イロコイの人たちの食事の前の祈り
毎年11月は、アメリカにおいては「有形無形のアメリカインディアンの文化遺産を忘れないための月 "National American Indian Heritage Month"」とされている。(過去記事 偉大なる白人の父が言っている[Native Heart Saturday, November 13, 2004]参照)とりわけ「食」を大切にすることも文化の遺産であり、食事を前にして唱える祈りの言葉にはその文化的な背景に応じて色々ある。
キリスト教のカトリックの人たちは
「主、願わくはわれらを祝(しゅく)し、また主の御惠(おんめぐみ)によりて、われらの食せんとするこの賜物(たまもの)を祝したまえ。われらの主キリストによりて願い奉(たてまつ)る。アーメン」というもの。
禅宗には「五観の偈(ごかんのげ)」というものがある。泊まり込みの参禅会などに参加すると教えてもらえるので知っている人もいるかもしれない。それはつぎのようなものである。
一には功の多少を計(はか)り彼(か)の来処(らいしょ)を量(はか)る。 二には己が徳行(とくぎょう)の全欠を忖(はか)つて供(く)に応(おう)ず。 三には心を防ぎ過(とが)を離るることは貪等(とんとう)を宗(しゅう)とす。 四には正に良薬を事とすることは形枯(ぎょうこ)を療(りょう)ぜんが為なり。 五には成道(じょうどう)の為の故に今此(いまこ)の食(じき)を受く。
これをウィキペディアではこう翻訳(?)している。
一つ目には、この食事が調うまでの多くの人々の働きに思いをいたします。 二つ目には、この食事を頂くにあたって自分の行いが相応しいものであるかどうかを反省します。 三つ目には、心を正しく保ち過った行いを避けるために、貪りの心を持たないことを誓います。 四つ目には、この食事を、身体を養い力を得るための良薬として頂きます。 五つ目には、この食事を、仏様の教えを正しく成し遂げるために頂きます。ネイティブ・アメリカンもさまざまな祈りの言葉を持っている。もともと1日24時間を宗教として生きていた時代には、口をついてくる言葉はすべて祈りであったわけで、特にきめられた言葉を口にしなければならぬというものでもなかっただろう。私事をいえば、ジョン・ポープ・ローリング・サンダーのところで、彼の一族の人たちと食事を囲んだときに、食前の言葉を求められて、しどろもどろながらありったけの感謝の言葉を述べたことがある。今回、イロコイの人たちが食事の前にあげていた祈りの言葉というものを日本語訳してみた。実に簡潔であり、その今ここにある事への感謝が見事に表現されているではないか。キリスト教や禅との違いを感じ取っていただければと思う。なお、英文は「追記」の部分に掲載してある。覚えて活用されたし。
食前の祈り イロコイ一族
母としてわれらを養ってくださる大地に
感謝をお返しします。
水を与えてくださる川や流れに
感謝をお返しします。
病を治す力となるすべての薬草たちに
感謝をお返しします。
太陽が消えた後も光を授けてくださる月と星たちに
感謝をお返しします。
慈悲に富むまなざしで大地を見下ろしておられる太陽に
感謝をお返しします。
最後に、すべての善なるものを形あらしめ、
その御子たちのために
あらゆるものを導かれる偉大なスピリットに
感謝をお返しします。
Blessing before supper
(Iroquois prayer)
(Iroquois prayer)
We return thanks to our mother,
the earth, which sustains us.
the earth, which sustains us.
We return thanks to the rivers and streams,
which supply us with water.
which supply us with water.
We return thanks to all herbs,
which furnish medicines for the cure of our diseases.
which furnish medicines for the cure of our diseases.
We return thanks to the moon and stars,
which have given to us their light when the sun was gone.
which have given to us their light when the sun was gone.
We return thanks to the sun,
that has looked upon the earth with a beneficent eye.
that has looked upon the earth with a beneficent eye.
Lastly, we return thanks to the Great Spirit,
in whom is embodied all goodness,
and who directs all things for the good of her children.
in whom is embodied all goodness,
and who directs all things for the good of her children.
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Comments
北山耕平さん
こんにちわ。
涼やかな朝、このような祈りの言葉を読み、清らかな気持ちになりました。
また、キリスト教と禅宗とネイティブアメリカンという3つの宗教を出してくださることで、偏向しない精神を感じました。
自然が好きな私としてはこれからも、『Native Heart』を読んでいきます。
Posted by: KEICOCO | Friday, November 03, 2006 11:50 AM
「大地の夜の中で植物が芽生える。
空気の力を通して葉がでる。
太陽の力を通して果実が熟す。
そのように人間の魂は心のなかで芽生え、
そのように精神の力は宇宙の光のなかで芽吹き、
そのように人間の力は神の姿のなかで実る。」
以上はルドルフ・シュタイナーの食前の祈りだそうです。
Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Sunday, November 05, 2006 02:34 PM