国連宣言の採択が先住民と世界に与える大きな影響
「先住民」とは誰か?
植民地社会によって征服される以前からその土地に居住していた人たちで、その領土を現在統治する社会と自分たちとは異なっていると考えている人たちは、先住民と呼ばれる。
ミネソタ大学人権センター刊行「先住民の権利」スタディガイド、冒頭の一文
世界で3億7000万人以上いるとされる先住民の自決・自治権や固有の文化、資源を保障する「先住民の権利に関する宣言」が、先ごろ国連総会で賛成143、反対4(棄権11)の圧倒的多数で採択された。日本を含むほとんどの国が賛成し、イスラエルなどが棄権。反対したのは米国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアの4カ国だった。日本は「民族自決権は国家からの独立を意味しない」ことを強調したうえでの賛成だという。
20年の長い闘いを経て今月国連で可決された新しい国際法『先住民の権利に関する宣言』は、各部族の権利をあらためて確認しただけのものではなく、先住民のひとりひとりがありのままの自分でいる権利を確認したという点で画期的なものとなっている。
9月14日に毎日新聞の去石信一記者は北海道から『先住民宣言:北海道ウタリ協会「アイヌの権利の章典だ」』と題する次のような記事を書いた。
国連総会が「先住民の権利に関する宣言」を採択したのを受け、北海道ウタリ協会の加藤忠理事長らは14日、札幌市内で会見した。加藤理事長は「宣言に含まれた経済的、社会的権利を政府に求めていく」と話し、アイヌ民族の意見が反映されず、具体的権利が規定されていないと批判があった「アイヌ文化振興法」の改正を政府に求める考えを明らかにした。澤井政敏理事は「宣言は我々の権利の章典だ」と採択を歓迎した。
加藤理事長は「歴史的出来事であり、先住民族の人権(擁護)進展に大きく寄与する」と評価する一方、政府に対しては「過去140年間、権利を侵害され、苦悩を被った先祖に謝罪してほしい」と話した。
政府はアイヌ民族を先住民族と認めていない。同協会は政府に対して引き続き、先住民族と認めることを要求し、アイヌ民族の権利確保を立法化によって実現するように求めていく。これまでもアイヌ民族が土地を使用する権利や雇用対策、教育や文化政策の推進を政府に求めてきており、引き続きこの要求を継続する。
宣言が土地や資源の所有権、自治権を認めていることについて、阿部一司副理事長は「私有地となっている土地の返還は求めないが、国や市町村の土地の利用権はある。自治権について日本から分離独立する考えはない」と述べ、柔軟に対応する方針を示した。
地球に生まれた人間には、造物主によって与えられた権利があることを、先住民の人たちは太古から知っていたわけだが、ようやく国際社会がその事実を文字にして書きとめ確認したことになる。今回の歴史的な国際法の可決が、今後いくつもの興味深い変化を、世界と日本に引き起こすことを心からのぞみたい。
今回の宣言の元となった草稿である「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(University of Minnesota Japanese Page)
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