カチーナ(精霊)たちがお山に帰る日
ホピの人たちの「カチーナたちがお山に帰る日」が数日後に迫りました。ポピの人たちが——太陽が夏の家に入って一休みしてまた冬の家に向かう旅をはじめる——夏至の日をはさんで16日間続ける特別なニマン・ダンスと名づけられた大例祭です。カチーナと呼ばれる彼らの精霊たちの登場する儀式としてはおそらくは最もドラマチックな、アメリカ大陸南西部の乾燥した大地における太陽と共にある祭りです。彼らの精霊たちであり、冬の冬至の日を過ぎると聖なる踊りを教えに降りてくるカチーナたちを、サンフランシスコ・ピークスと呼ばれる聖なる山の家に送り帰す祈りと踊りであり、精霊たちに「おつかれさま」「また会いましょう」を伝えて、人々が新しい冬に備えるためのものです。子どもたちにとっては、夏のクリスマスみたいなもので、さまざまな贈り物が約束されていたりします。
ホピの伝統派の長老たちが、急進派の部族会議のホピの人たちの迫害に抵抗して70年代に自分たちで発行し続けた伝統派ホピの機関誌「テクァ・イカチ(テカ・イカチ)」が現在ネットで公開されています。その機関誌の通巻30号に掲載されているニマン・ダンスの記述の個所を、試みに訳出してみましたので、雰囲気の片鱗でも味わってください。掲載したモノクロの写真も同誌からのもので「1900年ごろのニマン・ダンス」とネームがつけられています。

Techqua Ikachi Issue Number 30 の一節 試訳・北山耕平夏が訪れ、生長した作物で畑が緑に染まる。トウモロコシは茎の先から穂が顔を出し、ツルのうえにはメロンや豆たちが姿をあらわす。生長した植物たちにむかって、声をかけたり、歌をうたいながら畑の中を歩くと、なんとなく鼻高々で、幸せが心にあふれるとき。自分がこれまでつぎこんできた労働がなにがしかの収穫をもたらして、オオカミはもう家の扉に近づくことはないだろう。
さらにそれらよりも少し前に植えつけた、食べれば間違いなくおいしいスイートコーンが、じゅうぶんに育っているのはわかっているが、あえてまだそれにはさわらない。それらは、あと数日に迫った特別なときのために、わざわざそのまま取り置いておく。
ニーマンの祭りの踊りの準備で、村では誰もがせかせかしている。客人たちにふるまう食べ物の準備もできた。親戚や、近所の村から訪れる友たち、遠くの街からわざわざやってくるものもあるだろう。男たちは多くの時間をキバのなかで、煙草を吹かし、祀りの成功と、自分たちの努力が無駄にならないことを祈って過ごす。
老いも若きももう待ちきれない風情である。特に祭りを心待ちにしているのは子どもたちだ。よい子でいれば友だちのカチーナが、メロンとか甘いトウモロコシとか人形とか弓とか矢とかを贈り物としてくれると、子どもたちは言い聞かされているから。
そしてその日がついにやって来る。カチーナたちが美と共に姿をあらわす。子どもたちは喜びと幸福に包まれて贈り物をもらいうける。大人たちもまた心からそのときを楽しむかのように歌を聞き踊りを見つめる。いっさいのねたみや憎しみを忘れる時間だ。人と人が互いのことを思いやる時間だ。夏のカチーナたちの踊りは、かくしておしまいになるのだ。
良き日を!
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