文明というもののあり方
渡来系アメリカ人による文明とネイティブ・アメリカンの文明(生き方)とを比較検討して、「白人(アメリカ)の文明は失敗だった」と結論づけたかのアーネスト・T・シートン Ernest Thompson Seton が、どちらが秀でている文明かを評価するために使った質問のリストを以下に掲げておく。これは1935年に刊行された『レッドマンの福音書 The Gospel of Redman』という書物のエピローグに出てくるもの。日本語訳は北山耕平がおこなった(内山賢次氏他による翻訳がいくつかあるが、機会があればぼくも全文を翻訳してみたいと考えている)。わたしたちが身を置いている「日本というシステム」を見直すときにも参考になるだろう。優れている文明が、核開発をしたり、ミサイルを飛ばしたり、スペースシャトルを打ち上げたり、四輪駆動のSUVをもったり、自動小銃や地雷をもったり、60インチのプラズマテレビを所有したり、iPodやプチ整形を楽しんだりするものとは少し違うのではないかと考えてくれれば、この記事を掲載したかいがあるというもの。わたしたちがどのくらいネイティブ・ジャパニーズの道から遠く離れているかもよくわかるかもしれない。
註 スコットランド生まれのアーネスト・T・シートン Ernest Thomspon Seton (1860-1946) は動物記の作者として有名だが、実はネイティブ・アメリカンの研究家としても大きな足跡を残している。インディアン・サイン・ランゲージの達人であり、ネイティブ・アメリカンの友人もたくさんいた。彼のことを誰ともなく「チーフ」と呼ぶようになり、彼自身もそう称することもあったが、インディアン・ネームは「ブラック・ウルフ」である。ここに掲載した図版はシートン流に考えて図案化されたメディスンホイール。彼がアメリカ・インディアンの精神世界になにを見ていたのかがきわめてよくわかる。
どちらの文明が優れているのか
- あなた方の文明は、あなたの隣近所の人が同じことをする平等の権利をあなたが侵さない限りにおいて、あなたに行動の完全なる自由を保証してくれるか?
- あなた方の制度(システム)は最大多数のための最大の幸福のために機能しているか?
- あなた方の文明は法廷における正義と市中における寛容によって特徴づけられているか?
- あなた方の文明は苦しみと痛みを取り除くために最大の努力をしているか?
- あなた方の文明はすべての個人に人間であることの権利と力とを与えているか?
- あなた方の制度は完全なる信仰の自由を保障しているか?
- あなた方のコミュニティの誰もが、食べるもの、寝るところ、保護、人間としての尊厳を、あなた方のグループにそうしたものが与えられている限り、全員に保証しているか?
- あなた方の制度は部族の利益を部族が統制することを保証しているか?
- あなた方の制度はすべての人に投票の権利を保障しているが、その一票にどれほどの影響力があるというのか?
- あなた方の制度はそれぞれの人が自ら働いて稼ぎ出しただけのものを保証しているか?
- あなた方の制度は、物質的なるものが信頼にたりず、その価値は移ろいやすいものであり、精神的なるものはことごとく永続し、価値が変わらないものであるという事実を、受け入れているか?
- あなた方の制度は厳格な正義よりも思いやりのほうにより大きな価値をおいているか?
- あなた方の制度はひとりの個人に大きな物質的所有をあきらめさせるようになっているか?
- あなた方の制度は病んでいる人、絶望している人、弱者、年寄り、見知らぬ者を養っているか?
- あなた方の制度は「家族」と呼ばれる自然なひとつのまとまりの完全性を保証しているか?
- あなた方の制度は、人間の最も主要な任務は人間らしさを獲得することで、これは人間であることにともなうあらゆる部位と力との完全かつ調和のとれた発達を意味していて、ひとりの人として自らを自らの一族の人々のために役立たせることにささげることを意味するのだという基本的な考え方を認識し、それを助長しているか?
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