アイヌの生活様式を知る第一級の調査資料
市立函館博物館友の会が試験的に公開している『市立函館博物館研究紀要』のなかの「在サンクトペテルブルグアイヌ資料の研究 ―МАЭ所蔵アイヌコレクションについて―」は、ネイティブ・ジャパニーズのライフスタイルの一端を知る上で実に興味深い文書である。(pdf書類とBlogで公開されているが、Blogの方はいずれ削除されてしまうらしい。pdfは読みにくいので、Blogの方でご覧になることをおすすめする)
この文書を書かれた長谷部一弘氏によれば「ロシア連邦科学アカデミー所管のサンクトペテルブルグ人類学・民族学博物館における二カ年におよぶアイヌ資料の民族学的調査は、北海道、サハリン、千島地域のアイヌ資料約1,400件という膨大な資料の確認をもたらした。これらの資料は、古くは1740年代以前のピョートル一世によるクンストカメラ時代に収集されたものから1947年の第二次世界大戦後に収集されたものまで実に二世紀にまたがる収集資料」だそうだ。そして「アイヌ資料は、生活用具の性格上おおまかに信仰・儀礼用具、狩猟・漁撈・採集用具、調整・加工用具、調理・調度用具、収納具、運搬・補助具、楽器、喫煙具、服飾具、玩具、住まい、絵画・習字・書類、加工材料等に分けられ、千島、サハリン、北海道という地域を異にしたアイヌにおける生活用具のほとんどを網羅している」という。
ロシア民族学がすごいのは、多岐にわたる生活用具のコレクションにとどまらないところで、「これらを産み出してきた原素材および加工材料も一連の貴重な資料として収集」されているのだという。その部分を引用する。
植物性素材は、衣服、物入れ、敷物、履き物などの材料となるオヒョウ、シナ、イラクサ、ハルニレ、ハンノキの樹木、樹皮、糸、紐、ツルウメモドキ糸、テンキグサ、ブドウヅル、スゲ、ガマ、カヤや食材としてのオオウバユリ、ウバユリ団子などが確認され、中でも、端部を三つ編み状に編み込んだスゲの繊維束は、靴の中敷きとして必要量に応じてむしり取って使用する、類例のない貴重な素材である。動物性素材は、アザラシ、トド獣皮、サケ、マス、イトウ魚皮、トド陰茎、カジキマグロ骨、トド脂、ニシン脂、貝殻等々があり、衣服、履き物の素材をはじめトド脂の食材、ニシン脂の灯明用素材におよんでいる。
「木幣、捧酒箆、護符に代表される信仰・儀礼用具」「狩猟・漁撈・採集用具」「調理・調度用具」「住まいに関わる生活用具」「イヌ橇等に関わる運搬・補助用具」「玩具」「煙管、煙草入れなどの喫煙具」「衣服、被りもの、履きもの、首飾り、耳飾りを含む服飾具」といった生活用具が、どのような天然の素材(植物・動物・鉱物)から作られていたかがかなり克明に記述されている。
写真は「靴」
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