ネイティブ・アメリカンになにを求めているのか? ネイティブ・アメリカンはなにを求めているのか?
ネイティブ・アメリカンに関心を持つ人が世界的に増えてきていることは間違いないのだが、その関心の向かう先がどこにあり、なにを目的にしているのか、とても見えにくくなってきている。町を歩くと、インディアン・グッズを扱う店も良く目にするようになったし、ネイティブ・アメリカンをテーマにした書籍の数も増加してきていることがわかるし、スウェットなどのインディアンの儀式を自己啓発のツールとして使ったり、ネイティブ・アメリカン・スピリチュアリティーをエゴトリップに利用するビジネスはあいかわらず盛んなようだ。
つい先日も、土屋アンナ(24)という女性タレントが、ネイティブ・アメリカンに関係してNHKとトラブルを起こしていたと、「週刊現代」が報じた。それによれば、アンナさんはNHK・ハイビジョンで放送された「宿坊ココロとカラダ満ツル旅」という精神世界を扱うドキュメンタリー番組(昨年7月放送)に出演して好評を博し、第2弾をネイティブ・アメリカンでという運びになったらしい。以下、内部関係者の言葉を引用する。
「今度は舞台をアメリカに移し、ネイティブ・アメリカンと触れ合いながら彼女が神秘体験をするという企画がうまれ、スタッフとともにロケに行ったんです。ところが、ロケ中にディレクターが出した指示が気にくわなかったのか、アンナさんがそのディレクターに一発食らわせてしまった。しかも、そのパンチが目に入ったようで、撮影はすぐに中止され、ディレクターは病院に直行するハメになったんです」「ネイティブ・アメリカンと触れ合いながらの神秘体験」などという台詞は、まさしくネイティブ・アメリカン・スピリチュアリティをビジネスにする人たちが好んで使う表現であり、そのような企画を立てるメディアのあり方そのものを疑わざるをえないものではある。幸いアンナさんに殴られたそのディレクターの怪我の程度は軽いものだったようだが、撮影はそのまま中止となり、一行は日本へと帰国したという。その後のNHKと土屋サイドのトラブルについて、同記事のなかで別のNHKスタッフは語っている。
「結局番組はお蔵入りになり、アンナさん側にはギャラも支払われなかった。NHKとの仕事がしばらくできない、いわば“出入り禁止”状態になったという話もあります。この番組はドキュメンタリーだったので、トラブルの最中もカメラは回っており、事件の一部始終を収めた映像はいまも残っているそうです」
いったいネイティブ・アメリカンの大地でどんな騒動があったのか、この記事からは見えてこない。なんとなくわかるのは、ロケ中にディレクターが、「出してはいけない指示を出した」ということぐらいのもの。指示の中身は想像できるが、想像の域を出ないので省く。
昔も今もぼくのところにときどき、ネイティブ・アメリカンの取材をしたいのだがと日本のテレビ局やテレビ番組の製作会社の人から連絡が来ることがある。ぼくはそういうとき遠回しにであれ、あなた方が望むような番組を撮影することはおそらく出来ないと伝えてきた。
四年間ほど通って気心が知れてからならまだしも、なにも友好的な関係を作りあげていないインディアンの人たちのところにいきなり撮影機材を持ち込むなんて、リスペクトを第一義に考える人たちにとっては、およそ考えられないことだからだ。しかも「ネイティブ・アメリカンと触れ合いながら(テレビで)神秘体験」となると、さらに困り果ててしまう。神秘体験なんていうものは、超個人的な神聖な体験であり、マスメディアでおもしろおかしく見せるエンタテインメントではないのだから。常識ある人であればまずそんなことは考えたりはしないものだが、考えられないことをするのが、しかしえてして自分勝手なメディア関係の人間だということも、ぼくはよく知る人間である。
この人たちがどのインディアンの国に取材に訪れたのかなどということすら、記事からはうかがい知ることができない。アメリカ・インディアンとされる人たちが今どのような状況にあるのかなどということは、日本のメディアの人間にはどうでもいいように思われているようだ。おりしも、昨日はロンゲスト・ウォーク2が3600マイルもを歩き通し、道中で3800袋もにのぼったゴミを拾い集めつつ、サンフランシスコからワシントンDCに到達した日であった。このウォークに参加したネイティブやノン・ネイティブの人たちがアメリカ大陸を太平洋から大西洋まで歩くことでなにを世界に問いかけたのかについては、かなりの数の「日本人」が自発的に参加したにもかかわらず日本のメディアからはまったくと言っていいほど無視された。
たいていの日本の人たちがアメリカ・インディアンと聞いて頭に思い描く平原インディアンのスー族、正しくはラコタ、ナコタ、ダコタの人たちの居留地で、今子どもたちが大量に自殺していっているという現実を世界に訴えかける一族のチーフの言葉が、これも一昨日友人から送られてきた。なんとか全文をここに訪れる人たちに伝えるべく、翻訳をしてつぎの記事「ラコタの精神的指導者で長であるデイビッド・スワローがリザベーションにおける危機的状況を語る」として立てておいた。ぜひその声をハートで聞いていただきたいと思う。
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Comments
Smiling Cloudさま、本当にありがとう!
この記事に、胸の大きなつかえを少しとってもらえたような気持ちです。(つかえはまたすぐ戻ってくるのでしょうが・・・)
多くの人にとっては私の言葉は「むかつく」ものになってしまうかもしれないけど、アメリカで、ネイティブの人たちのコミュニティーにかかわっていて、長いこと、感じてきたことを、ちょっと書いてみますね。
ネイティブのファッションやスタイルにあこがれる、その元にあるものはきっと、地球ベースの生活への憧れだと思うから(ヒッピーの人たちみたいに)、それが「はやる」のはすごくうれしいんです。
でも、スピリチュアリティーを「売り物」にするのはね・・
セレモニーは絶対に「売ってはいけない」ものといわれてるから、ネイティブの人たちは、「スウェットロッジ、参加は一回いくら」とか、お金を取ったりは絶対しないじゃないですか。
スウェット一回するためにどれだけ費用かかかっても。
ドネーションをお願いすることはあっても、金額を示すことはないです。
(ネイティブじゃない人が違う目的でスウェットをやったり、ネイティブの人でも、学校の授業とか施設の中でとか、ワークショップの一環とかでやったりしている場合は別です。)
だから、セレモニー中心の生活をしていると、絶対といっていいほど、極貧になりますよね。セレモニーをするため、そのトレーニングのためには、お給料をもらうような仕事は続けられないし。だから「メディスンマン」とか、みんなあこがれるけど、まじめな人ほど、すごく貧乏でやっとの暮らしをしていたりしますよね。
地球ベースの暮らしとセレモニーを守り続ける大変さを知れば知るほど、包装紙に包まれた売り物を見るとなんかいつも胸の中に大きな石を押しこまれたような気分にさせられていました。
セレモニーを売る人がいると、そのメディスンが穢れてしまうと嫌がる人もいます。アメリカにもセレモニーを売る人たちがたくさんいますが、日本でもスウェットロッジ一回いくらとかで行われていたりするみたいとうわさを聞きました。
「売らない」ためには、スウェットをするときは、金額を示さず、「ドネーション」を募って、薪や場所代、移動費などの費用を捻出しましょう。
ドネーションに慣れていない現代消費者文化に生きる私たちは、あらかじめ値段がついていないと、その価値がわからなくなってしまっています。
値段をはずしてドネーションと言ったとたん、2百円ぐらいしか出さない人、一銭も出さない人も出てくるでしょうが、それはその人に返っていく問題だから・・・
長いコメントになっちゃってごめんなさい。
Posted by: Na-Gi | Tuesday, July 29, 2008 04:41 AM
Na-Giさま
値段がついていないと物の価値が計れなくなった人たちがことのほかたくさんいますが、たとえば自分のヴィジョンに1500ドルとか、スウェットロッジの体験に500ドルとかの値段がついている状況をぼくは考えたくはない。そうした物はお金に代えられないものなのに、現代人の多くは払った金額の多さによってスピリチュアリティが計れると考えているようです。
真面目にグッド・メディスン・ウェイを歩いている人ほど貧乏というのは、まさにそのとおりで、ローリング・サンダーなどはそのココロの豊かさと反比例するぐらいの、貧乏を絵に描いたような暮らしをしていた。
ドネーションを募るというやりかたが、この国でももっと認識されることを祈っている。先日来日していたチェ・ゲバラの娘さんが「連帯とは、余りものを他者にまわすことではなく、自分たちに必要なものを他者とわかちあうことだ」といっていたのが印象的だった。
心に残るコメントをありがとう。
笑雲
Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Thursday, July 31, 2008 10:31 AM