歴史を繰り返さないときめたナバホ国のあり方と、今のわたしたちの便利すぎる暮らし
過去2年間でウラニウムの値段は3倍に跳ねあがった。ニューメキシコとならんでウラニウム鉱石を豊富に埋蔵していて、採掘にともなう最悪の後遺症を引きずるアリゾナに、またもやウラニウム・ラッシュが押し寄せそうな予感がある。昨年1年間に700の鉱山で試掘が申請され、北アリゾナに広がる高原沙漠の人里離れたところの100カ所に実際に穴があけられた。
専門家によれば今回のウラニウム・フィーバーは1980年代のそれに勝るとも劣らないという。世界的にウラニウムの備蓄が減って価格が高騰してきたのは中国とインドとそして日本の、それぞれの国の原子力産業によるウラニウム需要が急激に高まっているせいであると、アリゾナ・セントラル紙は1月2日の経済面で指摘した。ウラニウムのスポット市場における価格は現在1パウンドで36ドル。ほんの4年前には1パウンドがわずか7ドルだった。
だが今回のウラニウム熱をすべての人たちが歓迎しているかというとけしてそうではない。昨年4月にも当「Native Heart ナバホ・ネーションがウラニウムの採掘を法律で禁止する(Wednesday, April 27, 2005)」でお伝えしたように、ウラニウムの採掘を禁止したナバホ国の議長ジョー・シャーリーJr(Joe Shirley Jr.,)氏は、ウラニウムの採掘がどれだけ危険なものだったかを思い出させるための行動をとるように促している。
ナバホの人たちは1950年代に最初のウラニウム・ラッシュの大波がリザベーションを襲った際に多大の健康被害を被ったのだ。当時鉱山で採掘に従事していた多くのナバホの人たちが若くして命を失っているばかりか、ウラニウムの被爆による遺伝子障害は今の世代にまで残されている。「リザベーションのなかをすこし見て回れば、多くの年寄りたちが身体障碍者となってまともに呼吸すらできないことに気がつくだろう」と語るのはテューバ・シティに暮らすロバート・スチュワート氏だ。彼もまた50年代にウラニウム採掘工として5年間働いている。「われわれの世代はおかげで壊滅的な打撃を受けました」
ナバホの土地でのウラニウムの露天掘りは東西冷戦の熱狂のなか、核爆弾の原料となるほどの質のよいウラニウムが求められたために加速した。つぎに開発にともなって市場が勢いづいたのが80年代後半で、価格は高騰したあげくクラッシュして、結果的に銀行の大型倒産が続くことになりウランの価格が1パウンド10ドルあたりで下げ止まり、以後そのまま低価格にとどまり続けた。
実際20年前にウラニウムの価格がクラッシュして調査試掘が止まる以前から、自然保護論者たちはウラニウム鉱山の開発がグランドキャニオン一帯の水質や道路すらない地域環境に与える影響に危惧していた。そしてナバホ国が自分たちの土地からのウラニウムの試掘や買い取り交渉をすることを禁止する決定を下したことにたいする連邦政府や州や企業からの圧力は当然ことのほか大きく、今、原子力産業(デンバーに拠点を持つインターナショナル・ウラニウム会社。例の日本から運び出された放射性物質を含んだ土の精錬を引き受けたのもこの会社 参照「Native Heart 放射性物質を含んだ土が日本からユタの沙漠にむかって送り出された(Thursday, October 06, 2005)」)とその取り巻きは、インターステイト40号線とユタ州の州境に広がる、州と、連邦政府と、個人が所有する土地に狙いをつけている。そこにざっと数えて1ダース近くのウラニウムの鉱脈が眠っていて、連中はそこが喉から手が出るほど欲しいのだ。そこはグランド・キャニオンの北側で、2000年にナショナル・モニュメントになったばかりのふたつのポイントもふくまれるため、再びウラニウム採掘がもたらしかねないグランド・キャニオンの環境汚染が問題になるかもしれない。
こうした国際企業や州政府や連邦政府からのいや増しに増え続ける圧力をナバホの人たちは苦々しく感じている。ナバホ国部族会議議長のスポークスマンであるジョージ・ハーディーンは、議長のシャーリー氏がワシントンの議会に出向き、部族の自治権を再度強く訴え、内務省が求めているような企業との採掘契約交渉に入るつもりがないことをすでに伝えたと語ったうえで「ウラニウムはナバホ国に致命的な遺産を残しています。議長はそれを皆殺しだと言っています。部族はロヤリティーとしてもたらされる何百万ドルもの金銭をあきらめても、歴史を繰り返すつもりはありません」と付け加えた。
ナバホ国にたいしてウラニウムの採掘を求める国際企業の背後にもまた「日本国とその意向を受けた原子力産業」の影がちらついていることを、わたしたちは覚えておくべきである。
- 原子力はクリーンエネルギーじゃない。
- 原子力は安いエネルギーじゃない。
- 原子力は地球温暖化への解答じゃない。
- 原子力は安全なものじゃない。
- ウラニウム採掘には危険がいっぱい。
- 核兵器の投げかけた脅威は終わってない。
- 核廃棄物の問題はずっと未解決のまま。
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Comments
It's nearly impossible to find knowledgeable people on this subject, but you sound like you know what you're talking about! Thanks
Posted by: ve may bay | Thursday, November 27, 2014 09:37 AM