ネイティブ・ジャパニーズのカヌー
「水中考古学/船舶・海事史研究」という「地上の重力に魂を束縛された人間の心を解放し、水中遺跡の関心を高めていくこと」を使命としたサイトで知ったのだが、この7月18日に中日新聞が写真入りで「縄文の夢へ進水」という記事を写真入りで掲載している。「古代工法で丸木舟を完成させた」ということを伝える内容だ。記事の冒頭を引用する。
富山県小矢部市の市民グループ「桜町石斧(せきふ)の会」(山本護会長)が、古代の工法に沿って造った丸木舟が完成。「海の日」の十七日、同市クロスランドおやべの通称オアシスの海と呼ぶ池で進水式をし、四千年の時を超えた“縄文の丸木舟”の航海の無事を祈った。 (砺波通信局・鷹島荘一郎)四人乗りで全長六・七メートル、最大幅七十五センチ。ボランティアを含む延べ約二百人が五月から携わった。航海は八月四日から三日間。小矢部川から富山湾に出て、浜黒崎(富山市)と宮崎浜(富山県朝日町)の二カ所で野営の後、ヒスイの産地・姫川(新潟県糸魚川市)まで約百十キロの“潮の道”をたどる。
このブログでかねてから何度か主張してきたが、そろそろ「縄文の丸木舟」という記述も改めるべきではないだろうか。ここはきちんと「日本列島先住民の航海カヌー」もしくは「ネイティブ・ジャパニーズのカヌー」というふうに書くべきではないのか。あるいはもっと素敵な表現があるかもしれない。それに「縄文人のイメージ」として、安直に毛皮の貫頭衣のようなものを着せるステレオタイプも、なんとかすべきではないのか。
北米西海岸沿岸地域や東部森林地帯に暮らすネイティブの人たちに話を聞くと、カヌーはわたしたちにとっての「自動車」に匹敵するぐらいのきわめて重要で効率のよい(そして公害とは無縁の)理想的な移動交通運輸の手段だったことがわかる。
日本語ウィキペディアによれば「カヌー」という名称は、「丸木舟をはじめ、木などの骨格に獣皮や樹皮を張ったスキンボート、さらには外洋航海に使われた大型ボートに至るまで、手持ちのパドル(櫂)によって操作する船の総称」だそうだ。
北米大陸の東部森林地帯で長く暮らしていたチェロキーの人たちは、典型的な森と川の人たちで、移動手段にカヌーは欠かせなかったし、非常に早い時期から子どもたちにカヌーの操り方を教えた。カヌーの操りかたや、その他の生きるための知恵は、祖父母から孫へと伝えられるのが普通だった。
彼らによればカヌーを操る人間の心得として最も大切なことは「いついかなるときにも川を敬う」ということだという。「川は、それを敬う人間の精神を強くし、はかりしれぬ喜びを与えてくれる。だがひとたび愚かな振る舞いにはしり、敬う心を忘れると、川は一変していのちを奪うものにもなる」のだと。
ネイティブ・ジャパニーズのカヌーの復元は、素晴らしいことだ。そのカヌーを操って川から海に出て潮の道を辿ることも、きっとヴィジョンを与えてくれる経験になるにちがいない。この復元された「縄文の丸木舟」が、川や海を敬う心を取り戻すための道具になることを祈りたい。
良い航海を!
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Comments
このカヌーで海に出ていくのは、大変でしょうね。
無事成功されることを、祈ります。
Posted by: 南風椎 | Thursday, July 27, 2006 05:33 PM