フライブレッドが死ぬほど好き
部族会議の議長を務めた男が死の床についていた。息を引き取る寸前、彼が横たわる部屋に、揚げたてのフライブレッドのなんともいえないよい香りが漂ってきた。
あああああああああああああああああああーっ。
男は世界のなによりもフライブレッドが好物だった。
最後に残ったエネルギーのすべてを振り絞るようにして、彼はベッドからよろよろと起き上がった。そしてそのまま匂いに誘われるように、よろよろと階段を下りて、よろよろと台所に入っていった。台所では彼の最愛の妻のリリアンが、黙々と新しくパン生地をこねていた。かたわらには揚げたてで湯気が出ているフライブレッドが山と積まれている。いまわの男が死にそうになりながら手を伸ばしてそのフライブレッドのひとつをかろうじてつかもうとしたそのとき、妻が大きな木製のスプーンで男の手の甲をぴしゃりと叩いて言った。
「だめよ! お葬式のために作っているんだから!」
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