あなたはそれをなんと言うのか?
その白人の牧師は、インディアンたちを改宗させ、白人と同じような生活の仕方に導くことにことのほか熱心だった。あるとき彼はとある部族で、見るからに頭の良さそうな戦士に出会い、ものになると白羽の矢を立てた。とりあえず牧師はコミュニケーションをとれるようになることを目的として青年に近づいた。
戦士の青年もまんざらではなさそうな雰囲気だったし、なによりも向学心に燃えていた。森を歩きながらさっそく言葉の授業が開始された。牧師は手当たり次第にいろいろなものを指さしてはその名前を英語にして聞かせていった。
大きな岩を指さして、「ロック」と彼がいうと
インディアンは続けて「うむ、ロック」と応じた。
彼が木を指さして、「トゥリー」というと
インディアンも「うむ、トゥリー」と応じた。
そうやって、いろいろなものを指さしてはその英語名を伝える授業が、ほぼ1日続いたころ、ふたりは目の前の灌木がわさわさと動いているのに気がついた。
インディアンの戦士が、手にしていた弓矢の矢の先で灌木の茂みをかき分けてみると、そこではひと組の男女がまさに性行為のまっただ中ではないか。
インディアンから「あれはなんというのか?」とたずねられて、当然ながら牧師はとりみだした。とりみだしただけでなく、その名前を口にするのもいやだった。でも質問されたからには答えなくてはならない。どうせインディアンはその名前を聞いたことなどないだろうからと、一番最初に思いついたものの名前を牧師は口にした。
「あれは、さよう、自転車漕ぎという」
インディアンはするともっていた弓に矢をつがえてことの最中にあったふたりを射殺してしまったのだ。
恐怖におののいて牧師が「なぜ殺したんだ!」と大声をあげた。
するとインディアンの男がしばらく考えてから答えた。
「あいつ、わたしの自転車を、漕いでた」
『インディアンは笑う』北山耕平編・構成。世界で初めてのネイティブ・アメリカン・ジョーク・コレクション。笑うことで世界をひっくり返す知恵の書。当ブログから生まれた本。マーブルトロン発行 中央公論新社発売 ブックデザイン グルーヴィジョンズ。最新刊、好評発売中!
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