鯨のスピリットに喜んでいただくための儀式
右サイドバーの巻頭にある Peace な写真を入れ替えた。ノースウエスタン大学のデジタル図書館に収蔵されているエドワード・S・カーティス(1868−1952)——ネイティブの人たちから「影を捕らえる人(シャドー・キャッチャー)」と呼ばれた写真家——が、19世紀末から20世紀初頭にかけて撮影した北米インディアンの写真群のなかから今月も選んでいる。
今回は「鯨の儀式」と題された1915年に公開されたアメリカ大陸北西部の太平洋沿岸地域に暮らす人たちを記録したものから一枚をとりあげた。「Clayquot」は「クラクイット」と発音するらしい白人の呼び名だが、現在のアメリカとカナダの州境にあるバンクーバー島をテリトリーとするヌー・チャ・ヌルス(ヌートカ)に属する小さな部族のひとつで、ハイダ、チヌーク、クワキトゥールとはかなり近い関係にある人たちのようだ。彼等の暮らす島は北米大陸に手つかずに残された最後のそして最大の雨林(レインフォーレスト)の巨木の森のなかに位置し、そこは今は環太平洋国立公園となっていて、沿岸には自然にわき出す温泉もある風光明媚なところ(写真)。客人に盛大な贈り物を施すポトラッチをおこなう風習を昔から続けてきた海の人たちで、シーカヤックを操り沿岸域の鯨ハンターとしても名をはせた。写真の男性は危険な鯨猟に出る前に「鯨のスピリットを喜ばせるための禊ぎの儀式をしているところ」とノートがある。そこには、男は何度も海水に浸かり、身にまとうようにつけたツガの小枝で激しく自分のからだをこすってはまた海中に潜り、鯨の実際の動きを模倣していたと書かれている。
右欄巻頭の写真をクリックすると大きな画面に切り替わって、より解像度の高い精密な写真で見ることが出来るので、ぜひ細部まで見てほしい。この鯨ハントの前の浄化の儀式を見れば、鯨を狩る行為が「スピリットとの約束」に基づいたものであることがわかるだろう。生き物のいのちをいただくとは、ほんらいそうした約束の上に成立していたものなのである。ただ「殺して解体して食べる」だけではないのだな。
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Comments
先日 火事を起こしたクジラの調査捕鯨船が テスト航行するというニュースがありました。
「調査捕鯨」という言葉が物凄く嫌で嫌でたまりませんでした。
クジラをモノとしてとらえた生き方がそこにあると思いました。
Posted by: るーえ | Saturday, March 03, 2007 07:46 AM