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Monday, March 27, 2006

聖なる山には特別な時間が必要なのだ

beautifulmahtopahaサウスダコタ州のブラックヒルズの山々の東の草原の静寂のなかにベアー・ビュートというけっこう険しい山がそそり立っている。ブラックヒルズ国立公園のなかに位置し、古代からシャイアンなど平原インディアンの人たちの聖地としてあがめられてきたこの山は、あきらかに誰が見ても特別な力の山である。おそらくそこはとてつもなく神聖な山であり、中東のシナイ山にも匹敵するとされる。

この瞑想とヴィジョン・クエストのための土地であるベアー・ビュートの山麓にスタージスという町があって、この町は知る人ぞ知るハーレイのメッカとされる町であり、毎年8月になると全米から50万人ほどのバイカーがさながら巡礼のごとく轟音を響かせて押し寄せては、浴びるほど酒を飲みまくり、マッチョを競い合い、胸をあらわにした女の子たちが叫声を上げるらんちき騒ぎを繰り返してきた。

そしてこのたび、その狂乱を求めて押し寄せるバイカーたちを一年中呼び寄せようと、このスタージスの町のはずれに、バイカーたちのための巨大な酒場と、広大な駐輪場が完備された収容人数がなんと3万人というとてつもなく巨大な野外ロックコンサート劇場が作られることになったことで、この山を聖地としてあがめてきたネイティブの人たちからいっせいに抗議の声があがりはじめていると、ロサンジェルスタイムズ紙が3月26日付の記事「ビールと女とバイク、そしてグレイト・スピリットBeer, broads, bikers -- and the Great Spirit)」で伝えた。この劇場に酒の提供を認める許可を与えるか否かの公聴会が近日中に予定され、数多くのインディアンたちが出席すると見られるという。

この記事を書いたピーター・ナボコフはUCLAでネイテイブ・アメリカンの信仰を研究する先生でアメリカ・インディアンの聖地について研究し、『稲妻が撃つところ——アメリカン・インディアンの聖地の命(右)」という優れた著書もある。

ベアー・ビュートは火山が噴火する寸前で停止したままになっている山で、内部には地球のエネルギーがたまりにたまっている。現在その近くで生存しているラコタの人たちにとっても、ほかの平原インディァンのすべての部族の人たちにとって、それはとても特別な聖なる山である。ラコタにとっては最も神聖な山で、山そのものが大きな祭壇として考えられているし、シャイアンの神話の中心にある山でもある。ノースダコタのマンダン一族は巡礼としてこの山を訪れるのを習慣にしていたし、今では知らない人のいないあのラコタの戦士クレイジー・ホースが1857年にヴイジョンを求めた土地でもある。ブラックヒルズで金が見つかって、目の色をかえた白人の兵隊や山師たちが雪崩を打って入り込んできたとき、ラコタの人たちが抵抗の拠点としてたてこもったのもこの山だった。

1961年にはサウスダコタ州立公園に指定され,12年後には国定史跡にもなったが、そうしたことがアメリカ・インディアンのベアー・ビュートの使い方に大きな変化をもたらすことはなかった。1982年には州立公園にキャンプ場が設けられ、ハイキング用のトレイルや一部の道の舗装がおこなわれて、インディアン以外の観光客を引きつけるようにもなったがその場合にもアメリカン・インディアンが伝統的なヴィジョン・クエストをおこなう際には入園が制限された。今回78年のアメリカインディアンの宗教の自由法をたてに、アメリカン・インディアンの儀式および聖地の保全を理由として挙げて、スーとシャイアンは開発を遅らせるために共同で訴えたものの、地方裁判所は彼らの訴えを拒絶。

スピリチュアルなものの存続の源としてのその持続的な役割もさることながら、それ以上に、社会的、宗教的、政治的に平原インディアンにとってのベア・ビュートの重要性は、はかりしれない。貧困、アルコール中毒、社会的機能障害および居留地システムという内なる植民地主義からの出口を求めて戦ってきたアメリカン・インディアンたちは、過去をけして忘れないためにそこを訪れてきたのだ。今造られようとしている娯楽複合施設がもたらすであろうけたたましい騒音や、これ見よがしな自己顕示欲、アルコールによって加速された軽薄さが、アメリカ・インディアンにとっての最後の聖域とでも呼べるベア・ビュートの神秘さを破壊してしまうことは想像に難くない。

LAタイムズ紙の記事によれば、先年亡くなったアメリカ・インディアンを代表する知識人のひとりだったヴァイン・デロリアJrはよく,ベア・ビュートのような場所には「独自の時間が必要」とする意見を述べていたという。その独自の時間のなかで、スピリチュアルなものを求めてくる人たちに力が授けられるのだろう。現代アメリカ人は、ベア・ビュートがこの国の壊れやすい宝であることを認識する必要がある。この娯楽施設に酒類販売許可証を与えないことは「いわゆる聖地といわれるところを保護し、目に見えている以上のものが紫色にそびえたつ山々の威厳にはあることを現代人に思い出させるための、最初でそして最後の機会になるだろう」と記事は結んでいる。

聖なる山をゴミの山にしてしまったわたしたちにも、これは耳の痛いニュースなのだろうか?

参照 EARTHLODGE 船木さんのベアー・ビュート紀行(パノラマ写真あり)

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Comments

スタージスでこのような計画が進行していることを知り驚いていますが、同時にサウスダコタという御土地柄ならありうる事だとも思っています。

正に精神文化と物質文化の対極を象徴するような出来事ですね。アメリカの良識なるものを見せて頂きたいと思います。

Posted by: 船木 | Tuesday, March 28, 2006 at 09:38 PM

5月2日現在の状況でも、この聖地をまもるための闘争は続いているようです。新しく拡張される酒場のオーナーに酒類の提供を認める許可を与えるか否かの件で、これまで数回公聴会が開かれてそれぞれ紛糾したようです。地元テレビ局の一番最近の報道

Battle Over Bear Butte Continues 05/02/2006
http://www.keloland.com/NewsDetail2817.cfm?Id=0,47792

には「われわれはあなたがたにわれわれのウェイ・オブ・ライフをもっと敬えと求めているのだ」という反対派のネイティブの声が紹介されていました。地元への利益還元をちらつかせる酒場側と、ネイティブたちのやりとりは、公聴会では決着がつかず、支持者を巻き込んで近く住民投票にもつれ込む気配です。

Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Friday, May 05, 2006 at 12:14 PM

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