ろくでなしのおじさん(ナバホ・ジョーク)
ディネの人たちの伝統的な家ホーガン | 現代的に建てられているホーガン |
いつもより早めに仕事を切り上げてナバホの男が帰宅したところ、ホーガンのなかから奇妙な物音が聞こえてくるではないか。急いで家の中に足を踏み入れた男がそこで目にしたものは、ベッドの上で素っ裸のまま、汗まみれで息を切らして、半身を起こしている女房の姿だった。
「いったいなにがあった?」男がたずねると女房が声を張りあげた。「なにのんびりしてるのさ、ちょっとあたいの心臓がおかしいってのに!」
男は自分のトラックのなかに置いたままの携帯をとるためにあわてて表に飛び出した。救急車を呼ぼうとナンバーを押しているとき、4歳になる息子がどこからか出てきて大きな声で言った。
「とうちゃーん! こわいよー! ジミーおじさんが、なんにも着ないで羊の毛皮の下に隠れてるんだよー!」
それを聞いた男はいきなり電話を投げ捨てると脱兎のごとく家の中にとって返した。悲鳴をあげる女房を無視して、いきなり部屋の隅にあった大きな羊の毛皮を引っぱがした。はたせるかなそこには、丸裸で身を小さく丸めたままの自分の弟が隠れるようにしていたのだ。
「この腐りきった弟め!」亭主が怒りをあらわにし大声で言った。「お前ってやつは、おれの女房が心臓麻痺を起こしてるってときに、裸で子どもを怖がらせるなんて、ろくでもねえ野郎だ!」
『インディアンは笑う』北山耕平編・構成。世界で初めてのネイティブ・アメリカン・ジョーク・コレクション。笑うことで世界をひっくり返す知恵の書。当ブログから生まれた本。マーブルトロン発行 中央公論新社発売 ブックデザイン グルーヴィジョンズ。最新刊、好評発売中!
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Comments
毎回ながら、このジョーク集が好きです。
海の向こうの大陸で生きる、よく知らない人達のこと。
僕ら現代人の依存心が、安易に美化したり、理想化したり、幻想を抱いたりしがちな人達だと思います。
彼らの倫理的な面、美しい面、悲惨な歴史、過酷な現状と、それへの闘争などは耳に入ってきますが、それが僕らとなんら変わらない、同じ人間なんだという当たり前のぶっとい認識、手応えを得るには、「何か足りないな」といつも感じてきたように思います。
何か、キレイ過ぎるなという印象でしょうか。
そこへ来て、このジョーク集は素晴らしいです。
笑いって大事だなぁ。
Posted by: りょうちん | Thursday, August 16, 2007 04:28 PM