インターネット・エイジの南北アメリカ大陸先住民
南北アメリカの先住民たちがなぜこのような状況におかれていて、そしてここへきてなぜ自分たちの生存のためにアメリカに反旗を翻しているのかを理解するために、参考になるニュース。
どうしてこんなに貧しいままなのか?その最初の理由は、これらの国が金に飢えた狼のような白人の群(まずスペイン人、それからポルトガル人、フランス人、オランダ人、イギリス人……)によって、征服されたということにある。
彼らは先住民を殺すことをなんとも思わなかった。人間であることは認めたが、白人とは1段低い動物とみなされた。また、彼らは征服の報酬を被征服者の土地と労働に求めた。そこで非情な殺人、略奪、搾取がまかり通ったのである。
赤子を岩に叩き付けて殺す、木に何人もぶらさげて下から火を焚いてあぶり殺す、馬の後ろに引き摺って殺す。そんな不必要な殺人に、征服のための戦闘と天然痘の大流行が加わって、彼らの多くが死に絶えた(NGO サービバル・インターナショナルの推定によれば、1692年、ちょうどコロンブスの「発見」から200年たった時点で、9千万人いた先住民が、20分の1の450万人になっていたという)。
だが、もちろん先住民もいつまでも無法な殺戮と搾取に甘んじていたわけではない。1994年1月1日、NAFTA(北アメリカ通商協定)発効を期に立ち上がった、メキシコのEZLN(Ejército Zapatista de Liberación Nacional ・ サパティスタ国民解放軍(サパティスタ民族解放軍))などその一例である。
先日、スペインの前首相のホセ・マリア・アスナールが、先住民の抵抗とテロリズムをいっしょにしたような発言をしたが、これほど無知で的外れな意見はない。ラテンアメリカの先住民は、ETA(Euskadi Ta Askatasuna ・ バスコ解放同盟(バスク祖国と自由))や、ロシアのチェチェン武装勢力のように、排他的に自分たちの国を作ろうと意図したことは1度もない。人権が尊重され、平和で静かな生活が送れるよう望むだけなのである。
先住民たちはブッシュ政権のネオリベラリズムに強く反発する。それはネオリベラリズムが自由の名の下に帝国主義を推し進め、搾取を強化するからである。彼らは弱者を死に追いやる理論の信奉者なのだ。
しかし、民主主義と情報化が進んだおかげで、やっと棄民だった先住民にも希望が生まれてきた。ボリビアの先住民大統領エボ・モラーレスには、ベネズエラのチャベスやエクアドルのコレアといった心強い味方がついているし、何より、世界中から温かい激励が毎日、インターネットに乗ってやってくるようになったからである。
全文は以下に。
さらに大きな変化にのまれる2008年を理解し道に迷わないために、この冬に読んでおいていただきたい本がこれ。
反米大陸―中南米がアメリカにつきつけるNO!
(集英社新書 420D)
著者 伊藤 千尋
価格: ¥ 735
内容紹介
中南米の近代史はアメリカによる侵略と支配、収奪の歴史である。アメリカはその政策をまず中南米で実践し、その後中東、アジアなど他の地域で大規模に展開してきた。中南米がたどってきた道を知れば、アメリカがこれから世界で、日本で何をしようとしているのかが分かる。そして今、アメリカが推し進める新自由主義経済政策による格差の拡大から、ブラジル、ベネズエラをはじめとして、中南米のほとんどの国が反米左翼政権となり、反米大陸といわれるほど独自の路線を打ち出している。最新のデータを駆使しながら、アメリカと中南米諸国の歴史と実情、未来に迫る。
著者について
一九四九年山口県生まれ。七九年に朝日新聞社入社。中南米特派員、バルセロナ支局長、ロサンゼルス支局長、「論座」編集部を経て、「Be」編集部に所属。著書に『狙われる日本』『フジモリの悲劇』『「ジプシー」の幌馬車を追った』『たたかう新聞「ハンギョレ」の12年』『人々の声が世界を変えた!』 などがある。
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