自由ラコタ代表団が広報担当のラッセル・ミーンズに組織をハイジャックされたと声明
ウィキ・ニュースが5日付で伝えるところでは、ラコタの国をつくる動きは、インディアン活動家のドンであるラッセル・ミーンズが仕切るラコータ共和国と、ラッセル・ミーンズの動きに不安を抱くカヌンパ・グルハ・マニ(12月19日の建国に際しての記者会見で自らの免許証をはさみで切り裂いた人物)らエルダーたちをふくむ主要なメンバーとのあいだで、早くも対立が表面化してきた模様だ。
ラッセル・ミーンズはインディアン活動家としては筋金入りの人物だし、政治以外にも映画俳優を務めたり、76年には故アンディ・ワホールのアメリカン・インディアン・シリーズの肖像画のモデルになるなど話題作りには事欠かないのだが、ラディカルで過激な人にありがちな問題も多く、当初から「ラッセルを組織にいれるのは、ネコばっかりのグループに犬を放つようなもの」といわれていた。昨年12月中旬の独立宣言が世界からの関心を高めるなか、昨年末に活動がラコータ共和国構想として一方的にラッセル・ミーンズのひとり舞台になっていくことをよしとしなかった人たちが、年明け早々今度は自由ラコタ代表団としての理念を引き継ぐ形で、新たにラコタ国の自由と独立のための「ラコータ・オヤテ」という組織を立ちあげていた。
独立を目指した一群の人たちのなかにも、おそらく「共和国」という呼び方や考え方に、賛意を示さなかったラコタの人たちがいたようだ。ラコータ・オヤテ(オヤテとは「国」の意味のラコタ語)は「共和国」などではないと、彼らは主張する。「共和国の英語であるリパブリックはラテン語のコンセプトであり、ラコタにはなじまない。われわれにはわれわれの国のあり方が昔からあり、それがラコタの国、ラコタ・オヤテである」と。
ラコータ・オヤテが発表した自国の地図と、ラッセル・ミーンズの仕切るラコータ共和国は、地図の上ではまったく同じものである。しかもふたつのウェブサイトに使われている文章などの多くの部分が同一のものであるが、細かい部分がかなり決定的に異なっている。
ラコータ・オヤテのサイトにはラッセル・ミーンズの影も形もなくなっていて、「われわれは、すべてのラコタの人たち、エルダーたち、母親たち、父親たち、子どもたち、そして国の利益のために働く」とある。また「個人的な趣味のためにつくられた似たようなウェブサイトがあるけれど、ラコータ・オヤテはもう一度自由を求める人びとの声を表明する場として機能する」と記されている。そして決定的なことは、次の記述に読み取れる。
われわれは、植民地システムの恩恵を受けるBIAだとかIRAの政府を代表しないが、すべての人たちが自分たちの自由を取り戻すことを奨励するものである。われわれは「ラコータ共和国」を支持するものではないし、「臨時政府」なるものの押しつけもしない。そうしたものは人びとの意志のみならず、エルダーや子どもたちの内側で生き延びている動物たちの国の精神も示すものではないからだ。参考記事:サウスダコタはラコタ共和国に?
こちらを読むかぎりにおいて、急進派のラッセル・ミーンズはラコタの国造りの本流から外されてしまったという印象を受けざるをえない。ラコータ共和国のサイトにはラッセル・ミーンズその人が YouTube を使って「なぜラコタに真の主権が必要なのか」を訴える動画があげられていた。実際のところは、ふたつの運動の流れを今しばらく追いかけなくてはわからないが、ラコタの人たちの独立の夢は、アメリカ合衆国政府の介入以前に、いきなり乗り越えなくてはならない大きな問題に直面したようだ。
アメリカのなかにある第三世界のこの動きが、血なまぐさい結末を迎えることなく、できうる限り多くのラコタの人たちの共感と参加と支持とを受けるような形で、続いていくといいのだが。
News source : Lakota Freedom Delegation says spokesman Russell Means 'hijacked' organization
ラコータ共和国のサイト:
http://www.republicoflakotah.com/index.htm
ラコータ・オヤテのサイト:
http://lakotahoyate.net/index.html
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