チェロキー一族最後のメディスンマン
Amoneeta Wolf Sequoyah Cherokee Medicine Man |
「今後、世界が終わるときまで、イースタン・チェロキーからメディスンマンの指導者が現れることは、もうないだろう。人種としてのチェロキーは終わったも同然だ。みなことごとく白人になってしまった」アモニーダ・ウルフ・シクォヤ( Amoneeta Wolf Sequoyah )
明日1月25日はローリング・サンダーが地球の旅を終えてからちょうど10年目になる。この機会にローリング・サンダーに薬草のことやメディスンのことを教えた偉大な人物をすこし紹介しておこう。このふたつの世紀を生きた偉大なチェロキーのメディスンマンがローリング・サンダーに与えた影響の大きさがわかるはずだ。ロバート・ヤードレーという、運命的に彼の最期を看取った医療関係の人物が後に描き残した「チェロキーの最後のメディスンマン」という文書が手元にあるので、それを参考にした。[source : The Last Medicine Man in Cherokee written by Robert Yardley ]
アモニーダ・シクォヤはフルブラッドのチェロキーとして19世紀の前半に生まれて百年を超えて生き、1976年に地球の旅を終えている。メディスンマンであり、トリックスターであり、きわめて正直な人だったという。動かなくなったおんぼろの——なかにはただのひとつも時計がない——トレーラーハウスで暮らし、動物や植物との会話ができ、白人相手にはアパラチアン・イングリッシュといわれるかなりかわった——ぶっとんだ——英語を話し、生き残るためにはなんでもやった人で、テレビや映画の西部劇にも端役で出演したりしていたが、そうした仕事のない時——狩猟がうまくいかないとき——には、アメリカ政府からの生活補助を受けてフードクーポンで暮らしていた。小さなからだで、50年代後半にはフィンのついたボロキャデラックに乗り、生涯に3人のアメリカの大統領とも出会っている。
伝統的なヒーラーであり、アメリカ医師会から「ライセンスを持たないにもかかわらず医療行為をした」と非難されたことがあるが、彼は治療行為をしたのではなく、薬草の力を借りて「治癒をもたらした」にすぎないとして、それ以後はメディスンマンという名前を用いることはできなくて、単に「薬草家(ハーバリスト)」とのみ自分のことを名乗るようになった。赤と、白と、青とに塗り分けられた大きなピースパイプで誰とでも煙をわけあい、治癒を求める相手にも薬草をつめて吸わせた。相手がインディアンだと一切の治療費は受け取らず、インディアン以外だと「返金保証」で、一律18ドル(もしくはそれに見合うほどのもの)を請求したが、死ぬまでただの一度も金を返せと言われたことがないことが自慢だった。
チェロキー文字の開発者であり、「チェロキーの父」「チェロキーの最も偉大なチーフ」と呼ばれた大偉人のセコイヤ(シクォヤ)は母方の祖父であって、こともあろうにその名前がつけられた「セコイヤ原子力発電所」がチェロキーの人たちの墓地であるテネシー川そばのチャタヌーガの土地に建設されるときには自ら「一坪地主」となって抵抗運動にも加わった。(セコイヤ原発は1980年に操業を開始)
晩年は自分のことを「チェロキーにおける最後のメディスンマン」と呼ぶようになっていた。彼のメディスンについてはさまざまな奇跡の話が言い伝えられているが、実際に彼のヒーリングの場に立ちあった人によれば、それは自然にたいする全面的な信仰であったという。「信心と誠を偉大なる存在に与えれば、それは10倍の力を返してくれる」というのが、彼の癒しの中核にある考え方で、「癒しは自然がもたらす」と常に口にしていた。
リューマチで苦しむ女性が彼のもとを訪れて薬草を与えられ痛みがなくなったとき、「なぜこのリューマチの薬を売り出さないのか?」と尋ねられて、アモニーダは「このメディスンはあなたのためだけのものだから」とこたえている。「自分は病気を癒しているのではなく、それぞれの人が自分の力で自然に癒されているのだから、同じやり方はふたつとない」と。
「自分が教えたメディスンでわずかな金を稼ぐのはかまわんが、くれぐれもそれを使って大きく儲けようとなどしてはならない。もしそんなことをしたら、魂が毒に汚染されて永遠に地獄に堕ちることになる」
メディスンの極意を訪ねられて、彼は「真実を語ることだ。真実はあなたを自由にする」と答えている。「死」という言葉を使わずに、彼はいつも「眠る」という言葉を使った。そして彼がノースカロライナのクアラ自治領(東部チェロキーの土地)で長い眠りについたのは1976年のことだった。
註 以前、ローリング・サンダーについて書いた記事のなかで「Amoneeta Sequoyah」の読み方を英語読みで「アモネータ・セコイヤ」と書いた。今回あらためてチェロキーの発音辞典で確認して、極力オリジナルに近い読み方にすることにして「アモニーダ・シクォヤ」と改めたことを付け加えておく。
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