ホピ・ファーミング 地球に生きる人たちの農耕技術考 2
ホピの人たちのトウモロコシ栽培は、2月の畑の準備からはじまる。彼らは地球を母なる大地と、一人の生きている女性と見ているので、農作業に際しては、その母親の肉体をはなはだしく傷つけるような鉄製の農機具などは一切使わない。耕耘機などはもってのほかなのである。
だからまずは畑となるひとつの区画の灌木やよけいな草が、くま手によってきれいにはらわれることになる。くま手はジャニパーと呼ばれる硬質な木の、先が3つに分かれている枝からつくられる。枝の皮をむき、それぞれの枝の長さを整え、その三本の枝に別のまっすぐな枝を渡して根本でしっかりと結わえて丈夫なくま手をつくる。これが、かれらの「伝統的なやり方」なのだという。
トウモロコシの植えつけは、ホピの儀式のカレンダーに基づいて春の大祭が行われる4月におこなわれる。(掲載したのはホピの儀式の暦であり、左回りに見るようになっている。クリックで拡大)
すでに冬至が終わって新しい年のカチーナの季節もはじまっているが、この植えつけに先だって、ホピの人たちの暦では2月に「ポワム(ポワムヤ)」と呼ばれる浄化のための例祭がにぎにぎしく行われる。ポワムとは「聖なる豆の祭り」という意味である。
この儀式のためにホピの人たちはあらかじめ自分たちがこの年に植える豆とトウモロコシを発芽させた苗床を用意しておくことになっている。彼らの暮らす高原沙漠は、太陽の光があふれる沙漠とはいえ冬はマイナスになるぐらい寒く、ときには雪も降り積もる。トウモロコシや豆の苗床は、ホピの人が「キバ」と呼ぶ、地中につくられた聖なる空間のなか、小分けされたいくつもの小さな箱を用いて発芽させられる。
キバは地面の下につくられているし、その中心ではいつだって聖なる火が焚かれているから、キバのなかはほんのりと温かく、トウモロコシや豆たちが目を覚まして発芽するには理想的な環境になっているのである。ひとびとはこのキバでの発芽の状態から、この年のトウモロコシや豆の出来具合を判断するのだ。(つづく)
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