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Monday, November 20, 2006

ナバホの土地で今なにが起きているのか

Revised 9:30AM, Thursday, November 23, 2006

newsナバホ部族会議がナバホ国におけめウラニウムの採掘を禁止したというニュースを伝えてからだいぶ時間が経過した。ウラニウムの採掘を禁止するということ自体はネイティブ・ピープルの視点から見ればまったく正しい判断であるのだが、禁止しただけでナバホの人たちがこうむっている禍(わざわい)に終止符が打たれたわけではない。

ナバホ国部族会議がウラニウムに対して強い姿勢をとる背景にあるものは、今なお大量に放置されたまま人びとの体をむしばみ続けている放射能汚染された鉱滓や残土や廃棄物の存在であり、これは20世紀後半のいわゆる冷戦の置き土産なのである。とにかくその現実は壮絶であり、今なおナバホの人たちはむき出しの核廃棄物がそこら中に点在する土地で生活を余儀なくされているのだ。放射能に汚染された土がほこりとなって舞い散り、ナバホの人たちはそれを吸いこみ、放射能に汚染された水を飲み、鉱山や廃鉱から出た放射能汚染された残土で作った家で暮らす生活を余儀なくされている。つぎつぎと癌を発病する人びと。にもかかわらず合衆国政府は、さながら「インディアン絶滅計画を今も推し進めているかのように」まったく手を打とうともしない。

navajo uranium map partまず左の図を見てもらいたい。これは部分で、クリックすると全体図に別窓で拡大される。全体の地図はナバホの国土をしめすものであり、ほぼ中央にホピの国があるのがわかる。薄い赤色が現在のナバホ国の境界線で、濃い赤色は環境保護局が汚染の現状を調査しているエリアである。

ナバホの土地は世界でも有数のウラニウムが豊富に埋蔵されている大地であるが、この拡大図ではホピの国をぐるりと取り囲むようにドーナッツ状に広がっているナバホの土地の、いたるところに赤い丸印があるのがわかる。この赤丸のところが、ウラニウム鉱石の廃坑(かつて鉱山だった場所)で、その周辺には放射能に汚染された残土などがなんの手だても講じられず野積みにされていたりする。みんながよく知っているモニュメント・バレーもその周辺エリアにふくまれる。

1944年から1986年までのあいだに、核兵器と原子力発電の需要をみたすために400万トンものウラニウム鉱石がこれらの場所から掘り出され、放射能に汚染された鉱滓の大半がナバホの人たちの土地に撒きちらかされた。ざっと数えてそのうちの1000個所が、現在もなおそのまま放置され続けているのである。

blighted_homelandこうしたナバホの人たちの放射能汚染禍の現状を広く世界に知らしめるために、ロサンジェルスタイムズ紙が11月19日から4日連続で「荒廃する故郷(BLIGHTED HOMELAND)」というキャンペーンを展開した。このLA Times の National News の BLIGHTED HOMELAND のサイトに行ってほしい。同紙の記者による取材に基づいた記事そのものも良く書けているのだが、それにくわえてぜひ見てほしいのは、該当ページの右側に掲載されている「Blighted Homeland」という Flash の技術をつかったインタラクティブな音楽と声とメッセージの入ったスライドショーである。LA Times のページの右サイド中程から入れるし、この左の写真を直接クリックしてもいい。

現在は Part 1 「危険に気がつかぬままに」Part 2 「汚染された水」 Part 3 「地質環境汚染責任」 Part 4 「新たなるウラニウム・ラッシュ」のすべてが公開されている。タイトルの右にある「Part 1」から「Part 4」をクリックすることで、連続して視聴することもできる。

Part 1 ではナバホの人たちの生の声にかぶさるようにまるでニール・ヤングのようなもの悲しくもスピリットのあるカントリー調の歌が聞こえるだろう。ナバホのミュージシャンであるヴィンセント・クレイグ(Vincent Craig)が歌う「黄色い砂(イエロー・サンド」という歌である。ここで歌われている「黄色い砂」とは、そのまま「放射能に汚染された土ぼこり」を意味する。)Part 2 は放射能に汚染された水を「いのちの水」として飲んでいたナバホの人たちの現状と沙漠の地下水の放射能汚染が写真で報告されている。Part 3はチャーチロックというナバホのコミュニティを例に、汚染を除く作業の可能性と作業がずるずると遅れる理由を「沙漠の除染は蜃気楼にすぎない」というタイトルで追及する。ナバホの子供たちが日常的に遊ぶ小川の水もすでに汚染されているという。このチャーチロックにおける汚染残土の近郊河川への流出事故は映画「ホピの予言」でもとりあげられていたものだ。

Part 4の連載最終回では「ウラニウム鉱山会社がこのところのウラニウムの価格高騰を背景に再びナバホの大地に眠る膨大なウラニウムに触手を伸ばしつつある」ことを報告する。しかも彼らは今度は新しい技術を使ってウラニウムを『安全』に掘り出すとナバホの人たちの耳元で札束をちらつかせながらささやいている。ナバホの大地は、ウラニウム関係者たちによって「ウラニウムのサウジアラビア」とまで呼ばれるぐらいに埋蔵量が多く、このウラニウムを狙っている企業のなかには日本の商社の伊藤忠商事もふくまれている。ウラニウムを買いたいと申し出た伊藤忠の会長に、ナバホ部族会議の議長は「われわれはいかなる採掘もわれわれの共同体のなかでおこなわれることを欲しない」との拒絶の手紙を送ったと記事には書かれている。ナバホの人たちは絶対に今後もいかなる採掘をも認めないと言ってはいるが、ナバホの部族の土地に眠るウラニウムを虎視眈々と狙う企業はそれでもあとを絶たないのである。

メデイアストームというプロダクションが制作したこの作品をとおして、ナバホの人たちのそれでもなお美しすぎる赤い大地と、そこに生活しながら目に見えない放射能汚染に苦しむ人たちの生々しい姿と声を聞くことができるだろう。今ナバホの大地でなにが起きつつあるのかを、世界は知るべきだし、この人たちの苦しみに終止符を打つために早急に手を打つべきであると誰もが感じることができるはずだ。

冷戦時代にアメリカに付き従ってきたすべての国と、今なおアメリカ的生活様式をむさぼりつつある国には、この現実に対して重大な責任があるはずだと、ぼくは考えるひとりである。

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