健康を犠牲に文化を守る
デトロイト・フリー・プレス紙が8月6日に「水質汚染が伝統的なアメリカ・インディアンの生き方を危機にさらしている(AMERICAN INDIAN TRADITIONS: Toxin endangering tribes' way of life)」という記事を掲載した。アメリカでは現在40を超える数の州で水銀やポリ塩化ビフェニール(PCB)などによる魚の汚染が問題にされて、そうしたところで穫れた魚を食べ過ぎないようにとの警告が発せられているが、ミシガン州北部もそうした土地のひとつだ。
しかしこの土地のネイティブ・ピープルであるアニシナベの人たちにとって「魚」は単に食料であるだけでなく、「一族の過去の世代とも密接につながる」きわめて象徴的な「スピリットを与えてくれるもの」だった。オタワ・インディアンのリトルリバー・バンドの一員で自然資源委員の議長を務めるジミー・ミッチェル氏は「わたしたちの一族は、生きるために必要なものは常に川や湖から得てきたのです。そこで魚を食べることはそのままわたしたちの一部なのです」と語っている。
ある統計によればチペア(アニシナベ)の人たちは一年にひとりあたり62匹の魚を食べているという。スポーツで魚釣りをしている人たちが年に42匹、一般の平均的アメリカ人が年に36匹ほど食べる。この結果近年ではチペアの人たちの血液中の水銀濃度もここ3年ほどでかなり上昇しているのだと記事は伝える。
この問題をかねてより調査してきたデラウエア大学エネルギーと環境資源政策センターのエイミー・ロー教授は「汚染された川や湖で魚を捕って暮らす先住民たちは、文化を守る代価を自分たちの健康によって支払っている」と指摘した。
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