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Sunday, May 08, 2005

プレアデスの話

プレアデスは星たちの小さなかたまり(星団)のことで、和名は「すばる」といいますが、ネイティブの神話の世界では最も重要な星座のひとつとされています。世界各地のほとんどの民族や文化がこのプレアデスについての神話を持っています。古代ギリシャ神話では巨人アトラスとニンフのプレイオネの間に生まれた7人姉妹をさしています。ある日狩人のオリオンが森の中で7人姉妹を見つけて7人の娘たちを追いかけ、娘たちは天帝ゼウスの守護を求めながら逃げまどいます。ゼウスは娘たちを哀れんで7人を鳩に変身させて空に逃がしました。7人の姉妹たちはオリオンの手を逃れてそのまま星のかたまりとなって冬の空にいまも姿を見せているのです。オリオンはよほど残念に思ったのか、自分の犬を天に放って娘たちの後を追わせたと言います。その犬の名前がシリウスで、とりわけ明るく輝く星です。

プレアデス星団は北米インディアンたちにとっても極めで重要な星のかたまりでした。季節をはっきりと指し示すために暦の基本となる星のかたまりでもあったのです。この星団を見続け、冬の終わりから春の初めのころ、夕暮れの空からプレアデス星団が姿を消すのを合図に農作業に入る部族もありました。6月の中頃になって、朝早く、夜明け直前の空にプレアデスはふたたび姿をあらわします。この夜明け直前の空にプレアデスが帰ってくるまでに、その年に植えるべき作物の種をあらかた植え終えていないといけないことを、ネイティブ・アメリカンのファーマーたちは知っていました。このときまでに種植が終わっていないと、秋になって最初の霜が大地を覆うまでに収穫を終えることが出来ないからです。だからプレアデス星団は、その年の実りを象徴する星でした。その星団を小さな種が集まっているものと認識している部族もありました。ニューメキシコのズニの人たちはプレアデス星団をずばり「種(The Seeds)」と名づけています。

プレアデスは農業の星としてだけ重要なわけではありません。ストーリーテラーやメディスンマン、メディスンウーマンたちもこの星団を見続けました。もちろんこの星団が他のものに比べて見つけやすかったことも大きな理由のひとつでしょう。なにしろ冬の間は常に空にある星なのです。冬はネイティブの人たちにとっては火を囲んで物語を聞く季節なのです。そのとき常に空にあるプレアデスのことをいとおしく思わないわけがありません。大平原に生きるパウニー一族はひとかたまりになって輝いているプレアデスを、一族の団結のしるしとしてみていました。彼等の祈りの歌につぎのようなものがあります。


見たまえ

空と陸の出会う線のむこうで

ゆっくりと、ゆっくりと、起きあがる

プレアデスを!



ご覧あれ!

昇りきて彼らは、われらに道を示す

万全の導きで、われらをひとつにまとめる

プレアデスよ!



汝らのごとく

われらがひとつにつながる道を

なにとぞ指し示したまえ


パウニー一族のプレアデスへの祈り
 『聖なる言の葉』所収 北山耕平訳



日本では「すばる」のことを「六連星(むつらぼし)」や「羽子板星」と呼んだそうです。清少納言は『枕草子』で「星はすばる」と星の第1番目にあげています。このM45プレアデス星団は、今でこそ双眼鏡などで見ると数十個の星のかたまりであることがわかりますが、肉眼だと6つから7つぐらいを数えることができます。チェロキーの人たちは「7人の踊りを踊る星たち」と認識していました。7つの星から構成されていると言うことが、ある集団にはきわめて大切だったのです。

sevenpointedstar
「7」を「聖なる数」と認識する人たちは、ネイティブ・アメリカンの場合、亀の島(北米大陸)の東側に多くいました。代表的な集団がチェロキーであり、もともと東海岸にいて半農半猟の生活をしていて、後に大平原に移住して狩猟民と変身したラコタ(スー)のひとたちです。「7」は「全方位」を表す数とされました。つまり、東、西、南、北、上、下、中心の7つです。チェロキー出身のメディスンマンだったローリング・サンダーはつねに「七芒星」の、つまり七方に向かって輝く星の形をしたお守りをかぶり物につけていましたが、これもプレアデスを象徴するものでした。彼は「チェロキーのなかには自分たちがプレアデスから来たと信じているものたちもいる」と語りました。彼もそのことを信じていたひとりだと思います。

亀の島の西側、現在のカリフォルニア、オレゴン、ワシントンなどの州にはプレアデスを6つの星からなるものと見ている集団が多くいました。平安時代の日本でも6つの星を見ていましたよね。カリフォルニアの中部にヨクート・インディアンと呼ばれた人たちが長く暮らしています。19世紀中頃にカリフォルニアがアメリカ合衆国に併合されて文化が崩壊してしまった人たちですが、現在では、少ないながらもその子孫の人たちがリザベーションで生活しています。このヨクートのなかの「タチ・ヨクート」と呼ばれる狩猟採集の民に伝えられていたという「5人の妻をめとったある若者」の物語があります。プレアデスのことを伝えるおはなしのなかでは珍しくユーモラスなものであるので、これを物語として紹介しておきます。

Beadline.jpg

ノミのバアキルと彼の5人の妻


昔、なかのよい5人の娘たちがいました。日がな一日、5人の娘たちは歌ったり踊ったりしてなかよく遊んでばかりいました。いつも5人が一緒だったので、ほとんどの若い男たちはなかなか言い寄ることが出来ません。ただひとりバアキルという同じ歳の若者だけが、なぜか5人の娘たちのなかにはいっていつも遊んでいました。

バアキル以外の男たちのなかにも5人の娘たちを気に入って求愛をするものがいなかったわけではないのですが、そのたびに5人の娘たちは逃げていってしまいます。娘たちが気に入っていた男はバアキルただ1人でした。しかしバアキルはノミの化身でした。そうぴょんぴょん跳ねる小さなあのノミです。

バアキルはいつでも5人の娘たちを分け隔てなく同じぐらいいっしょうけんめい遊びました。バアキルが5人と等しく遊んでいた理由は、単純にひとりだけの娘を選ぶことができなかったからです。だから彼はいつも5人と一緒にいました。バアキルが5人の娘を一度に嫁さんにしたときにも、一族の人間には別に驚くものはいませんでした。あんなになかがよかったのだからそういうこともあるだろうと、みなは納得したのです。

とある夏のある日、バアキルは病気になり、もとのノミに姿が戻ってしまいました。一匹のノミとなったバアキルは、次々と5人にとりついては、ひっかいたりかみついたりしてかゆがらせます。女たちはほとほとバアキルに愛想をつかしました。ノミだとわかったからには、5人はもう彼のことを好きでもなんでもなくなっていました。

「さっさと逃げ出しましょうよ」と娘のひとりが切り出しました。
「逃げるっていっても、でもどこへ?」もうひとりが尋ねます。
「思いっきり東の方まで逃げたら、見つけられないんじゃないの?」一番気の小さな娘がいいました。
「きまり。ではいつ旅に出るの?」と4番目の娘。
5番目の最も年上のしっかり者の娘が口を開きました。
「バアキルが昼寝をしたらすぐに出発しましょう」
そして全員が顔を見合わせてうなづきあいました。

やがてバアキルの昼寝の時間になりました。彼がうとうととしはじめるやいなや、娘たちは手にてを取って逃げ出したのです。バアキルが目を覚ますまでに出来るだけ遠くまで逃げていなくてはなりません。逃げろや逃げろ。5人の娘たちはとにかく全力で走り続けました。

太陽が西のはずれに沈んで、気温が下がりはじめるまで、5人はひたすら走り続けて、すでにかなりの距離を稼いでいました。風が冷たくなつて、気温が下がれば、ノミのバアキルも目を覚ますに違いありません。

目を覚ましてのっそりと身体を起こすと、その場に座ったままバアキルは自分にこう聞きました。「妻たちはどこにいるのだろう?」

しばらくして彼は、妻たちが逃げ出したことに、はたと気がつきました。そしてそしてぴょんぴょんと跳ねるようにしてものすごい勢いで妻たちの後を追いかけはじめたのです。

「なあに足の速さならまけるものか!」バアキルは鼻の先で笑いながら跳ぶように走ります。「じきに追いついてみせるぞ」

それからしばらくすると、遠くの前方を走っている5人の娘たちの姿が、バアキルにも見えてきました。

5人の娘のうちのひとりが走りながら後ろを振り返りました。もうもうとあがる土ぼこりがぐんぐん迫ってくるのが見えました。

「バアキルが、きたーっ!」彼女は息をのみました。「もうすぐ追いつかれちゃう」

「ああ、どうしよう?」気の弱い娘が心配そうな声をあげました。

一番年上の娘がこたえました。「このまま空にのぼりましょう。あそこだったら、バアキルもついてこれないから」

そのまま5人の娘たちは空にのぼっていきました。ところがノミのやつもくっついて後を追いかけて空をのぼりだしたのです。

そうやって5人の娘とノミのバアキルはプレアデスとして私たちが知っている星座になりました。5つ固まって輝いている星たちがそのときの娘たちで、そこから少し離れたところにぽつんとある星がノミのバアキルなのです。

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Comments

はじめまして。ぼくは現在21歳の学生です。北山さんの「自然のレッスン」に滋養を得て、以来ずっと北山さんのファンです。以前神保町での北山さんと曽我部恵一さんのトークショウの際、「自然のレッスン」にメッセージを書いていただきました。「May the Great Spirit Guide you on the Right Way!」というそのメッセージは、常にぼくの生活のなかに掲げてあります。
記事と関係なくてごめんなさい。どうしても伝えておきたかったのです。では失礼します。

Posted by: kuma | Monday, May 09, 2005 at 02:46 AM

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