先住民の権利を大切にしない国で相継いで行われるオリンピック
このところの内外の圧力の高まりを受けて、2010年の冬季オリンピックの開催国であるカナダでは、国会で先ごろ(4月8日)「先住民の権利に関する国連宣言」を承認するための投票を行った。先住民や人権団体はこれを歓迎しているものの、しかしカナダ政府は頑なに宣言の承認に抵抗している。
「政府が宣言の承認を拒み続ければ続けるだけ、結果としてカナダは人権を大切にしない国という評価に苦しみ続けることになる」とカナダの先住民の代表は語る。「政府の反対にもかかわらず、今回の投票は宣言の履行にむけた重要な一歩となるだろう」
北京オリンピックの開催が迫るにつれて、世界の目はいやがうえにも主催国の人権や正義と伝統的オリンピック精神に注がれるようになっている。2007年に国連が世界で3億7000万人以上いるとされる先住民の自決・自治権や固有の文化、資源を保障する「先住民の権利に関する宣言」を圧倒的多数で採択したときに、これに真っ向から反対をした——つまり公然と先住民の権利を侵し続けている——4つの国、アメリカ合衆国、オーストラリア、中国、カナダのうちのふたつの国で、これから相継いでオリンピック大会が開催されるのは、けして偶然などではないのだろう。
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Comments
世界で3億7000万人の先住民・・・では残りの50億だか60億だかの人々は何に属するんでしょう?
ところでオリンピックという行事は「直線的な時間」を生きる人々の間で生まれたものであり、それは「国」という後付けの集団帰属意識を強く刺激するものであるからには、そもそもの前提として政治とは切っても切り離せないものなんですね。十字架の代わりに火を使っているというだけなのかもしれないけど、そのおかげでより広く世界の人々に受け入れられてきた。
日本も次のオリンピックを誘致しようとがんばっていますけど、これも4つの国に仲間入りするんでしょうか?
Posted by: がんちゃん | Tuesday, May 06, 2008 01:45 AM
1つの地球の上の1つの共同体意識を目指しての
オリンピックというのは難しいのでしょうか。
希望としては、家族から国へ、そして1つの地球ですよね。
いかなる人間の所作にも政治的意図がからみ得るのは
現実かもしれませんが。
現状の国境線はどの国にも平等だとは決して言えませんし、
かといって今までの経緯を無視した国境などは
非現実的です。
(たまたま自国に天然資源があるという理由で
独り占めというのもどうなのかと疑問です。)
しかし、「やる方」、「やられる方」という「二項対立」の図式も
危険をはらんでいるように感じます。
「やられる方」は「やる方」に転じる可能性を
そこに暗示してしまうからです。
例えば日本がチベット擁護の立場を表明したとすると
第2次大戦で日本は何をした、とか、
アイヌの人々に何をした、とかいう過去に「やる方」だったのにという議論が聞こえてきます。
いつまでさかのぼればいいのか。
かつて「やる方」でなかった集団は隔離されているか
存在できないかどちらかではないでしょうか。
過去にやった、やられたではなく
当然過去の修繕も含めたうえで
「これからの1つの地球共同体」が
意識の上でも広がっていけないかと思うのです。
そこに、当たり前のように存在しているとういうような
「二項対立」概念は危ないにおいがするのです。
Posted by: 白いうさぎ | Tuesday, May 06, 2008 01:09 PM
地球のうえに引かれた国境線が消えないかぎり、オリンピックではスポーツが国威発揚の道具(場)に使われつづけるのでしょう。一人の夢見る者として、いつの日にか国家のありかたが変わり、いっさいの争いと差別に終止符がうたれて、人工的に引かれた国境線がなくなるという夢を、われわれは見続けなくてはなりません。これはジョン・レノンとの約束だったはず :-)
Posted by: Kitayama Smiling Cloud Kohei | Tuesday, May 06, 2008 01:19 PM
がんちゃん
>世界で3億7000万人の先住民・・・では残りの50億だか60億だかの人々は何に属するんでしょう?
地球から切り離されてしまった人たち、切り離されていることも忘れているかもしれない人たち、地球のかわりに国家にしがみついている人たちなのだろうか・・・
われわれが、もしもう一度「始まりもなければ終わりもない」世界に移行できたなら、そのときには地球を祝福するさまざまなかたちの祭りがおこなわれることになるでしょうね。
Posted by: Kitayama Smiling Cloud Kohei | Tuesday, May 06, 2008 01:33 PM