カルロス・ナカイを改めて紹介します
ネイティブ・アメリカン・フルート・ミュージックが今あるのはまったくもってカルロス・ナカイ(R. Carlos Nakai)のおかげだといっていい。今では押しも押されぬこの世界の第一人者となった彼のことを抜きにインディアン・フルートのことを語ることはできない。これはおそらく誰もが認めるところで、最新の『ヴォイス・オブ・アメリカ|VOICE OF AMERICA』(29 November 2005)が、スーザン・ルーグという女性によるカルロスのインタヴューとレポートを掲載している。タイトルは「ネイティブ・アメリカン・フルートを21世紀に持ち込んだカルロス・ナカイ」だ。音声版もあり、ナカイの曲の一部やインタヴューを実際に耳で聴くこともできる。プレーン・イングリッシュ(平易な英語)で記述されているので、英語の勉強にうってつけでもあるだろう(それにアメリカ・インディアン関係の記事もしばしばとりあげられる)。このブログの記事の右に縦に並べられているアマゾン日本の広告には、そのカルロス・ナカイの今現在30枚あるうち入手可能なCDがランダムに出てくるようになっていて、リンク先では曲の一部が試聴できるので、お気に入りの一枚が見つけられるとよいと思う。
インディアン・フルートはとりわけ心を静める働きが強くハートを伝える力の強い楽器であるし、彼の才能と器はフルートによる癒しの域にまで高められているので、どれも安心して聴いていることができ、その音色が流れ出した途端に、どこからともなく吹いてくる風を感じ、今までに誰もが体験したことがない地球の景観のなかにわれわれを誘ってくれるはず。あるいは、ぼくたちが長いこと、そう千年近く忘れていた、ある種の懐かしさすら覚えるかもしれない。
ぼくがユテとナバホの血を受け継ぐカルロス・ナカイと初めてあったのはノーザンアリゾナの博物館のなかだった。1980年代の初頭のことで、彼はそこで小さなワークショップを開いてネイティブ・アメリカン・ミュージックとその音楽を残してきた人びとのことを伝えていた。ぼくは一度でその音色に魂を奪われた。誰もがインディアン・フルートは博物館の陳列棚のなかとか金持ちのコレクターのところに集められていて、その生の音を聞くことはもうないのではないかと思っていた時代だった。
そうした状況のなか、カルロスはインディアン・フルートとそれにまつわる文化とを再生させた最初のミュージシャンだと言っていい。もともとジャズミュージシャンとして古典的なトランペット学んでいたのだという話もそのときに聞かされた。あのときに学芸員の女性に紹介されてもらった彼の名刺をぼくはいまだに自分の名刺バインダーのなかにしまってある。そのとき手に入れた彼のカセットテープはその後すり切れるぐらい何度も何度も聞いた。今では「Journeys」というタイトルでCDになっているそれは最初はほとんど手作りのカセットテープで博物館で販売されていたのだ。それから数年して、映画「ダンス・ウィズ・ウルフス」の日本公開にあわせて、東京の某デパートが「アメリカ・インディアン展」なるものを計画し、そのイベントに企画で参加した際、たまたまフリー・ジャズのコンサートで来日していたカルロス・ナカイに頼んで特別にソロの・コンサートをしてもらったことを昨日のことのように覚えている。そうそう、今では賛美歌にも分類されている「アメージング・グレース」を最初にインディアン・フルートで演奏したのもナカイだった。
世界に広まっていった彼のフルートにインスパイアーされたミュージシャンがこの20年間でたくさん生まれてきている。彼の奏でる音楽は、ネイティブ・アメリカン・ピープルが守り続けようとしている文化がいかなるものなのかを、どんな本よりも雄弁にわかりやすく伝えている。
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Comments
笛という意味では、この人のこの前発売されたCDブックは最強だと思います。
http://www.shana-records.com/
縄文、あるいはそれ以前の、下手をすると人が住む以前の日本列島の魂の最も奥の最も澄み切った部分、そういったものをナチュラルに感じさせます。
Posted by: 小鳥 | Thursday, December 01, 2005 02:29 AM
小鳥さま
ぜひ聞いてみたいのですが、わたしの環境ではオススメのサイトがなぜか見れません。「笛奏者・雲龍の公式ホームページです」というところは見れました。この名前で探してみることにします。なに笛なのだろうか?
Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Thursday, December 01, 2005 09:55 AM
あれ?すみません。これだと見えるでしょうか…
http://utsuwa-shoken.com/editrial%20room/shana.htm
雲龍さんは元々能の小鼓の家元の子で、しかし幼い頃から笛に強く惹かれていた人です。
とりわけ能笛が好きだったのですが、能楽協会?を脱会されるときに能笛を吹くことを禁じられました。
その結果、彼はありとあらゆる笛を吹きます。穴の開いた石でも笛を吹きますし、インディアン・フルートなども吹きます。
現在は能笛を吹くことを許可され、400年?くらいの年代モノの笛をよく吹くようです。
CDには、インディアン・フルートと思われる笛の音も出てきます。
Posted by: 小鳥 | Thursday, December 01, 2005 02:16 PM
ありがとうございました。見れました。なにか、どこかでつながりがありそうな予感がします。あったことがあるかもしれない。関係する人のなかにいずれにせよ知りあいの名前がいくつか見受けられました。一度じっくり聞かせてもらいます。
Posted by: Kitayama "Smiling Cloud" Kohei | Thursday, December 01, 2005 05:17 PM
高校生のときに修学旅行でシカゴに行きました。
空港で偶然CDを見つけてからカルロス・ナカイさんのファンです。周りに誰もナカイさんを知っている人がいないので、このHPがあって嬉しいです。
Posted by: 潮音 | Tuesday, June 28, 2011 12:23 AM