サンクスギビングって、いったいなんなの?
勤労感謝の日だね。ぼくにはあまり関係ないけれど。アメリカでは11月の第4週目の木曜日が「サンクスギビングデイ」だ。新大陸に移住してきた清教徒たちが、無事に生き延びたことを感謝し、先住民(ワンポアノグの人たち)たちを夕食に招いて、みなで親しくスカッシュやコーンや七面鳥を分けあって食べたことが起源だとされているが、これは真っ赤な——じゃなくて白々しい——嘘なのだな。どこを調べてもそのような歴史的な事実は全くないという。ワンパノアグの子孫という人が話していたことだが、あのときに清教徒から招かれたという事実は全くないと言うことだった。ネイティブの人たちが清教徒のもとを訪れたのは、砦のなかで銃をぶっ放すなどの大騒ぎをしていたので、条約が守られているのかどうかを確かめに行っただけだと。
『先生が教えてくれた嘘( Lies My Teacher Told Me )』という興味深い本(註)を書いたジェイムズ・W・ローウェン(James W. Loewen)も、その本の中で、感謝祭に先住民と収穫を分けあったとするのは、「この国のはじまり方を気持ちいいものにしようとする捏造にすぎない」と言っている。
感謝祭がアメリカで認定されたのは、清教徒たちがボートピープルとしてイギリスから新大陸にたどりついてから200年ほど経た1863年で、時の大統領だったエィブラハム・リンカーンが休日を宣言したものだ。リンカーンは清教徒とインディアンが仲がよかったことを顕彰するためにこの日を休日にしたのではなく、血で血を洗うアメリカ合衆国国内の内戦(独立戦争)に嫌気がさしていた人たちに、このあたりでひとつみなの心が温まるような祭りでも提供する必要があるのではないかと考えたからに他ならない。
清教徒たちはけして先住民と仲良しだったわけではない。もちろん清教徒たちを乗せたメイフラワー号がプリモスの岩場に接岸するずっと前から、この季節になると亀の島(アメリカ大陸のもとの名前)東岸一帯に暮らすネイティブ・ピープルは毎年さまざまな大地の恵みをみなで分けあう伝統的な祭りの習慣を持っていたのだ。それは間違いない。しかし、そこに難民同様に着の身着のままでたどりついてなんとか生き延びた清教徒も混じってみんなで一緒に盛大に仲良く食事をしたなんていうたわごとを信じてはいけません。
元込式の銃以外にはろくな道具も持たず、食糧もなく、着の身着のままの清教徒たちがなにをしたのかというと、まずは周辺の先住民たちを追い払い、彼らの食糧であるスカッシュやトウモロコシ、生活に用いていた土器類などの略奪。さらには先住民の墓をことごとく暴いてさまざまなものを盗掘。結核などのさまざまな疫病を意図的にばらまいた。このように仲良しの友だちにするにしてはおそろしく荒っぽいやり方で、清教徒たちはたった50年でその土地の先住民たちをあらかた追い払い、殺しつくしてしまったのだ。
イギリスの国王は、何百万ものネイティブ・アメリカンが病気でばたばたと死んでいるとの報告を受けて、「なんと素晴らしき疫病であることよ」とコメントし神に感謝したという。彼らはインディアンを成敗するために神が疫病を与えてくれたと本気に信じていたのである。
まったく心温まる話でなくて申し訳ない。
(註) 歴史というものがいかに嘘で塗り固められているかを教えてくれる本。英語の本だが読む価値はある。"Shop Native Heart"にも入れておきました。
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Comments
歴史的事実の有無の問題を通り越して、アメリカではもう近年は「先住民とともに」というものがサンクスギビングから欠落していると思います。
Posted by: ハマンダ | Friday, November 24, 2006 06:51 AM
というと結局サンクスギビングデイがきて、これを歴史的に問題にしているのはネイティブ・ピーブルだけということか。ぼくが参加しているネイティブの人たちのメーリングリストでは、毎年この季節になるとけっこう盛り上がるのですよ。アメリカは歳末商戦のはじまりを告げるイベントだったりしてるけど、買い物してる場合ではないのに。
Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Friday, November 24, 2006 07:41 AM
はじまめして こんにちわ
「サンクスギビング」について調べていたら、このブログに辿り着きました。
とても参考になりましたので、私のブログからリンクをはらせて頂いたのですが良いでしょうか?
私もネイティブアメリカンの考えに深く共感しているひとりですし、ケルアックの記事も大っ変面白く読ませて頂きました!!これからも、興味深い記事楽しみにしていますね。また遊びに来ます〜。
Posted by: rarara | Saturday, November 25, 2006 12:00 PM
rararさんへ
リンクはご自由にどうぞ。rararさんの関心あるものがこの空間で見つけられればよいと思います。自分の場所を見つけてくつろいでください。
アニー・リーボビッツの写真展の話を読ませてもらいました。実はぼくは20年ぐらい前に彼女の写真集の日本向けのものを編集を友人とふたりでしました。『アメリカの神々』(福武書店)といいます。彼女が写真家になってから最初の十数年間にローリングストーンという雑誌のカバーや紙面を飾った写真を集めたものです。彼女と同世代なもので名前には懐かしいものがありました。
Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Saturday, November 25, 2006 01:41 PM
はじめまして、こんにちわ。
ネイティブアメリカンについて、とても有意義な事が
書かれていて、勉強になります。
これからも拝見したいので自分のブログにリンクさせていただきましたが、よろしいでしょうか?
今後も楽しみにしております。
Posted by: dodo | Thursday, November 22, 2007 03:42 PM