長い距離を旅するアホウドリ一族の運命を握る日米共同保護計画
読売新聞(2005年10月29日11時20分)が、「アホウドリ、非火山島など安全な新繁殖地に…米が草案」としてアメリカの連邦魚類・野生生物局が、伊豆諸島の鳥島と尖閣諸島でかろうじて繁殖し、絶滅の危機にあるアホウドリ保護のため、「火山噴火などの危険性のない新たな繁殖地に誘い込むことが望ましい」と提言する保護計画を策定し、草案を公表したと報じている。ワシントンの笹沢教一特派員の報告だ。
英語名を「アルバトロス(albatross)」というアホウドリは、まったく阿呆な鳥ではない。地球最大の海洋鳥であるために、敏速な動きを苦手にしているだけなのだ。のろのろしていて簡単につかまえられるという、ただそのことをもって日本人は「阿呆な鳥」と見てその名をつけたわけ。
アホウドリ一族は生涯一夫一妻を維持し、家族を守りながら、米アラスカ州南部沿岸やアラスカで快適な夏を過ごし、日本の鳥島からハワイ諸島に列なるミッドウェー環礁、ニュージーランド島、オーストラリアのタスマニア島までの太平洋全域を部族の生活圏に含めている。米国でも生物種保存法の対象種に指定されていて、だから記事によれば同局が日米協力のもと、保護計画をつくりつつあるのだという。アホウドリはその9割が絶滅の危機にあるとされますが、原因は人間たちの漁法にあることがわかってきました(詳しくは東邦大学メディアネットセンター・アホウドリ復活への軌跡のなかの「苦境に立つアホウドリ類」を参照のこと)。
草案は「アホウドリの個体数を減らした元凶である羽毛目的の乱獲の脅威は消えたが、小さな群れが噴火や泥流、漁網の混獲、地球規模の気候変動などの脅威にさらされている」と指摘のうえ、「さらに安定な状態に回復させるためにも新繁殖地が必要」としているらしい。現在、アホウドリ一族は、その大半が火山島である日本国の鳥島の不安定な崖下斜面にキャンプを設営して繁殖しており、同局は特定の島の名前などは挙げずに、新繁殖地に望まれる条件として「非火山島で強固な地盤の場所」としている。日本の環境省は、小笠原諸島の聟島(むこじま)を、彼らの移住先の有力候補地と考えていて、住民の了解を得た上で、日米協力で移住に取り組む考えだとか。
誘い込みの方法としては「おとり役の模型(デコイ)や録音されたアホウドリの声を使って、別の島を鳥島だと誤らせる手法を使う」(同記事)らしい。しかし、同じ繁殖地で繁殖を続ける習性があるため、当局者は「成熟したつがいに住み慣れた場所を替えさせるのは至難の業で、住み替えは若い個体が主な対象になる」としている。この移住計画が、一族の「涙の旅路」にならないことを祈りたい。
知っていましたか、アホウドリは
- その生涯をほとんど海のうえですごす
- みんな40年以上生きる
- 10歳ぐらいになると島の岸に行って子作りにはげむ
- 生涯一夫一妻主義
- 1年から2年に一度子供をもうける
- 卵は一度にひとつだけ
- 巣を地面のうえにむきだしのまま無防備に作る
- 夫婦は共同で子育てにあたる
- 家庭以外では夫婦は別々に行動する
- 羽根を広げるとゆうに3メートル以上ある
- その羽根を大きく広げて強い風に乗り、ほとんど羽ばたきをせずに一度に何百キロも滑空する
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