冬の北斗七星と夏の北斗七星
テンという動物がいます。知ってますか? 日本列島にもいるのですよ。イタチに似ているのですが、イタチよりも大きいのです。乱獲がたたって、残念ながら今では動物園以外では滅多に出会うことはなくなっていますけれど。
このテン、地球の北半球に暮らすネイティブの人たちは、テンのことをたいてい「偉大な狩人」として認識しています。オジブエと呼ばれることもある亀の島のアニシナベの人たちも、この自然の狩人のことを長く尊敬の目で見つめてきました。こんな物語が彼らに語り継がれています。
昔、それはおそらくまだ人間がこの星にやってくる以前の話です。ある日、あまりの寒さにテンが震えながら仲間のカワウソとオオヤマネコとクズリの3人に向かって「この星がいちばん空の国に近いところに行ってみようじゃないか」と話しかけました。「空の国はいつでもぽかぽかと暖かいのだから、そこからなら暖かさを寒い地球まで持ち帰れるはずさ」
「ぼくらはここが高く飛びあがり、空の割れ目から向こう側の国に入らなければならない」
まずカワウソがジャンプしました。ところが頭を空にいやというほどぶつけて山の頂に落ちてきました。オオヤマネコが続いて飛びあがりました。オオヤマネコも頭を空にぶつけて意識を失って落ちてきました。クズリは石頭でしたから、何度も何度も飛びあがっては空に体当たりを試み、何度か試すうちにようやく空に小さな裂け目ができました。テンは割れ目ができたのを見るとクズリに続いてジャンプをしてかろうじてその裂け目をくぐり抜けて空の国に入り込みました。
そこはたとえようもなく美しいところでした。しかもぽかぽかと暖かいのです。空の国から無数の鳥たちがその割れ目を通って下の国へ舞い降りました。暖かさが割れ目から地球に流れ込み、大地をおおっていた雪を溶かしました。
ところが暖かさが漏れだしていることに気づいたスカイ・ピープルが大きな声を出しました。
「泥棒だぞー!」
クズリはなんとか割れ目から逃げだすことができましたが、なんとかその割れ目を押し広げようとしていたテンは、スカイ・ピープルの射た矢にうたれて死んでしまいました。
テンはわたしたちが「北斗七星」として知っている星座になりました。今でも毎年秋になると、空のテンは地球に向かって落ちてくるような姿を見せます。スカイ・ピープルがなんとか割れ目を閉じようとするから、冬が訪れるのです。そして夏になると、空のテンは再び空にのぼる姿となり、空の割れ目を開いてくれて、暖かさが返ってくるというわけなのです。
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