10月13日は母なる地球に丸1日の休息を与えよう
UNPLUG AMERICA GIVE MOTHER EARTH A REST DAY, OCTOBER 13
母なる地球に1日の休息を与えよう[電気のコンセントを抜いて]というキャンペーンは1992年にアメリカ先住民らの有志によって呼びかけられた。先住民のみならず、あらゆる人たちに、母なる地球と聖なるいのちの輪にたいする愛と尊敬を態度で示してもらおうと呼びかけられたもので、不健康な消費のパターンやわれわれの環境を破壊する毒物の製造が続けられていることを問題にしている。今日はその呼びかけの文書を紹介し、若干の解説を加えていこうと思う。
UNPLUG AMERICA -- GIVE MOTHER EARTH A REST DAY OCTOBER 13
それはいうならば13日を「電気のコンセントを抜く日」にしようという「純粋なたくらみ」で、そのために「アンプラグ・アメリカ」と謳っているが、この場合の「アメリカ」は「アメリカ的生活を送っているあらゆる世界の国々」を指していることは明白であり、そのなかには「日本」も当然ふくまれている。兄弟姉妹たちよ、つまり「アンプラグ・ジャパン」であります。
各人がそれぞれの家庭でこの日は1日テレビやラジオやコンピュータの電源を切り、水道を1日使わず、化石燃料を燃やして動く乗り物には乗らないようにしようというもの。1年のなかのたった1日限りのことではあるけれど、それはわたしたちの大地と資源を——ダメージを受けている地球の健康状態を——回復に向かわせるための第一歩にはなるはずなのだ。未来の世代のために今はじめるべきこととして、わたしたちが、個人的に、国として、地球規模で、大地や資源を実際にどの程度消費しているかをありありと写し出すにちがいない。(ぼくはこうした楽観主義が好きだなぁ!)
そしてそれはまたもうひとつの生き方、健康で永続可能な生き方、あらゆる種の相互依存性を讃えるいのちの祝祭としての生き方を探求する、またとない機会にもなるだろう。
そういえば80年代にネイティブ・アメリカンのエルダーたちが予言したことのなかに「電気を止める子供たちの登場」がある。「大人たちはさまざまな理由をつけてそれを拒むかもしれないし、怖がる人たちもいるだろうが、新しい世代のなかからそれを楽しんでやるものがあらわれる」というものである。あなたもその日1日だけでも試してはみませんか? 試してみるだけでよく、やってみて気に入ったら、毎月1日そういう日を設けるようにすればいい。地球が自分の母親であり、生きている女性であることを思いだそう。そしてその日はお母さんを休ませてあげよう。ついでにいうなら、この日は里山におりてこざるを得ない熊たちの声を聞く日にするのもいい。
この「電気のコンセントを抜く日」を呼びかける文書のなかの「なぜ消費活動を問題にするのか」という部分を引用してみる。
われわれが消費するものはなんであれことごとくすべてが環境にたいして影響を与える。あなたが使っているでかきはどこで作られて、どのようにして送られてくるのか知っていますか? あなたが読む新聞や雑誌や本に使われる紙については? ガソリンは? ガスは? あなたの出すゴミはどこに行くと思いますか?暗闇のなかでじっとしていろなどと誰も言ってはいません。ほんとうに必要なものだけを使うことで、ひとりの人間としての責任を果たしましょう。わたしたちの資源を守るために今立ちあがりましょう。わたしたちの未来はそれにかかっているのです。
ウラニウム、天然ガス、石油、材木、水、そしてさまざまな鉱物。こうしたもののほとんどがこの地球においては先住民とされる人たちの大地で発見されている。そしてそうした貴重な天然資源は大企業によって強奪されている。資源の発掘や奪取が、その土地に暮らす人々の文化や生き方や健康や安全安心を、どのくらい脅かすものかを、そうした企業はまったく関心を払わない。大地とひとつになって生きているその土地のネイティブ・ピープルのことなどまるで眼中にないかのように振る舞っている。その結果大地の破壊はそのまま大地とひとつになって生きている人々を破滅させてしまう。
こうしたことから考えれば、大企業の稼ぎ出す収益は、先住民の(そして大地の)いのちの値段であると言っていい。これは「文明」と称するものが「野生なるもの」と最初に接触したときから一環して続けられてきているパターンである。どこの国の歴史を見ても明らかなように、常に先住民の暮らす大地は「開発」のターゲットにされ続けてきた。
こうした無責任で危険きわまりない天然資源開発の典型的な例をひとつあげるならば、過日衛星放送で放映された「母なる大地を守りたい——立ち上がるアメリカ先住民」というドキュメンタリー番組のなかのひとつのエピソードにもなっていたが、アリゾナとニューメキシコに広がるナバホ国(居留地)にあるむき出しのまま廃棄されているおよそ1000カ所にもおよぶウラニウム鉱山がある。それらは今もなお撒きちらかされる放射能汚染物質によってアメリカ南西部の大地と水資源とそこに暮らす人々のいのちを汚染し続けている。「電気のコンセントを抜く日」を呼びかける文書はつぎのような言葉で終わっている。
こうした安全のことなどなにひとつ配慮されず、そこに暮らす人たちのいのちの健康のことなどお構いなしの慣行が、現在もなお世界中で繰り広げられています。太平洋各地の、南米や中米各地の先住民たちは、アメリカやカナダのエネルギー習慣とひきかえにいのちを差し出しているのです。こうしたことに頼らないでも持続可能で健康的なエネルギー生産としてはソーラーパワーや風力発電といった別の選択もあるでしょう。
もちろん、世界各地の先住民の持続可能な暮らしや健康をむしばんでいるのは、アメリカやカナダだけでなくて、あなたやわたしが暮らしている日本もそのなかに当然ふくまれている。
この自発的行動への呼びかけ人にはネイティブ・アメリカンの女性として積極的にアメリカの政治に関わりを持ち続けているウィノナ・ラデューク(インディニアス・ウィメンズ・ネットワーク)や、インディニアス・エンバイロメンタル・ネットワークのトム・ゴールドトゥース、ネイティブ・ピープルの活動を支援する先住民組織7世代基金(セブンス・ジェネレーション・ファンド)のクリストファー・ピーターズ、国際的環境保護団体グリンピースのニラク・バトラーといった人たちが名を連ねる。
またこの「母なる地球に1日の休息を与えよう」という呼びかけに賛同して、部族あるいは組織としてこの日に自分たちなりの行動をとる北米先住民には、ハイドロケベック社を相手にダム建設阻止を勝ち取ったクリー一族(カナダ)、モンタナ州にある一族の聖地リトル・ロッキー・マウンテンズにおける北米最大の露天掘り金鉱と対決するグロス・ヴェントレおよびアシニボイネの人たち、自分たちのリザベーションの家屋50戸の屋根に太陽熱発電パネルを設置したアリゾナのホピの人たち、自分たちの植物資源にたいする除草剤や殺虫剤の散布に反対するカリフォルニア・インディアン籠編み人組合、アラスカの極北野生動物保護地区における石油発掘に抗して最前線で闘うグウィッチィンの人々、自分たちの信仰の自由を妨げようとしているカトリック教会や自分たちの聖山であるマウント・グラハムに天体観測施設を建造しようとしているアリゾナ大学と争っているアパッチの人たち、硫化鉱採掘開発で大地と水と文化の汚染を企むエクソン社などと闘うウィスコンシン州のアニシナベ、ポタワトミ、オネイダ、メノミネ、ストックリッジ・マンスィーの各部族の人々、廃棄物処理場計画に抵抗して森林の伐採を阻止してきたディネ(ナバホ)の人たち、石油と天然ガスの採掘による自分たちの大地の汚染を防ごうとしているオクラホマの先住民の人々、そして自分たちの大地に核廃棄物処理場をつくることを拒絶した16を超えるネイティブの国々の人たちなどがある。
この「電気のコンセントを抜く日」がこの先どのくらい定着するかはまだわからない。でも楽しみながらならやってみる価値はあると思う。
自分たちの国の一部がアメリカ政府によって核実験場として取りあげられて以来核の鎖を断つことを活動目標に掲げ続けるウエスタン・ショショーニの人たちの自国防衛組織であるディフェンス・プロジェクト(Western Shoshone Defense Project)のカレンダーを見ると、今年2006年の「アンプラグ・アメリカ」の日、10月13日には、先ごろのサウスダコタのベア・ビュートで開催された先住民の国々の会議でとりまとめられた「514年間続く南北アメリカの植民地化への抵抗運動」と世界中の先住民との連帯のための南北アメリカ先住民によるこの電気のボイコットへの呼びかけがある。
写真 あのシエラクラブが10周年を記念して刊行した素敵に官能的な写真集のカバー。『母なる地球——女性のカメラマンと作家の目をとおしてみたその姿』(Mother Earth: Through the Eyes of Women Photographers and Writers)ジュディス・ボイス編集。Sierra Club Books。ながめているだけで心がおだやかになってくる悩ましい地球の写真集。
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Comments
いつも、お話し有り難うございます。
Posted by: 美紀子 | Friday, October 06, 2006 08:53 AM