強欲と情欲と憎悪と嫉妬から離れよという教えをつたえる太古のゲーム
8月初旬、ワシントン州のベリンガムという港町で発行されているベリンガムヘラルド紙に「古代から伝わるインディアンのゲームを証明する品」という記事が掲載されていて、気になってスクラップしてあったものを紹介しておく。
アイダホ州北部からカナダのブリティッシュ・コロンビア州南部一帯の広い地域に住む同系統の言語を話すすべての部族をセイリツシュの人びとと呼んでいる。この記事に出てくるルーミーもこのセイリッシュ語を話す人たちの部族の名前のひとつである。
ワシントン州ベリンガムという風光明媚な港町のほど近くにあるルーミー居留地には、14000年前のものと推測されるスレハル(sla-hal)というゲームの駒として使われた13個の骨が飾られている。この、ゲーム用に完ぺきにそろっている骨の遺物は、80年代に近くの遺跡が発掘されたときに出土したたくさんの埋蔵品のひとつだ。
太平洋沿岸北西部の鮭とワタリガラスにたいする信仰を持ち、食べ物の大半は海から来ると信じて、脚がわりにカヌーを巧みに操る諸部族の人たちは、歴史がはじまる前、はるか太古からこのスレハルというゲームに興じてきた。このゲームは今日もなおおこなわれていて、ギャンブル好きな一族の人たちをかなり熱くさせ続けている。
スレハルという「サイコロがわりの骨と箸のような得点棒を使うゲーム」は、独特の歌と精神性とむき出しの競争心と相手の手の内を読むこととが渾然一体となった奥の深い遊びであり、現在の太平洋北西海岸一帯の諸部族と彼らの祖先との絆をしめすものとなっていて、スレハルのスピリットをあらわす踊りも今日まで残されている。
「わたしたちは14000年前の祖先たちとなにひとつかわらずに同じこのゲームをし続けています」同じワシントン州の太平洋沿岸で生き延びてきたスノクワルミ一族の人間で、このゲームの研究を続けているミシェル・ケンプさんは記事のなかで語る。「わたしたち一族のエルダーたちは、このゲームをわたしたちが持ち出すと声をあげて泣くのです。そのぐらい彼らの心の深くにこれがあるのです」
スレハルの起源についての物語が伝えているところによれば、ゲームがはじめられた古い時代には、動物たちと人間たちは食料を巡って激しく闘いあっていて、食料が底をつくようになっていたという。
一計を案じた創造主は人間たちと動物たちにスレハルというゲームをお与えになり、今後はどちらにせよ、このゲームに勝ったものが相手を食べてもよいことにするとお話しになった。
そしてゲームがはじまったが、人間たちは負け続けた。負けに負けて、手持ちの棒が最後の一本になるまで負け続けた。そこで人間たちは創造主に、なんとかしてくれと憐れみを懇願した。
偉大なるスピリットはするとその願いを聞き入れてくださり、人間たちを勝たせるかわりに、人間たちが従うべき4つの法をお与えになった。
4つの法とは、強欲から離れること、情欲から離れること、憎悪から離れること、嫉妬から離れることの4つだった。
「スピリットはわたしたちに、このようにして自分たちがなにものであるのかを見せてくれる大切な教えをくださったのです」とケンプさんは語った。それ以後部族間の戦いや紛争を解決するため、「血を流さない戦争」のために、このスレ−ハルというゲームは時を越えて用いられてきたし、また癒しの儀式においてもこのゲームは用いられてきているのだという。
Source : Artifacts attest to Indian game’s antiquity 14,000-year-old set of 13 bones seen at Lummi
ゲームの詳細と歌については Coast Salish Gambling Music -- Canadian Journal for Traditional Music へ(英語)
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