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Friday, November 10, 2006

なぜ冬がくるのだろうか?

再話・太陽と月を盗み出したコヨーテと鷲のお話し

ズニ一族 北米大陸南西部


るか昔、まだ空に光がなく一年中暗闇のなかにいた頃の話だ。

世界は真っ暗だった。しかもただ暗いだけでなく、一年をとおして夏のように暑かった。

コヨーテは毎日のように狩りに出ていた。

でもコヨーテには獲物がまったくなかった。

コヨーテは暗がりの中ではあまり目が見えないからだ。

闇の世界ではコヨーテは最低の狩人だった。

鷲が自分では食べきれないぐらいの兎をやすやすと捕まえて食事にしているのをコヨーテは時々目の隅で見ていた。


るとき、コヨーテは鷲にむかってこう声をかけた。

「友よ、どうにもこうにも目が見えなくて自分にはなにひとつ捕まえることができない。どこかで少し光を手に入れられるところを知らないか?」

「そういうことなら」と鷲がこたえた。「西の方にならなにかあるかもしれん。一緒に探してみよう」

そしてコヨーテと鷲のふたりは連れだって旅に出た。

西の方になら太陽も月もあるかもしれない。

しばらく旅を続けたところでふたりの行く手に大きな赤い川があらわれた。

鷲は軽々と川のうえを飛び越えて対岸に渡った。

コヨーテは泳いで渡ろうとしてたらふく水を飲んで危うくおぼれかけた。

泥まみれになって川からはいあがってきたコヨーテに鷲が、

「なぜ空を飛ばない?」とたずねた。

「お前には羽根があるが、俺には毛しかない。羽根がなければ空は飛べんのだよ」


Zia (zuni symbol)



うこう旅を続けるうちに、ふたりはとある村にやってきた。

村の広場ではたまたまカチーナたちが踊りを踊っていた。

カチーナたちはコヨーテと鷲を暖かく迎え入れ、火のそばに座って聖なる踊りを見るようにすすめた。そして食べものも与えてくれた。

その村のカチーナたちはみなたいへんな力を持つひとびとだった。

しばらく踊りを見た後で鷲が口を開いた。

「この人たちだったら必ず光を持っているはずだ」

コヨーテはあたりをきょろきょろ見まわした。

そしてふたつある箱に目をつけた。

ひとつは大きな箱で、もうひとつは小さな箱だった。

見ているとカチーナたちは、光が必要になるといつでもとどちらかの箱のふたを開けているではないか。

たくさんの光が必要なときには大きな箱のふたを開けていた。

大きな箱には太陽が入っていた。

わずかの光が必要なときには小さな箱のふたを開けていた。

小さな箱には月が収められていた。

コヨーテは鷲の肩を突っついた。

「友よ、あれを見たかね? 大きい箱の方に、わしらが必要とする光が全部はいっているじゃないか。盗み出そうぜ」

「お前はいつだって盗むことしか考えていないのだな。どうせなら、少し借りるっていうのはどうかね」

「俺たちに貸してくれるわけがなかろうが」

「それもそうだな」鷲がうなづいた。「踊りが終わるまでおとなしく待って、それから盗み出すとするか」


ばらくして、聖なる踊りが終わり、カチーナたちがそれぞれの家に入って眠りについた頃、二匹の動物はその箱を盗みにかかった。

箱のところでなにかしていた鷲が、いきなり大きな箱をくわえて空に舞いあがった。

コヨーテはあわてて鷲の後を追った。追いかけても追いかけても、空を飛ぶ鷲に追いつくことはできない。

コヨーテの心臓は今にも破裂しそうだった。長い舌をつきだしてぜいぜい言いながら、コヨーテは空の鷲にむかって叫んだ。

「ホゥ! 友よ、箱を持つのを代わらないか?」

「いやなこった。なにをされるかわかったものじゃない」

そういうと鷲はさらに飛び続けた。コヨーテはけんめいに鷲の後に続いた。


たしばらくしてコヨーテは鷲にむかって叫んだ。

「友よ、あなたは偉い! 俺はあんたをチーフにする! チーフがそんなものをはこんでいたらさまにならんぞ。おつきの俺のことを、きっとみんなはナマケモノとさげすむだろう。だからどうか荷物は俺に持たせてくれ」

「おことわりだね。そんなことをさせたら、ろくな結果にならない」

そういうと鷲はさらに飛び続けた。コヨーテは必死に後を追いかけた。

しばらくして空が大きく開けたところに出たところで、コヨーテがまた声を張り上げた。

「ホゥ。友よ! あんたは荷物運びなんてするべきじゃないんだ! いったいみんなはあんたと俺のことをどう見ると思う?」

「どう思われようが、知ったことか。箱はわたしが運ぶ」

そしてさらに鷲は空を飛び続け、コヨーテは死に物狂いでその後を追いかけて走った。

そして四度目の正直で、コヨーテは今度はひたすら頼みこむ作戦に出た。

「頼むよ、頼みますよ、鷲さん、おい、チーフ。あんたこそチーフだ。おいらはただのコヨーテさ。だからお頼みしますよ。どうか、どうか、その箱を、おいらに持たせてください。頼む。頼みます。どうか、どうか、ぜひ」

さしもの鷲もこのときばかりは折れてやることにした。なにしろ四度目の正直だ。コヨーテは四回もお願いしてきた。四は神聖な数で、もし誰かに四回頼まれたら、その声にこたえてあげるべきなのだ。鷲がこたえた。

「そこまでいうからには、まさかわたしのことをだましたりはしないだろうな。しかたがない。持たせてあげよう。ほんの少しのあいだだけだぞ。ただし絶対に箱のふたを開けないようにな」

「もちろんでさ。ありがとうございます。お約束しますよ」


たりはそこからまた移動を開始した。今度はコヨーテが箱を抱えていた。

身軽になった鷲は軽々とひとっ飛びで遠くまで飛んだ。

箱を抱えたコヨーテは大きく後れを取ることになったが、それは彼の作戦だったのかもしれない。鷲の姿が見えなくなったことを確認して、コヨーテは頭のなかで良からぬ事を考えた。

「いったい光とはどんなものなのだろう? ちらっと中をのぞいてみても悪くはあるまい。あれほど鷲が見てはいけないというぐらいだから、光以外にもお宝が箱のなかに入っているかもしれない。あいつは、そういうやつだからな」

なかを見てみたい一心でコヨーテが箱のふたをすこし開けた途端、いきなり太陽と月がひゅーっと飛び出して、空に逃げ出した。なかには太陽だけではなく、月も入っていたのだ。鷲が、ふたつを一度に運ぶのはたいへんだからと、小さい箱のなかの月を大きな箱の中に一緒に入れてあったのだった。


くして大地は光を獲得した。しかし、そうやって大地に光を与えることは、同時にたいへんに熱を奪うことでもあった。あれよあれよという間にありとあらゆる植物が一瞬にして干からびたようになって茶色に変色した。木々の葉もたちまち全部散って落ちてしまった。そして世界は冬になった。

なんとか月だけでも捕まえて箱に戻そうとコヨーテは月の後を追いかけたものの、月はするりと彼の伸ばした手から逃げていった。

そうこうしているうちにも、太陽は高く中天に駈けのぼり、それにつれて桃も、スカッシュも、メロンも、全部寒さのせいで傷んでいった。

しばらくして鷲がもどってきた。あまりにコヨーテのくるのが遅いので、なにがあったのか確認しにきたのだ。

coyote moon「このまぬけめ! いわんこっちゃない。太陽と月を逃がしたために、寒さがやってきてしまったではないか」

確かにその通りだった。世界には雪が降りはじめていた。

コヨーテはがたがたと震えた。鷲がコヨーテに声をかけた。

「寒さで歯ががちがちいっているが、お前が寒さをこの世界に持ち込んだのだから、それもしかたがなかろうよ」

そうなのだ、コヨーテの好奇心がそんなに強くなくて、もう少しましな判断ができていたなら、この世界に冬という季節はなかったかもしれないのだ。そうすれば、いつまでも夏を楽しみ続けることもできたはずなのに。

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Comments

ふふふ、かわいいお話ですね。僕は冬生まれで、寒い冬が好きなので、だらしのないコヨーテくんに感謝です。

だけど、このところ11月だっていうのに日中は結構暑くなる…。冬の身が引き締まるような寒さがないとつまらないな…。

あぁ、そうか、きっと僕はコヨーテくんのように自分の欲に節操がないところがあるから、厳粛な冬の寒さに戒められることを、バランスとして、どこかで自ら求めているのかも知れませんね。

Posted by: りょうちん | Saturday, November 11, 2006 at 04:44 PM

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