誰がこの狂気を止めるのか
アメリカ国防総省が6月2日に「神の輪鉄(デバイン・ストレーキ ''Divine Strake'')作戦」と名づけられた700トンの高性能炸薬を破裂させる大型爆弾爆発実験(戸外の非核爆発としてはこれまでで最大)をラスベガスの北西90マイルのネバダ核実験場で行う予定でいることに、本来その核実験場をふくむネバダ州のほとんどを先祖伝来の故国としているウエスタン・ショショーニの人たちが当然ながら反発し、あらゆる手をつかって実験の停止を求めている。
この「神の輪鉄(わがね)」と名づけられた実験は、「高性能炸薬を炸裂した際の衝撃波で地下施設を破壊する」もので、「大量破壊の核兵器あるいはその他の兵器を貯蔵する堅固な岩盤を貫通破壊できる兵器」を完成させる目的の実験であり、核爆発みたいなキノコ雲が生成されることがあらかじめ予測されていて、これによってかつての核実験によって放射能汚染された土ぼこりが大量に周辺環境に放出されるだろうといわれているため、風下地域に暮らすユタの住民たちやウエスタン・ショショーニの人たちを直撃することになる。ネバダ核実験場では1951年から1993年までのあいだに地上核爆発が100回、地下核爆発が828回おこなわれ、そこは旧ソビエト連邦のセミパラチンスク核実験場跡とならんでこの地球上で最も核汚染された大地となっている。
ネバダ州ウィネムッカのインディアン居住地の長であるトーマス・ワッソンは、「神の輪鉄」計画は止めなくてはならないと「インディアン・カントリー・トゥデイ」紙(4月27日号)に語っている。
「ウエスタン・ショショーニがもともと何千年も暮らしてきた土地の家を追われ強制移住させられたとき、われわれの一族はそこに核実験場が作られるなどと言うことはいっさい聞かされなかったのです。われわれの大地を破壊しつくし、放射能によって無数の人たちを死に追いやり、被爆という苦痛を味あわせてきたにもかかわらず、合衆国政府は今また同じことを繰り返そうとしています。今回の実験は、なんとしてもやめさせなくてはなりません。これはウエスタン・ショショーニの人たちのためだけでなく、すべての人びとのためなのです」
ウエスタン・ショショーニ・ディフェンス・プロジェクト、国際インディアン条約協議会、先住民環境ネットワーク、シュンダハイ・ネットワークなどいくつかのグループが5月28日の日曜日に、ネバダ核実験場の入口近くのハイウェイ95に面して設けられたネバダ核実験場ピース・キャンプにおいて、非暴力国際抗議行動をおこなう予定だ。
- The Western Shoshone Defense Project
- International Indian Treaty Council
- Indigenous Environmental Network
- Shundahai Network
- Nevada Desert Experience
ネバダ核実験場公式サイト(日本語による解説もある)
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Comments
一昨日、5月6日の地元のテレビ( KRNV 4)の夕方の報道に、ネイティブ・アメリカン側の代理人が登場して、作戦が延期になったと伝えらたというメールが届いたが、まだ公式の発表もなにもなく、確認がとれていないのが現状だと、シュンダハイ・ネットワークが伝えている。
元記事は http://www.krnv.com/global/story.asp?s=4867094&ClientType=Printable
Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Monday, May 08, 2006 04:06 PM
5月7日の地元テレビ局(KVBC)は「神の輪鉄(わがね)」作戦の予定日について混乱があると報じた。ネイティブ・アメリカン側の法定代理人は6月23日に延期されたと話しているが、国防総省側の人間は予定どおり6月2日に実験はおこなわれるといっているらしい。いずれにしても、実験は強行されるようだ。
元記事
http://www.kvbc.com/global/story.asp?s=4868712&ClientType=Printable
Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Tuesday, May 09, 2006 10:25 AM
http://www2.kbcitv.com/x71995.xml
アメリカのCBSテレビが鉄の輪鉄(わがね)の実験は9月以前にはおこなわれないだろうと報道した。夏の雷による不測の事態を考慮してではないかと言われている。9月以降の予定については未定。
Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Saturday, June 17, 2006 05:43 PM
■神の輪鉄作戦計画が来年に延期■
沙漠の真夏の雷による700トンもの火薬の誘発を避けるという理由から、この9月まで予定が延期されていた「デバイン・ストレーキ(神の輪鉄/わがね)」と命名されたネバダ核実験場における——とてつもなく大きなキノコ雲が発生する——大規模な非・核爆発実験は、8月1日に政府関係者が語ったところによると、少なくとも来年まで延期されることになるらしい。AP電が伝えていた。
http://www.azcentral.com/news/articles/0801wst-mushroomcloud01-ON.html
Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Wednesday, August 02, 2006 06:24 PM
来年に延期するだけでなく、場実験する場所をかえるというような話も出ているようだ。
Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Thursday, August 03, 2006 03:10 PM