いつまでも見守ってくれるといいのだが
ペンシルバニア州ピッツバーグ市郊外のフェイエッテ郡にある私立動物園「ウッドランド・ズー」で先月中ごろに誕生したホワイト・バッファローの子供はまたしても変性女子(雄)だった。そして12月23日には地元のネイティブ・ピープルであるルナペ国(Traditional United Eastern Lenape Nation)のチーフ・ホワイト・パンサーが場をとりしきって、生まれて間もない白いバッファロー君に名前をつける儀式がにぎにぎしく執りおこなわれた。清めのセージが焚かれ、歌と踊りが奉納され、各地から祝福に訪れたさまざまに異なる部族の代表もまじえて、儀式は延べ2時間半にもおよんだという。
クリスマスの日の2日前に、ルナペの人たちが彼につけた名前は「カナキヘン(Kenahkihine)」というもので、これはルナペの言葉で「われらをお見守りください」という意味だという。チェロキーを代表して祝いの儀式を奉納したタミー・モーガンさんは「私はこの名前が気に入っている。わたしたちは見守られる必要があるから」と語った。
同じように儀式に加わったチェロキーのエルダーであるダナワ・ブキャナンおばあさんは、儀式を見守った数百人の群衆に「この白いバッファローは、ひとりひとりの人間にあらかじめ与えられている『すべてのはじまりの時における役割』にたいする責任を思い起こさせるだろう」と語りかけた。「風も、水も、植物も、人間以外のいのちある人たちも、そして人間も、みな同じようにこの地球を分けあう権利が与えられているのです。しかしわたしたち人間は、この地球を分けあうと言うことの意味が理解できなくなってしまっています」
このホワイト・バッファローに名前をつける儀式には、地元のネイティブ・ピープルであるルナペ・ネーション、そしてチェロキー・ネーションの代表の他にもブラックフットとモホーク・ネーションの代表が参列した。
この日ばかりは、動物園の人気者のトナカイや熊などはバッファローにすっかり話題をさらわれた形となった。この動物園を14年間守ってきたハリング氏は儀式のあと感慨深そうに「われわれの仕事は明かりを守る灯台守みたいなものかもしれません。すべての人たちに光りが届くようにするのが仕事なのです」と地元の新聞記者に語っている。白いバッファローが誕生してからこの日まで、そのバッファローを買いたいといういくつかの申し出があり、なかにはもうひとつ動物園が作れそうぐらいに高額なオファーもあったが、彼はこの白いバッファローの子供を売る気はないとも。彼はこうしめくくっていた。「われわれはネイティブ・アメリカンの人たちの気持ちを充分に敬います」
儀式にはさまざまなメデイアが駆けつけて記録にとどめている。可能な限りいろいろな写真を集めてみたのでカナキヘン君の姿を目に焼きつけてほしいと願う。彼の動いている姿と儀式の一部始終を伝える地元テレビ局のビデオニュースも見つけたのでリンクしておく。
KDKA CBS NEWS "Local Tribe Names Rare White Buffalo"
ホワイト・バッファローの伝承についてはラコタのエルダーでメディスンマンだったレイム・ディアーが語った「ホワイト・バッファロー・カーフ・ウーマンの物語」をぜひお読みください。あれからいくつもの冬を数えたが、遠い昔のこと、ふたりのスーの斥候が食べものとなるものをさがして旅に出たとき、彼らは白い服をまとった美しい女性と遭遇した。斥候のひとりはその女性を見てよこしまな感情を抱いたためにその場で絶命する。もうひとりの斥候は一族の野営地に戻り、そのための儀式用のティピを建て、彼女を迎え入れる準備をおこなう。白い服の女性はスーの人たちのもとを訪れて、正しい祈りのあげ方と、ありとあらゆるものがつながりあっていることを教えたという。そしてそこから去っていくとき、彼女は白いバッファローの子供に姿を変えていたという。
今では白いバッファローの誕生は、スピリットが帰ってくることのシグナルだと考えられている。エルダーたちは、人間の生きる道が分かれ道になるたびに白いバッファローが誕生するのだと語る。このところ立て続けに白いバッファローが誕生し続けていることから判断する限り、われわれは間違いなく岐路に立たされているのかもしれない。
願わくば彼が末永くわれわれを見守り続けてくれることを。
(可愛いなぁ。ピッツバーグまで会いに行きたくなっちゃいますね。)
グレイト・スビリットは急いでおられるのか(Native Heart Monday, December 11, 2006)
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Comments
いつも素敵なお話有難う御座います。
「カナキヘン」くんご誕生の朗報も
とても素晴らしいことだったのですが、
「ミラクルの再臨」くんの悲しいお知らせの
直後だったので、なんとなく気持ちの
整理ができないでいました。
今日のこのお話でやっと気分が晴れたような気がしています。
やっぱり「カナキヘン」くんの様子は微笑ましいですね。
きっと、深い意味があるのでしょうが、
とにかく、お誕生に感謝致します。
Posted by: 眞司 | Tuesday, December 26, 2006 08:43 PM
こんにちは、はじめまして。
インスピレーショナルなブログ、いつも拝読させていただいております。
先日ミラクルズ・セカンド・チャンスが雷光のようにやって来て、また雷ほどの早さで地上から去って行ってしまった直後、まさかこんなにもすぐに次のホワイト・バッファローの子供がやって来るとは、喜びと同時に驚きのニュースです。
本当に、グレイト・スピリットは急いでおられるのかも知れません。
偶然なのか必然なのか、現在ピッツバーグから車で数時間のところに住んでいます。千載一遇のチャンス(?!)、これはカナキヘンに会いに行くしかありません。(北山様もどうぞお出で下さい! そしてついでにこちらでもぜひ講演をお願いいたします~!^-^)
「われらをお見守りください」……心から、その通りです。
Posted by: アヤケレ | Friday, December 29, 2006 09:28 PM