アルコールと違って「ペヨーテ」は脳を損傷しない
ホットワイアード日本語版(2005/11/09 17:01)のトピックのひとつ「研究結果:幻覚剤「ペヨーテ」は脳を損傷しない」はためになるので読んでおくべき記事である。以下は同記事からの部分引用。
一定量のペヨーテを摂取すると、有効成分の化学物質、メスカリンによる幻覚作用が得られる。ハルパーン博士たちのチームは、ナバホ族から被験者を募り、3つのグループに分けた――ネイティブ・アメリカン・チャーチの信者でペヨーテを定期的に服用していた61名、アルコール中毒者で過去2ヵ月以上禁酒していた36名、アルコールも薬物もほとんど摂取しないと申告した79名だ。研究チームはこれらの被験者に、精神的健康度と認知能力のテストを実施した。その結果、脳になんらかの問題があることを示す徴候が見られたのは、アルコール中毒者のグループだけだった。実のところ心理学的見地からすると、ネイティブ・アメリカンのペヨーテ使用者は、薬物を使用しないグループに比べて情緒的により安定した状態にあった。
なぜだろうか? 理由の1つには、ネイティブ・アメリカン・チャーチが信者に十分な精神的支えを提供していることがあると、ミネソタ大学霊性・ヒーリング研究センターで上級講師を務めるデニス・J・マッケナ氏は語る。
もう1つの理由は、ネイティブ・アメリカンのペヨーテ使用者がその使用に細心の注意を払っていることだ。「どのような文脈で使用するかがきわめて重要だ」と、マッケナ氏は言う。サイケデリック・カルチャーの教祖的存在、ティモシー・リアリー氏が薬物の使用環境を設定することの重要性を強調したのとは異なり、「幻覚キノコやLSDを気晴らしのために使う人のほとんどは、この種の使用における文脈というものを理解していない」という。
[日本語版:江藤千夏/高森郁哉]
「どのような文脈で使用するかがきわめて重要だ」という指摘は、それ以外に言いようがないくらい正しい。ただしその「文脈」のなかには「聖なる薬草にたいするリスペクト」が大きな部分を占めていると言うことは書かれていないので改めて指摘しておく。ネイティブ・アメリカン・チャーチの歴史にリンクが張られているけれど、日本語の解説がないのは残念だが、それでもこの記事は読む価値がある。トリップするためにならなんでも口に入れてしまう人たちに決定的に欠けているものを考えさせられた。
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Comments
セットとセッティングですね。ところで、デニス・J・マッケナ氏って、故テレンス・マッケナの弟さんですかね?
Posted by: Kussy 94da | Wednesday, November 09, 2005 08:06 PM
Kussy 94daさん
「セットとセッティングですね。」ということですが、そうでもあるしそうでもない。
セットとセッティングだけでは決定的に欠けているなにかがそこにあるのだとい
うことを、ぼくはいいたいのです。正しい時と、正しい場所と、聖なるものを敬うハートのことです。セットとセッティングだけですむのなら、世界はこんな状況に陥ることもなかったはずなのに。
Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Thursday, November 10, 2005 08:16 AM
正しい場所と聖なるものを扱うハート、同感です。
感謝と敬意の先に、祈りがあるような気がします。
トリップという無責任な意識状態に逃げるためのドラッグではなく、
聖なるメディスンとして向き合うことで、
そのメディスンと対峙する”自分自身”が見えてくるのだと思います。
自らの内面と向き合っているようで逃避になっているトリップまがいのヴィジョンクエストと、真のヴィジョンクエストとの違いでもあるでしょう。
聖なるものに依存するのではなく、
聖なるものと共にありたいと思います。
Posted by: taka | Saturday, November 12, 2005 01:22 PM