わたしがわたしになれる場所
モイヤーズ:先生は『神話のイメージ』のなかで、変容の中心について、時間という壁が消えて軌跡が現れる神聖な場所について、書いておられる。聖なる場所を持つとは、どういう意味でしょうか。
キャンベル:これは今日すべての人にとって必要不可欠なことです。今朝の新聞になにが載っていたか、友達はだれなのか、だれに借りがあり、だれに貸しがあるか、そんなことを一切忘れるような場所、ないし1日のうちのひとときがなくてはなりません。本来の自分、自分の将来の姿を純粋に経験し、引き出すことのできる場所です。これは創造的な孵化場です。はじめはなにも起こりそうにないかもしれません。しかし、もしあなたが自分の聖なる場所を持っていて、それを(上手に)使うなら、いつかなにかが起こることでしょう。
モイヤーズ:この聖なる場所は、平原が狩猟民にもたらしたのと同じものを私たちにもたらす。
キャンベル:彼らにとっては世界全体が聖なる場所でした。しかし、いまの私たちの生活は、その方向性において非常に実際的、経済的なものになっています。だからみんな、ある程度の年齢になると、次から次へと目先の用事に追いまくられ、自分がいったいだれなのか、なにをしようとしていていたのか、わからなくなってしまう。四六時中、しなければならない仕事に追われているのです。あなたにとって至福は、無上の喜びは、どこにあるのか。あなたはそれを見つけなくてはなりません。ほかのだれもが見向きもしない古くさい曲でもいいから、とにかく自分が大好きなレコードを聴くとか、あるいは好きな本を読むとか。
比較神話学者、比較宗教学者ジョセフ・キャンベル(1904 – 1987)と
ジャーナリストのビル・モイヤーズの会話より
『神話の力』(1992年 早川書房刊 飛田 茂雄翻訳)から。
発言のなかの「(上手に)」の部分は北山が原文の意をくんで加筆した
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