」
そのとき爺さまの目があの電子レンジをとらえた。「そうだ!」爺さまの頭にひらめいたことがあった。爺さまは捕まえてきた亀を持ちあげるとそのまま電子レンジのなかにほうりこみ、タイマーを1時間にセットしてスイッチを押した。
25分に一度、爺さまはレンジの扉を少し開けてなかの亀の焼け具合を確認した。かっきり1時間たって、チンと音がしてレンジがとまった。「どれ、できたかな」と爺さまがレンジに近づいて、その扉を開きかけたとき、なかから亀がのっそりと現れ出て、こうつぶやいた。
「ミタクェ・オヤシン」「ミタクェ・オヤシン!」
『インディアンは笑う』北山耕平編・構成。(おそらく)世界で初めてのネイティブ・アメリカン・ジョーク・コレクションの本。笑うことで世界をひっくり返す書。笑いの百連発! 当ブログから生まれた本。マーブルトロン発行 中央公論新社発売 ブックデザイン グルーヴィジョンズ。好評発売中
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Comments
亀さん…、(笑)Ho!さすがです。
Posted by: 美紀子 | Friday, July 25, 2008 07:38 AM