« このスライドショーを体験されたし | Main | なぜ「母なる地球」というのだろう? »

Wednesday, February 22, 2006

ホピ・ファーミング 地球に生きる人たちの農耕技術考 4

hopi_rattleウモロコシ、スカッシュ、豆、メロン、そうした作物の他にホピの人たちが長年にわたって栽培してきた植物で忘れてはならないものに「瓢(ひさご)」がある。いわゆるヒョウタンだ。

これは世界で最も古くから地球に生きる人たちに栽培されていた作物で、アフリカ原産のうり科の夕顔の一種とされる。人間が道具を使う動物であることを証明するように、日本列島でも今から五千年以上もまえに、ネイティブ・ジャパニーズによって栽培されていたことが明らかになっている。

gourdホピの人たちもはるか大昔からこれを栽培し続けてきた。大きさも大小色々自在に作れたし、熟すると皮が固くなるので、なかの果肉をとりだして、さらに乾燥させてさまざまな容器としたり、カップや、スプーン、しゃもじ、ひしゃく、水筒(右写真)、種入れ、薬入れ、いろいろな笛、ガラガラなど、さまざまな目的の道具として活用した。

ホピの人たちは必用とする道具の大きさに合わせてヒョウタンの種をまく土を選んだという。良く肥えた土に播けば大きいヒョウタンが作れるし、やせた土壌では小振りなものが作れた。

またホピの人たちが栽培する主要な作物のひとつとに果物の桃がある。「イート・ア・ピーチ」の「ピーチ」だ。桃はたくさん栽培されているし、他にも果樹は、りんご、アプリコット、洋なし、ブドウ、サクランボなどが作り続けられている。

ホピの人たちはご存知のように「卓上台地」「メサ」と名づけられた、急峻な崖の上の平らな土地に村をつくって生活しているわけで、ごつごつした岩だらけのメサの崖のしたにはアメリカ南西部の沙漠がどこまでも広がっているのだが、果樹の大半はそうした崖下にある砂地か砂丘に植えられている。

現代ではそうした果樹の苗木のほとんどが種苗会社から購入されたものだ。しかし、環境が厳しいだけにどんな作物も収穫は常に不安定だと言っていい。遅霜にやられたり、雹の嵐にうたれたりで全滅してしまうことも珍しいことではない。それでも収穫があるときには、果実は新鮮なうちに口にはいるか、あるいは大量にあまれば天日で干されてドライフルーツとして保存される。彼らは桃の実もなかを開いて太陽光で乾燥させてドライフルーツに加工するのだ。

またわずかでも水を使える畑では、チリ・ペッパーが栽培されることが多い。どんなものであれ栽培される作物は、普通室内の苗床で育てられ、霜のおそれがなくなってから戸外の畑に定植される。

chilliペッパーは夏になると熟しはじめ、熟す先からシーズンをとおして収穫され続ける。そして秋の最初の霜がおりると、畑で残っていたペッパーはひとつのこらずすべてが収穫され、紐にとおされて家のドアの前にずらっとつり下げられることになる。これは収穫の秋のホピの村々の風物詩みたいなものだ。

今ではたくさんの種類のペッパーが各地から導入され、比較的皮の厚めのペッパーが人気をはくしているようだが、収穫されたペッパーは一度なかを開かれて種を全部取り出してから紐にとおされて乾燥されることになっている。

もともと農耕に長けていたホピの人たちのなかには、最近、自分たちの泉の近くに小さいながらも畑を作る人たちが少なからずいて、その人たちはビーツ、にんじん、キュウリ、レタス、トマトといった作物を栽培している。またその絞り汁が甘味料になる稲科の作物の砂糖モロコシ(スイートソルガム)を人びとに提供するために栽培している人もいる。(つづく)

next ホピ・ファーミング 地球に生きる人たちの農耕技術考 5

|

« このスライドショーを体験されたし | Main | なぜ「母なる地球」というのだろう? »

Native Agriculture」カテゴリの記事

Comments

ホピの農耕技術、大変興味深く拝読させていただきました。

以前、ウェザーフォードの本(邦訳あり?)で、米国南西部のインディアンは不毛の土地でとうもろこしを収穫しているというのを読みました。大地にただ種を蒔けば自然に成長するような印象しか受けませんでしたが、ホピは土地に合った道具を開発して、とうもろこし栽培をしてきたということがわかりました。

大変ぶしつけとは存じますが、この記事を書かれるにあたって、参考にされた文献を教えていただけるでしょうか。

Posted by: さいたま | Saturday, February 25, 2006 08:47 AM

参考にしたものはいくつかあります。ひとつは「Hopi Corn: The Mother of Life」というビデオです。80年代に友人がくれました。これはアリゾナの放送局が制作したもので、ホピとトウモロコシの関係をドキュメントしています。そのころわたしはけっこうしばしば北アリゾナにかよっていて、現地で見たり聞いたりしたことも入っています。Museum of Northern Arizonaで集めた資料も参考にしました。そのなかには19世紀末の人類学者Dr J. Walter Fewkesが学会雑誌に発表したホピ(当時の人たちはMOQUIと書いています)についての論文のコピーがあります。

書籍としては以下の2冊。

Snake Dance of the Moquis of Arizona 1884
by John Gregory Bourke

Moqui Pueblo Indians of Arizona and Pueblo Indians of New Mexico
by Thomas Corwin Donaldson, Charles Fletcher Lummis 他 1893

Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Saturday, February 25, 2006 09:48 AM

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference ホピ・ファーミング 地球に生きる人たちの農耕技術考 4:

« このスライドショーを体験されたし | Main | なぜ「母なる地球」というのだろう? »