人生には七つの誘惑が待ちかまえているという
グレイトスピリットは部族によってさまざまな名前で呼ばれている。ネイティブ・アメリカンのなかでもかなり大きな集団であるアニシナベ(オジブワ、チペア)の人たちの信仰の対象は「偉大なメディスン(神秘)」を意味するアニシナベの言葉で「ミデ」といわれる目に見えないものである。ミデは東西南北四つの方角におられるスピリット——彼らはそれを「マニドゥ」と呼ぶ——からのそれぞれの贈り物だ。
ミデは一族の宗教の基本であり、道徳的に清く正しい生き方や、病の治癒にも関係するものとされる。ミデにたいする信仰を基に形作られているメディスンパーソンのための複合的な組織・結社をアニシナベの言葉で「ミデウィウィン(Midewiwin、Midewin、 Medewiwin) )」という。英語では「グレイト・メディスン・ソサエティ」と表現されることもある。今回紹介する絵の写しのオリジナルは1890年代にカバの木の皮に筆写されたもので、これを見ることによって結社の内部においてミデにたいする信仰と人間が生きるための目的を説明し確認しあうものだという。
それにしてもこの図はなにを示しているものなのだろうか? なぜ線はここで折れ曲がっているのか? 左側の円から右の円にいたるまでの、さながらのこぎりの刃のように折れ曲がる道筋はなにを意味するのか? 線が折れ曲がって分岐しているところではなにが起きるのか? 線と線が接しあって、外に飛び出している部分は、長く生きられないということをあらわすのか? 人間がおのれの寿命を全うするまで充実した生をおくるためには、どのような生き方があるというのか?
アニシナベの人たちはこの図をつぎのように読む。
この図は若いときから老年に向かう人の生きる道を表している。
線と線が分岐して山になったり谷になったりしているところがあるが、そのふたつの線が接する角の部分は「誘惑」をあらわす。
そうした誘惑は全部で7回訪れる。
生まれてからしばらく人は屈折はあるがそれなりにまっすぐ育つ。
そして最初の分かれ道が、誘惑が、やってくる。
この最初の誘惑に負けたものは長生きができない。
2回目の分かれ道は、2回目の誘惑を意味する。
この誘惑に負けるとその人間は短命に終わる。
3回目の誘惑になると、ここではじめて宗教的な責任というものが問われることになるという。ミデウィウィン結社に入った際にいかなる行動をしたか? 年配の人たちを敬い、自分に与えられた義務を忠実に遂行したか?
4番目の誘惑は道半ばを越えたあたりで待ちかまえている。それは中年期にやってくる誘惑をあらわしている。
5番目の誘惑。それまで辿ってきた自分の来し方を振り返るようになって考える。これまでに一度たりとも年寄りに向かって無礼な態度を見せたことはなかったか?
6番目の誘惑では、再び信仰が問われることになる。汝はお前に与えられた宗教的な義務のすべてをひとつ残らず達成したか?
そして晩年、7番目の誘惑がくる。すべての誘惑のなかで最もきつい誘惑だ。この誘惑に持ちこたえたものはその人間の寿命をみたすまで生きることができるだろう。しかしこの7番目の誘惑には、邪悪なスピリットがやってくる。そしてミデの儀式のなかで笑みを浮かべただけでも処罰されなくてはならない。
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Posted by: paint for home | Monday, December 01, 2014 05:00 AM