ユーラシア大陸から亀の島へのネイティブの言葉の長い旅

西シベリアのイェニセイ川中流から下流に先史時代から暮らしてきた少数民族にエベンキ、ヤクートといった人たちがいる。ほとんどのイェニセイ川の流域の人たちはすでに姿を消したが、このかつてエベンキの国のすぐ西に、ただひとつケットという名の人たちだけがかろうじて今も生き延びて暮らしているという。
ケットの人たちはおよそ1200人が現存するが、そのうちケット語を話せるのは200人ほどだという。そしてそのわずかの数のケットの人たちの話している言葉が、遠くベーリング海峡をはさんで東側の新大陸に暮らしてきたアラスカやカナダのアサバスカンやエヤンク、クリンギット、アメリカの北西太平洋岸のフーパ、そしてサウスウエストの沙漠に暮らすナバホ(ディネ)やアパッチの国といったところで生きているアメリカ大陸先住民の話すナ・ディネ言語と深いつながりのあるらしいことが、この3月上旬にアラスカのアンカレッジで開かれた言語人類学者たちのアラスカ人類学協会の年次総会であきらかにされたと、アンカレッジで刊行されている新聞が伝えた。研究を発表したのは、ケット語の解析を10年間続けてきたウエスターン・ワシントン大学の言語学者のエドワード・バホダ研究員ら。
1万年から1万2000年前に、氷河期時代に北ユーラシアで生きていた狩猟者たちがベーリング陸橋を渡って旧世界から新世界に足を踏み入れるまでは南北アメリカ大陸に人間は暮らしていなかったと結論が出されて以来、アメリカ・インディアンの話す言葉とシベリアの少数民族の言語とのあいだに関係があるのではないかとこれまでも推測されていたが、ここまではっきりと特定の言語の原郷が指摘されたのははじめてではないか。エドワード・バホダ研究員は「ケット語とナ・ディネ言語のあいだにはただ単に音が似ているといった共通点以上の、もともと共通のひとつのものだったとしか説明できない特異点があまりにも多い」と話している。
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