« フル・ハーベスト・ムーン | Main | 世界は鏡であるという教え »

Saturday, October 07, 2006

100まで数える (オマハに伝わる教えの物語)

ここに紹介するのはオマハ一族に伝えられたティーチング・ストーリーのひとつである。オマハとは「風に逆らい、流れに逆らって進む人たち」の意味だという。スーの人たちと境界を接した中部大平原のネブラスカに暮らし、トウモロコシ、豆、スカッシュ、メロンなどを栽培していた。


るところにひとりの若者がいた。

その若者は、みなの尊敬を一身に集める立派なエルダーになりたいと願っていた。彼の部族にはそういうエルダーたちが集まってつくられている「白い貝殻の会」という講(ソサエティ)があった。エルダーのひとりが若者に向かってこう諭した。

「おまえさんは100まで数えることを学ばねばならん」

「100まで?」と若者は思った。「簡単なことですよ」


で、ある日のことだった。

ホームレスのおばあさんがひとり、若者の暮らす町にやってきた。汚れて、やせこけていて、足を引きずっていた。

町の人たちの大半はこのおばあさんの姿をちらと見ただけで、そそくさと姿を消した。なかにはその姿を上から下までじろじろとながめたあげく、背後から心ない言葉を吐き捨てるものもいた。

あのときのエルダーがそのホームレスのおばあさんに憐れみを感じて

「偉大なる曾祖母よ、うちに入って一休みしなされ」と声をかけた。

そしておばあさんのやせ細ったからだに腕を回し、抱きかかえるようにして、家のなかに案内した。じいさまはそのホームレスのばあさまを心から歓迎した。そして飲み水を与えた。

ホームレスのばあさまは一息ついて水を飲んだ。

つぎにじいさまは彼女に温かいスープを与えた。

じいさまは自分の女房と娘たちを呼び集めた。そしてこう告げた。

「おまえたち、こちらのグランマザーを、風呂に入れてあげてくれ。それから着替えをひとそろいあげてほしい。わしがギブ・アウェイのためにビーズで飾りをつけたバックスキンのドレスがあっただろう。あれを着ていただいて、ここにある新しいモカシンを履かせてあげてくれないか」

じいさまの女房と娘たちは、その年寄りのおばあさんを風呂に入れてやり、髪の毛をきれいに洗い、櫛をとおしてから、編みあげた。そして真新しいドレスを着せた。おばあさんは別人のように見えた。

それからおじいさんの家族はそのおばあさんに、どこにも行く当てがないのなら一緒にここで暮らしてはどうかと声をかけた。おばあさんは心を動かされてそのままその家の家族のひとりに加わった。


るとき、くだんの若者が新しい家族と楽しそうにしているおばあさんを見つけて、エルダーにたずねた。

「あの方は、例のホームレスのおばあさんですよね? だれがこんなことをしてあげたのです?」

エルダーがこたえた。

「よいか、こうやって数字を増やしていくのだ」


ギブ・アウェイ いろいろな人に自分の持っているものを分け与えること。あるいはそのための祭礼。嬉しいにつけ悲しいにつけ、冠婚葬祭のあらゆる時に、ネイティブ・ピープルはたいてい盛大に贈り物をしあう。

|

« フル・ハーベスト・ムーン | Main | 世界は鏡であるという教え »

Storytelling Stone」カテゴリの記事

Comments

素晴らしいっ!自分もやってみようっ!て、ただただ感心しちゃいました。ありがとうございます。

Posted by: sauzi m | Sunday, October 08, 2006 12:59 AM

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 100まで数える (オマハに伝わる教えの物語):

« フル・ハーベスト・ムーン | Main | 世界は鏡であるという教え »