大地と空気と水をまもるショショーニの人たちのアメリカとの戦争
対外的に戦時状態にあるアメリカで、国内においても「核と聖なるものを巡る戦争」が続いていることを知る人は少ない。この戦争は、ウエスタン・ショショーニ国とその国土を事実上乗っ取っているアメリカ合衆国との間で戦われているものである。
ショショーニの人たちの土地には、世界中の誰もが知っている「ネバダ地下核実験場」があり、1951年から91年にかけて1000回もの核爆発実験が繰り返され続けている。つい先日も臨界前核実験がおこなわれたばかりだ。
ショショーニの人たちの国土防衛のためのアメリカとの戦争は合衆国が政府がメキシコから南西部を奪った1848年にはじまり、第二次世界大戦後の一時期大きな高まりを見せたものの、2年前の夏にブッシュ大統領が「ウエスタン・ショショーニ配分法」に署名し発効したときに終結したとアメリカ側はかってに思いこんだ。
ショショーニの人たちの土地はいまだかつて一度も合衆国政府に金銭で売り渡されたことはなく、19世紀の役人たちには無価値と見なされていたがために、法的には彼らが「美しき大地(ニュウイ・ソゴビア)」と呼ぶ国土(右地図)はウエスタン・ショショーニの所有地のまま維持され続けているのだが、20世紀になって核の時代になると合衆国政府はその土地を購入したこととして、姑息にもかってに資金を預託してきた。土地代金総額は2600万ドルであり、エーカー[約4047平方メートル]あたりでは15セントに相当し、1870年代当時の水準でも大安売りではないか。(利子を加算すれば、支払うべき総額は現在では1億4500万ドルになるという)もちろんショショーニの人たちの大多数は土地を売る契約をした覚えなどないと突っぱね、ブッシュとその仲間たちが握らせようとした金(ひとりあたり3万ドル)の受け取りを拒否したのだが、ご多分に漏れずなかには受け取る人たちも現れて、支払いは強行されたのだった。
しかし金でむりやり片を付けようとした戦争は、政府とその役人たちの思惑どおりには運ばなかった。多国籍企業がウエスタン・ショショーニの人たちが聖なる山とするユッカ・マウンテンに世界最大の核廃棄物処分場をつくろうとする大きな動きを前にして、ウエスタン・ショショーニの人たちは、自分たちの聖なるものをまもるために、再び立ちあがり、その戦いの場を、国連の場に持ち込んだのである。
そしてこの3月10日、スイスのジュネーブの国連人種差別撤廃委員会でアメリカ合衆国にたいして歴史的かつ重要な勧告決議がなされたのだ。それは合衆国が即時にウエスタン・ショショーニ国のショショーニの人たちにたいしておこなっている人権侵害の活動や脅迫などを「凍結」もしくは「停止」することを求める強い調子のものだった。この決定において国連人種差別撤廃委員会はショショーニの人たちが置かれている「自然と緊急」という状況を強調し、通常よりかなり激しく合衆国が委員会の決定に即時に耳を貸すことを求める通告を出している。ショショーニの人たちにとってはひとつの大きな勝利だが、ブッシュとその政権仲間たちの出方次第では、さらなる戦いのはじまりになるだろう。
911にはじまる中近東におけるアメリカの戦争は、もしかしたらアメリカ国内で起こっている最後のインディアン戦争にたいして世界中のマスコミが目を向けないように誘導するために仕組まれたものなのかもしれない。
ショショーニ国の国連代表団のコメントのひとつ:
「自らの祖国を守り、米国政府と多国籍企業の濫用によるわれわれの土地、水、空気の破壊を止めるための権利が、われわれにはあります。状況はのっぴきならぬものであり、われわれは今回の国連委員会の同意をよろこびます。わが一族は世界の他のどこよりも核実験を多く被り苦しんできました。彼らはわれわれのたび重なる抗議にもかかわらず、今なお地下実験を続けています。ユッカ・マウンテンは、核廃棄物を貯蔵するために、そのなかを掘り抜かれています。これはわれわれの我慢の限界を超えています。その大地は、その空は、その水は、神聖なものなのです。あらゆる人種の人たちは、すべてのいのちあるものの安全な将来を確保するために、この狂気を止めなければなりません」ジョー・ケネディ、ウエスタン・ショショーニ
国連人種差別撤廃委員会による勧告文の全文と、この決定を受けてのウエスタン・ショショーニ国「西ショショーニ・ディフェンス・プロジェクト」による緊急声明はここに(英語)あります。なおウェスターン・ショショーニの人たちは現在およそ10000人が暮らしている。
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Comments
ジョー・ケネディ代表のことばが胸を打ちます。
ローリング・サンダーの云うように「戦争はまだ終わっていないのだ」。
ネイティブ(先住民・原住民・土人)という概念が生まれたときから地球上には一つの戦いが行われてきた。大地を守る(大地のいちぶとして生きる)ひとびとと大地を奪う人々との間に。
戦いは、亀の島にも弓の島にも海を越えて大陸から来た。
大地のひとびとに地球という中心があるように、奪う側にもセンターがあるのだろうか?
戦争の様相は時代によってさまざまであるかのようだが、その根本はひとりびとりの生きかたであると思う。大地の一部として生きるということは、戦争を終わらせるためにもっとも必要なことなのだ。
遠い地で行われている戦いを知り、そのためにおれになにが出来るか簡単ではないが、知ったことを忘れず生きていくこと、というなかで時をかけて自分のちからを練っている。
Posted by: 山竒 | Tuesday, March 14, 2006 10:25 AM