皆殺しの恐怖におびえるインディアンの女性たち
「今なお皆殺しの恐怖におびえるインディアンの女性たち」という記事が偉大なるスーの国があるサウスダコタのラピッドシティ・ジャーナル(The Rapid City Journal)という新聞の論評に掲載されていた(August 14, 2005)。この記事の中に書きとめられているデータを5つ紹介しておく。
- アメリカで暮らしているインディアンの女性の50パーセントが今後いずれ婦女暴行の被害者になるという驚くべき数字がある。これはアフリカ系やヒスパニック系の女性の2倍の確率であるが、リザベーションでは普通被害者に厳しく箝口令がひかれているのが常で、なかなか実際の数がつかめない。いずれにせよインディアンの女性は、女性であるという理由だけで「皆殺しの恐怖」におののき続けているのである。ラピッド・シティのあるカウンセラーは「暴行を受けていない女性を見つける方がむずかしい」と語ったという。
- 他のすべての人種の女性に比較して、インディアンの女性は、2倍もレイプされているという数字がある。
- インディアンの女性にたいする暴力の70パーセントが、非インディアンの配偶者もしくはボーイフレンドか知人によるもの。
- インディアンの女性の4人に1人が暴行される。
- 殺人で逮捕される11歳から20歳までのインディアンの少年の3人のうちの2人が、自分たちの母親を襲った男を殺したもの。
問題は貧困なのだろうか? アルコールやドラッグへの依存なのか? 答えは「イエス」だろう。インディァンのことになると、ろくな調べもしない警察のせいか? それも「イエス」だ。歴史の犠牲者をとことん追いつめるアルコール文化に特有の根の深い性差別主義(日本国も例外ではない)に原因があるのか? それもまた「イエス」だろう。だがそうした問題の一番深いところにあるのは、500年間続いている皆殺し政策と植民地化によって、インディアンの女性たちの姿が見えなくされてしまっているところにある。「コロンブスがきた時にはじまった戦争は終ってなどいない」(ローリング・サンダー)という声が今なお聞こえてくるようではないか。
インディアンを研究する学者もジャーナリストもこのことになると口をつぐんでしまう。リザベーションはどこも陸の中の孤島のようなところにあり、それがためにひとびとは平気で見て見ぬふりを決めこんで無関心を装うのだ。アメリカ合衆国政府はインディアンの問題を国際問題にしないために、頭と金とを使い続けてきた。アメリカのなかに第三世界があることを世界中に知らせないためにアメリカのメディアは世界のニュースを報道し続ける。だから皆殺しの恐怖におびえるインディアンの女性たちの声は、鹿皮のカーテンの向こう側に隠され続けているのだ。こんなことがもっとマスコミなどに注目される地球の奥地の紛争地帯で起きれば、おそらく大問題にされるだろう。
「Koyaanisqatsi (Life out of balance)」カテゴリの記事
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Comments
亀の大陸で五百年前に始まった戦争、この弓の島では三千年ほど前から始まっているのでしょうね。激化したのは二千年前くらいでしょうが。
「文明」を戦旗に掲げたパラダイム集団において「非文明」(野生)の生き物はすべからく支配、占領すべき存在です。植物動物、ヒトケモノを問わず。
女は男より野生(自然)に近い存在ですから、その性を強く残している人ほどジェノサイドの対象になるのでしょう。
全ての問題は一つに繫がっている。そしてその根本は野生(自然界)に一方的に宣戦布告したニンゲン独特のイデオロギーだ。
まだ消えていない大地の精霊(神々)たちの声を聞き、自分の中の野性を目覚めさせるときは来ている。
Posted by: 山竒 | Friday, August 19, 2005 11:57 AM
CNNなどを見ていても、アメリカは海外のニュースが多くて、あまり国内の地味なニュースをとりあげられていないように思います。事件によっては、執拗に追っていたりするけど。あれは無意識のうちにやっているんでしょうかね?日本の場合は、ニュースに流れる情報の種類はわりと多いと思うのですが、海外のリアルな情報は少ないし、どこかオブラートに包んでぼんやりさせた印象があります。しかし、日本でもアイヌの問題などが大きく扱われることはないですよね。一種のタブーになってしまっている気がします。
Posted by: sloth | Saturday, August 20, 2005 10:42 AM