カード・ボネガットが亡くなった
いつのころからか小説をほとんど読まなくなった。それでもまったく読まないわけではなく、何人かの海外小説家のものは読む。ネイティブ・アメリカンに関係ある小説としてはトニイ・ヒラーマンの「ナバホもの」は全部読んでいる。シャーマン・アレクシーの作品も、必ず手にとるが、最新作の評判があまりよくないのが気になる。ネイティブ・ピープルの世界と関係のない小説となると、まったくと言っていいほど読まない。20代のころはSFやミステリをずいぶん読んだが、最近はとんとご無沙汰である。繰り返すがトニー・ヒラーマンのミステリだけは、題材がアメリカ南西部のナバホやその他のプエブロの文化であるという理由だけでなく、ミステリとしても一級なので、読みながらデザートを追体験できるところが気に入って欠かさず読む。しかし普通の現代小説となると、これがほんとうに読まない。
なぜこんな話を書いているかというと、ぼくが唯一新しい作品が出るのを心待ちにしていた小説家の、カード・ボネガットが昨日4日にニューヨークでなくなったという記事を読んだからだ。カート・ボネガットは、カード・ボネガットJrという名前で発表していたころからの小説だけでなく、最近に至るまでのエッセイも、脚本も、講演録も、ちょっとした走り書きや、どこかの大学の卒業式に招かれたときの贈る言葉も、とにかく彼についてはなんであれ探し出して読んできた。彼のものの見方、世界の認識の仕方から学んだことはとてもおおい。彼は自らの戦争体験に基づき、深い絶望と共に、戦争や権力というもののあほらしさを時にシニカルに、時に滑稽なまでの社会批評として伝え続けた。禁煙がはびこる世の中で彼は最後まで煙草をやめることなく、自分は煙草でゆっくりと自殺するのだと発言していた。あらゆる宗教を疑う立場をとりながら、おそらく自由にたいする信仰は人一倍強かったように思える。(彼の公式ホームページを見ると、彼がやっと自由になったことがわかる。まったく「おつかれさまでした」であります)享年84歳。
これでまた小説を読む理由がさらに減ってしまった。
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