かの呪術師ドン・ファンは生命保険に入っていただろうか?
わたしはアルコール類やタバコ類と薬品と保険と宝くじをふくむ賭け事の広告に顔を出している有名人や芸能人を信用しない。テレビ・ショッピングでセールスマンやセールスウーマンよろしく商品を褒めちぎってる下品な人たちと同じように、この連中は自分がなにに荷担しているかを知ってか知らずか、おそろしく無責任であるように思えるからだ。それらは有名人やセレブ気取りを使って商売するようなものではないだろう。そういえば最近保険についておもしろい話を読んだ。ロイターという通信社が17日に流したもので、メキシコの保険事情について書いてあった。
死を笑い飛ばすメキシコ人に保険を売るのは大変![メキシコシティ 17日 ロイター] メキシコ人は刹那的に生き、死を笑いとばす気質であるため、生命保険を売るのが大変なのだそうだ。
HSBC銀行はメキシコで、ここ数年、年率30%ほどの割合で保険業務を成長させているが、顧客のベースは小さい、と新製品ディレクターのマリオ・ペレス氏は言う。
メキシコでは、死亡時に個人的な保険に入っている割合はわずか5%にも満たない。道路を走る車には半分近く、曲がりなりにも最低限の保険が掛けられているというのに。
ペレス氏は「メキシコ人は死をあまり恐れません。自分の命より車の心配を優先させるのです」とコメント。
大半の人が1日、550円未満で生活しているこの国では、生命、車、家に保険を掛けるという発想はそもそも無縁なのだ。
これはニュースの前半の引用である。全文をお読みになりたければ該当のサイトにあたられよ。この記事で気になるのは「メキシコ人は刹那的に生き、死を笑いとばす気質である」という冒頭のきめつけの部分。記者はちゃんと保険にも入って刹那的じゃない生活をしているのだろうなと推測される書き方ではありませんか。「死を笑い飛ばす気質」というのはよくわかるにしても、「刹那的に生きる」ことを文明的な理論で頭から批判しなければならない理由がよくわからない。刹那的だからと言っていのちを大切にしないというのでもないだろうと思うからだ。まるで保険にはいることが刹那的に生きることではないかのような生命保険会社そのままの論調が気になって仕方ない。アメリカにおいてもインディアンの人たちの保険加入率は圧倒的に少ない。そんな金はどこにもないというのが最大の理由であるが、彼らの人生にたいする見方、死にたいする接し方も大きく関係していることはまちがいない。たとえば、カスタネダの書いた一連の「ドン・ファン」シリーズに登場して、メキシコとアリゾナを、トワールとナワールとを往き来しているヤキ・インディアンのファン・マテウス老人が生命保険に入っているなんてことはおよそ考えられないことではないか。なにしろ彼は「死」と友だちなのだから。
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Comments
私も保険に入っていますから、
この文章を考えると少々恥ずかしい気がします。
物質的な豊かさを求めるのか、
精神的な豊かさを求めるのか、
どちらを選ぶのかによって価値観は大きく変わります。
発展途上国とか、過疎地域とか、
都会に住む人は彼らに対して貧しいと言いますが、
結局偏った価値観に翻弄されているのですよね。
Posted by: おれおふりねら | Sunday, August 21, 2005 at 10:21 PM