自分の内にある空間と時間の地図
昨日「時の輪歴史講座とはなにだったのか?」(Native Heart, Friday, March 03, 2006)のアーティクルのなかで、自分の内側にある空間と時間の地図の話をした。この目には見えない地図が、自分たちの起源と、自分たちが今存在している空間の景観と深くつながっていることは間違いない。この地図は、大なり小なりすべての人のマインドのなかに焼きつけられているはずのものなのだ。それがネイティブの人たちのものほど鮮明であるか否かは別にして。
試しに、時間がゆっくりととれるときなどに次の実験をしてみてほしい。
まず、目を閉じて、自分が子供だったときに使っていた自分の部屋のことを思い出してみる。その想像の世界のなかをあちこち探検してみるのだ。自分の部屋から出て、家の中を歩き回ったり、さらに家から外に出て、家の周囲を歩いたりしてみる。その家はもう存在しないかもしれないが、あなたの頭のなかにははっきりと残っているはずである。しばらくそうやって自分の頭のなかで、自分が子供だった時代の家とその周囲を歩き回ってみたら、つぎに思い切ってその家から外に出て行ってみる。たとえば自分が通っていた小学校まで歩いていく。近くの親戚の家や、なかのよい友だちの家にまで行ってみるのもいい。家を離れ、別の場所に向かいながら、曲がり角にあった建物のこと、通りのこと、抜け道のこと、よく犬に吠えられる場所のこと、いつも触って通り過ぎた神社の大木のこと、学校の前の文房具屋や駄菓子屋、横町の豆腐屋や、帰り道でコロッケを買って食べた肉屋の店先のことなど、できる限り細かく思い出してみる。
この実験をのんびりと数時間かけてやってみると、自分が子供の頃にその中にいた生活空間が自分の体や頭のなかで今なおいきいきと息づいていることがわかってきっとびっくりするだろう。そうやって想像の空間のなかを歩きながら、自分の周りに漂ってくる匂いや手触りや足の裏の感触、子供だった自分の低い視点から見えていた世界を観察していく。誰にとってもこれはとても素敵なトリップになるはずだ。
さて、トリップを終えたら、そうやって子供の頃に見えた世界が、自分の親の時代、親の親の時代、なんせだいもさかのぼった遠い御先祖さまの時代にもなにひとつ変わらないままそこに存在し続けているもうひとつの世界のことを想像していただきたい。自分の内側のなかにある景観地図と外側の実際の景観が一致しているその世界のなかで調和して長く暮らしてきた人たちのことを。そこはその景観にたいしてあなたがすることはすべて自分に返ってくることが手に取るようにわかる世界なのだ。自分の内側にあるものと外側にあるものが境界なくどこまでも続いていく世界を想像してほしい。見えているものがそのまま一族の歴史であり、すべてが一族のものであった世界を。地球に今もなお生き残っている先住民とされる人たちの世界の見え方は、おそらくそういうものなのだと思われる。
われわれが子供の頃に感じていた景観とのつながりは、今ではもう薄れて過去のものになりつつあるかもしれないが、彼らの自分たちをとりまいている世界とのつながりは、そこにスピリットの存在を媒介にしているために、とてつもなく密度の濃いものになっているのだ。もう一度日本列島のネイティブとしてこの母なる島々の上に立つためには、われわれは自分のなかにもうひとつの日本列島の空間地図を描き出し、自分たちがなぜ今ここにいるのかを教えてくれる時間地図(もうひとつの年表)を重ね合わせて、意識的にスピリットたちの息づく日本列島に暮らしている自分を眺めなおす学習を推し進める必要があるのだろう。
願わくばわれわれが再びそこで出会えんことを。
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Comments
最近実家の近くを車で通りながら、そんなことを考えていました。たとえ風景が変わったとしても僕の心の中にある空間記憶みたいなものが蘇ってきて、とても幸せな気分になりました。
駄菓子屋のおばちゃん、自転車屋のおじいちゃん・・・今はもうそこには存在しませんが、たしかにそこにはありました。
そんなことを思い描いているとふしぎとやさしい気持ちになるものですね。 ありがとうございます。
Posted by: 久田 耕次郎 | Saturday, March 04, 2006 at 07:42 PM