« イン・ザ・スピリット・オブ・クレイジー・ホース | Main | お客様は神さまではないとする研究 »

Monday, March 20, 2006

アパッチの父さんが怒っている

intothewestsあのスティーブン・スピルバーグがドリーム・ワークスと製作しているテレビ西部劇のプロデューサーたちがアパッチの夫婦に訴えられたという記事が「Guardian Unlimited(Monday March 20, 2006)」に掲載された。記者はガーディアン紙の記者のジュリアン・ボーガーという女性だ。

記事によると、ニューメキシコの撮影現場でスタイリストが部族の習慣を無視して自分たちの8歳になる娘の髪を切り落としたことが原因らしい。スピルバーグ総指揮で「西部へ( INTO THE WEST)——アメリカンドリームの中心への旅」というミニシリーズが製作されていて、たまたま男の子のエキストラがたりなかったために、少女を男の子らしく見せるためにスタッフが髪の毛を切り落としてしまったようだ。訴状ではこの行為を「意図的で、言語道断の、そして無謀な行為」と呼び、両親はかなり腹を立てている様子がありあり。この番組を放映中のターナー・フィルムスは訴訟についての言明を避けているとある。

記事を読むとどうも、これはメスカレロ・アパッチの人たちの生活習慣と密接に関連しているらしい。ニューメキシコ州南部で暮らすメスカレロ・アパッチは、女の子が成人式の儀式を行う日までは髪の毛を切ることを禁じてきたのだ。訴状では関係者のなかにあらかじめ少女の髪の毛を切る許可を求めてきた人間は一人もいなかったという。父親のダニー・ポンスさんは「せっかく背中の中程まで伸びていた髪の毛が、肩のうえのところでばっさり切られてしまった」と怒りをあらわにする。

「これではまるで男の子だ」ポンスさんは地元の新聞に語っている。「娘だというのに。連中は髪の毛を切り落として、娘の気持ちを傷つけ、怖がらせて、はずかしめたのです。まるで児童虐待ではないですか。わたしたちが誤解されてしまいます」

テレビドラマの『 INTO THE WEST』は19世紀のアメリカのフロンティアを、白人の移住者の家族とネイティブ・アメリカンの家族の両方の視点から見直そうとした人気ドラマ。スピルバーグは製作総指揮とクレジットされているものの、訴えられたのはスピルバーグ本人ではなく、番組のプロデューサーと制作しているターナー・フィルムで、両親は精神的苦痛で250000ドル、肉体的損傷で75000ドルを求めている。

とまあここで終わればアメリカではよくある普通の記事ではあるのだが、この記事を書いたジュリアン・ボーガー記者は、なにを思ったか文末で、唐突にメスカレロ・アパッチに残されたある予言に言及しているのだ。それは、およそ一世紀程前のもので、「目の青い白人だけがニューメキシコの山のなかに暮らすようになるだろう。そして残されたインディアンはわずかに数えるほどになり、いずれそのものたちも白人になってしまう」という予言であったらしい。そしてそのときが来たときには、この世界は終わってしまうというのだ。少女の髪の毛が切られたことと世界の終わりは、きっとどこかでつながっているのかもしれない。

|

« イン・ザ・スピリット・オブ・クレイジー・ホース | Main | お客様は神さまではないとする研究 »

Native News Update」カテゴリの記事

Comments

こんにちは。
今回の記事での、ネイティブへの侮辱も憤慨しますが、アメリカ映画での(映画だけでないけれど)ネイティブの言葉の僭称は何とかならないものですかね。軍事用ヘリコプターに「アパッチ」だの、大陸間ミサイルに「トマホーク」だの。平原インディアンに詳しくない日本人は「サンダー・バード」といえばSF人形ドラマを思い浮かべるのではないでしょうか。
侵略者が先住民の言葉を盗むのは文化的侵略上必要で、この弓の島でもさんざん行われてきたことです。ことばを汚されたり壊されることは、大地とともに生きている伝統からひとを切り離す大きな力ですから。逆に言えば、一族に伝わることばをしっかりとつかえることは、伝統を生きるためのつよい絆です。70年代に日本での言葉の乱れようを聞いたアメリカ黒人の若者が、「彼ら(日本の若者)はわかっちゃいないんだ、自分たちの言葉をもっているという事がどんなことなのか!」と言ったことを思い出します。

映画製作陣がアパッチから訴えられたという記事を目にして、まず以上のことを思い出し、どうにも云いとどめられなくて少々内容ハズレながら書いてしまいました。

ネイティブにとって髪の毛というのは、自分のいままでの時を象徴するものであり、また宇宙とのつながりを助けるものだと思います。インディアンに憧れることをきっかけにもう何年も散髪していないおれですが、相手により状況により、長髪であることを疎ましく思われるのを感じることもあります。些細なことですがそんなとき、ネイティブと文明人のギャップを思います。目の前にいる人が、どんなこころや生きかたの上でその容姿をしているのかを理解しようとするよりも、既成の型に従っているかどうかの方が大事な人々。

『 INTO THE WEST』がほんとうにインディアンからの視点も大切にしているならば今回のような事件は起こらなかったのかもしれないし、また起ってしまったからには女の子の両親の言い分をきちんと聞くのでしょう。

Posted by: 山竒 | Tuesday, March 21, 2006 at 12:54 PM

この四枚組のDVD、私も購入しました。
(色々な意味で)異文化の人々と一緒にお仕事するということ
はとても大変なことなんだなあと実感。
Making of~も見ました。かなり細かくリサーチしてあると
思いましたがやはり落とし穴がありましたか・・・・
それにしても髪の毛って洋の東西を問わず神聖な
ものなんですね。

Posted by: 螢月 | Sunday, March 26, 2006 at 12:32 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/25341/9176004

Listed below are links to weblogs that reference アパッチの父さんが怒っている:

« イン・ザ・スピリット・オブ・クレイジー・ホース | Main | お客様は神さまではないとする研究 »