ジェロニモの骨を墓から盗んだのは爺ブッシュたち!?
アメリカのイェール大学の歴史家が「イェール大のスカル・アンド・ボーンズという秘密結社がアメリカ・インディアンの指導者ジェロニモの頭蓋骨を盗み出したという噂がかねてより一部でささやかれていたが、このほどそれを裏づける1918年の手紙を暴露した」とイェール大学校友会機関誌(2006年5月/6月号)の記事「誰の頭蓋骨と骨? Whose Skull and Bones?」のなかで話している。
イェール大学のスカル・アンド・ボーンズ結社の伝説ではジョージ・W・ブッシュ現アメリカ合衆国大統領の祖父であるプレスコツト・ブッシュ(爺ブッシュ)が同結社のメンバーだったとき、第一次世界大戦にイェール大も学徒出陣して、結社のメンバーの一部が、1909年に亡くなったジェロニモの墓があった駐屯地(「シル砦」と呼ばれる陸軍基地)に駐留した際、この愚行におよんだというもの。ジェロニモの墓は、部外者には秘密にされていた。
「悪名高きジェロニモの頭蓋骨をシル砦にあった墓より掘り出したのはあなたがたのクラブ」と最近発見された手紙の中で、当時スカル・アンド・ボーンズの一員だったウインター・ミードという人間が告白しているのだ。しかし実際にはミード氏はシル砦にいた人間ではないことから、歴史学的にいうならそれがほんとうにジェロニモの頭蓋骨だったかどうかはなお疑問が残されてはいる。
今回この手紙を発見して公開した歴史学者のマーク・ウォートマンも、当時連中が「誰かの骨」をそこから掘り出したことは間違いなさそうだが、それがあの高名なインディアンの指導者のものだったかどうかは定かではないと微妙な物言いでこう書く。
「その連中がシル砦にある墓のなかから頭蓋骨や骨やその他のものをとりだしたことは間違いなさそうですけれど、それが歴史学的に実際にジェロニモのものであると証明することはできないでしょうね。しかし掘り出した連中はそれがジェロニモのものであると信じていました」
かねてから訴訟を検討してきたジェロニモの曾孫であるハーリン・ジェロニモは、手紙の発見を機にシル砦を運営しているアメリカ陸軍をいよいよ訴える腹づもりらしい。ニューメキシコのメスカレロという町に暮らすこのジェロニモの子孫は「残されている遺骨の返還を求めたい。ほんとうに骨が消えているかどうかも知りたい。そしてもしほんとうなら責任の所在をはっきりさせなくてはならない」とCBSニュースの取材にたいして語っている。
ジェロニモはアリゾナの南西部からニューメキシコをテリトリーとしていたアパッチのチリカウア・グループの指導者で、1870年代から1880年代にかけて自分たちの一族と祖先伝来の土地を守るために、彼らを居留地に強制収容しようとした対合衆国陸軍とのゲリラ戦を指導した。1886年にジェロニモと彼にしたがうものたち(Native Heart, Thursday, April 20, 2006 の記事でお伝えしたウーマン・ウォリアーでメディスンウーマンのローゼンもそのひとり)は最終的に降伏し、戦争捕虜としてフロリダに移送された。その後、彼は身柄をアラバマに移され、シル砦に監禁されたまま、キリスト教に転向を余儀なくされ、二度と故郷の沙漠に帰ることなく、農業者として生涯を終えている。
火のないところに煙は立たないとはいわれているけれどさ、それにしてもブッシュ・ファミリーって・・・。
追記 12日のニュー・ウエスト・ネットワークが「ジェロニモの子孫がブッシュにたいして戦士の遺骨の返還を求める」という記事を掲載しました。
それによると偉大な指導者の曾孫であり自らもメディスンマンであるハーリン・ジェロニモはまずイェール大学にたいしてDNAのサンプルの提供を求めるらしい。かねてから政府にたいしてジェロニモの遺骨を彼のふるさとであるニューメキシコの生地ヒラ・ウィルダネスに戻すように要求してきたメスカレロ・アパッチ部族会議も、とうぜんながらこのスカル・アンド・ボーンズの過去の行状にたいする報道(全国ネットのテレビで流されたという)に息巻いているようです。
このニュースが流された翌日には、ハーリン・ジェロニモの家にはジェロニモの墓について関心のある人たちから150件もの電話がかかってきたけれど、今のところ正式に現アメリカ大統領の家族に今回の事件の調査に協力を求めるような要請を彼はしていなくて、とりあえずは全米のネイティブ・アメリカンのメディスンマンを招集して、共に祈りをあげ、どのような方策を立てるのが最もよいかを協議するらしいと記事は伝えている。ハーリン・ジェロニモも、奥さんのクラウディーヌも、共にメディスン・ピープルであるという。
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